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儚い夢
序
夢のようにおぼろげで頼りない記憶しか留めない現実もあれば、
日ごろの眠りを誘うようなほど退屈な日常よりもずっと強烈な印象を残していく夢もあります。
僕たちは実のところ、
夢の世界と現実の物理的な世界が互いに含みあっている曖昧模糊とした世界で生を営んでいるのではないかと、
欠伸が絶えない毎日に思ったりもするのです。
実際、あの出来事が夢か現かと強いて問われれば、夢でしたと易々と言ってしまいそうなのです。
しかし、仮にそれが夢であったとしても、僕の生きてきた短い人生の中で、
最も鮮やかで熱を持ったリアルな光を今もなおその出来事は僕の深いところで放ち続けているのです。
つづく