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第四章 黄泉比良坂(よもつひらさか)

 一行は遂に黄泉比良坂に差し掛かろうとしていた。ナツメがみんなの顔色をうかがう。

 「いよいよだよ。振り向いたら死ぬって言われてるよ。みんな、どう思う?ヴァニラ・アイスがいるような気がするんだ。」

 なんとも気まずいことに、みんな緊張しているようだ。ナツメの投げかけに誰も反応しない。オキタはタブレットを見ながら周辺の道や地形を確認しているが、「ん~」とかはっきりした返事をくれない。

 「どうしたんだよ、アルファ、キミが何にも言わないなんて。」

 重苦しい時間が過ぎ、坂の頂上近くまでやって来た。かなりの急こう配で、難所のいわれは確かだった。


 坂も終わりに近づいたころ、ようやくアルファが口を開いた。

 「あれ、ポストがあるよ。うわっ、犬のうんこがある。みんな、気をつけなよ。」

 ナツメも声を上げて駆け寄った。

 「ポストのそばに犬のうんこだって! まさかまさか!」

 ナツメはポストに駆け寄って左手をポストに乗せて体を支え、アルファの横からのぞきこもうとした。そこで何気なく手元を見ると、手の下に何やら文字が見えた。

 「なんだ? 何か書いてある。どれどれ、『この落書きを見て振り向いた者は・・・』・・・ゲッ! なんだこれ! 怜美ちゃんのいるとこだと思ったのに、ディオの館ってこと?」

 ぶつぶつ言ってるナツメをいぶかしんで、アルファが振り向こうとした。

 「だめだー! 振り向いちゃ。」

 そう言ってナツメはアルファの頭を両手で挟み込んだ。

 「なにしやがる! 放せ!」

 「振り向いたら死ぬんだよ。たぶん後ろにヴァニラ・アイスがいるんだよ。」

 「てめえ、落書きをきちんと見ろよ!」

 「だからここに・・・」

 ナツメは手をどけて指で隠れていた文字を全部見た。

 『この落書きを見て振り向いた者は犬のうんこを踏む』

 アルファがえんがちょを発した。

 「いや~、ナツメ、うんこ踏んじまってる~!!」

 「あちゃ~、やってしまった! 振り向いてもないのに! この落書き、ブービートラップならぬ、プープートラップだったよ。」

 「例のうんこ踏んだのって、ナツメだったんだ~!!」

 「え~、ここ杜王町なの~? ポストの横にオーソンないけど。え、もしかして鈴美ちゃんがいるの? 会いたいな。」


 二人のしょうもないやり取りにあきれながら、オキタが注意を促した。

 「ここからいよいよクニ国に入ります。最後尾の人が一番怖くなるので、皆さん、横一列で歩きましょうか。」

 「お、Gメン75だね。ちゃらら~ちゃらら~って歩いていくんだ。」

 道幅があまりないのでみんな肩を寄せ合うように進んだ。アルファといろははナツメが横に、来るのを嫌がってオキタの横の端になるように要求した。もちろんナツメは両手に花を期待していたわけだが、あえなく却下された。

 四人が進み始めた途端、何かが後ろにいる気配がした。まずアルファがまくしたてた。

 「ちょっと、後ろにいるのナツメなの!?」

 「え、ボク横から動いてないよ。」

 「やめてよ、よだれをたらさないで!変なこと言わないで!」

 「だからボク後ろにいないよ。そいつはなんて言ってるの?」

 「このスケベ! 一緒にお風呂に入ろうなんて、ぶっ飛ばされたいの!」

 「だからボクじゃないって!」

 今度はいろはがナツメに怒る。

 「もうちょっと、わたしにまでよだれをたらさないで!」

 「今度はいろはまで・・・」

 「何よ、どういうつもり? 耳元でささやかないで!一緒に温泉なんか入んないわよ!」

 アルファが再度怒る。

 「ナツメ、てめー、わたしがお風呂でなんでいろはが温泉なんだよ! なんだよこの格差は。」

 「怒るポイントがよく分かんないんだけど・・・? オキタのところへは誰か来てない?」

 「わたしのところにもナツメ君が来てますよ・・・12分の1のグフのプラモが欲しいと言われても、ありませんよ。シャアザクを買ったとこでしょう?」

 いろはがナツメを問い詰める。

 「あなたのところには誰が来てるのよ?」

 ナツメは急に黙り込んでしまった。

 アルファが詰め寄る。

 「何で急に黙り込むのよ。言いなさいよ。」

 「言えば殺される・・・」

 「言わないと殺すわよ。」

 「そんなのないよ~・・・仕方ない、言うよ・・・アルファといろはが二人とも来てるんだ。」

 「それで。」

 「アルファといろはが一緒にお風呂に行くか、温泉に行くか、どっちか選べって言うんだ。左から後ろを向いたらアルファ、右から後ろを向いたらいろはと行くことになるよ~って、甘い声で誘うんだ。もう、困っちゃうな~。」

 「何喜んでやがる。本気で振り向きたくなってるだろ。いいじゃん、振り向けよ。うちらに殺されるか、化け物に殺されるか、さして変わんないから。あ、そうか! 指輪の力で強制的に振り向かせればいいんだ。」

 「ひどい~!ヘブンズ・ドアーで振り向けないようにしてくれるんじゃないの? 振り向くようにするなんて。よし、こうなったらやけくそだ。アルファの声の方に振り向いてしまえ! 鈴美ちゃん、そこにいるの~?」

 ナツメは好奇心(欲望)に負けて振り向いてしまった! なんとそこにはほんとにアルファがいた!

 「アルファだ!マジですか?」

 「ふふふふふふ・・・」

 「なんかすごいやばい感じだよ・・・いや、これは、カメオのジャッジメントだ! 願いが具現化してるんだ。けど、噛みついてくるんだよな、こいつ。だが、このチャンスを逃すか!」

 ナツメは怖がるどころか『しめた』という顔でアルファの偽物らしき相手に飛びついた。

 「てめー! ぜってーいやらしいこと考えてるだろ。なんでいろはにしねえんだよ。ふんっ、こういうのって、大抵正体が男ってオチだぜ。ざまあ見ろ!」

 偽物アルファは男ではなかったが、何かものすごい硬いもので出来ていた。ナツメは思いっきりその相手に頭をぶつけてしまった。

 「いたたたた、ぬりかべか何か?」


 アルファの姿をした『何か』は、ニシャーと笑うと、一度溶けたようになって別の形となった。

 「あれ、これってスライムだよな。しかも、メタルスライムだ! ラッキー! 経験値稼ごうぜ。」

 オキタがみんなに声をかける。

 「どうやら振り向いても死なないようです。しかも、ボーナスポイントをもらえそうですよ。」

 アルファといろはも振り向いた。四人それぞれの後ろにスライムがいたらしい。4匹のメタルスライムが現れた! しかし、いろはがスカウターを見てデータを報告する。

 「これはメタルスライムではないわ。オリハルコンスライムよ。倒せば経験値をレベルマックスまで稼げるほどたくさん持ってるわ。」

 ナツメは大喜びで武器を構えた。

 「行っくぞー!! 魔法剣サンダガ乱れ撃ちっぽい切り方ー!」

 『ガッキーン!』

 「あいたたたたた・・・」

 ナツメの持っていた剣はポキンと折れてしまい、あまりの硬さにナツメは手がしびれてしまった。いろはがデータの詳細を告げる。

 「オリハルコンスイムの防御力は天井知らずで、今まで誰もダメージを与えた者はいないわ。いわゆる伝説の武器の素材で出来ているので、これより強い武器がないの。基本、メタル系スライムはすぐ逃げるけど、こいつは決して逃げない上に、素早過ぎてこちらは逃げられないようだわ。そして、今まで誰も倒したことがないみたい。」

 「え? 決して逃げないとか逃げられないとか、誰も倒したことがないって、どうして分かるの?」

 「所持金が半分になって王様の所に帰って来た人の証言だそうよ。」

 「それって・・・・・絶体死ぬってことじゃあ・・・うぎゃー!! 振り向いたら死ぬって、こいつに出会うことだったんだ。」


 「ナツメー、てめーのよこしまな欲望のせいでこうなったんじゃねえか! どうしてくれる!」

 「どっちみちヘブンズ・ドアーで振り向かせるんだったんじゃないの? いろは、オキタ、何か手はないのー?そうだ! パルプンテだよ!『くだけちった』とか『びっくりした』とかでなんとかならない? リムルダール近くでその手で経験値稼いでたよ。」

 「『くだけちった』はSFC版以降では経験値もらえないわ。」

 「仕方がないよ。死ぬよりましだ。アルファでもいろはでもいいよ。連発して~!」

 「よ~し、パルプンスカ!」

 「え? 何その呪文?」


 『オリハルコンスライムは仲間を呼んだ! オリハルコンスラムはキングオリハルコンスラムになった!』


 「ふぎゃー! さらに状況が悪化したー!!こうなったら『くだけちった』が出るまで続けてよ!」

 アルファといろははしばらくパルプンテを連発していたが、辺りに花が咲いたり、いろはとアルファに尻尾が生え、笑ったナツメをしばいたり、押しつぶしで攻撃してくるスライムから逃げたりと、現場は大混乱になった。そしてさらに事態は悪化した。


 『キングオリハルコンスライムは仲間を呼んだ。アルティメットドラゴンが現れた!』


 「またとんでもない敵が来た~! アルティメットドラゴンで何? そんなやつ今までいた? 遊戯王じゃないのそれ? 強すぎるんじゃない?」

 ここでいろはが歓喜の声を上げる。

 「これは! いけるかもしれないわ!」

 「え? この詰んだ状態で?」

 いろはは混乱呪文をドラゴンに唱えた。

 「よし、ドラゴンが混乱したわ。」


 『アルティメットドラゴンは混乱している。アルティメットドラゴンは炎を吐いた。キングオリハルコンスライムに50のダメージ!キングオリハルコンスライムを倒した。』


 「うわっ! やったぞ! どうなってんだ?」

 「攻撃設定基準値の違いよ。こちらの攻撃は相手の防御力で多少変化するけど、基本攻撃力の半分の値がダメージの設定よ。会心の一撃は攻撃力数値がそのまま、まあ、2倍のダメージとなるわね。しかし、この手の防御力が桁違いに高いモンスターは、基本1しか与えられないの。

 ところが敵モンスターが混乱して味方を攻撃すると、ステータスによるダメージではなく、それぞれモンスターに設定された数値がダメージになるので、この場合のように防御力に関係なく所定のダメージを与えるってことね。」

 「メタルスライムとスカイドラゴンがセットで現れたら、スカイドラゴンを混乱させ、炎でメタルスライムを倒すのと同じやり方だ。ただ問題は・・・あのアルティメットドラゴンをどうするかだ~!」

 「あいつめっちゃくちゃ強そうだよ。混乱してても味方がいなけりゃこっちを攻撃するぞ。」


 アルファといろはは攻撃呪文を唱えようとしたが、その時突然青い稲妻が走った。

 「秘剣! ブルー・ダイヤモンド!」

 青い衣装をまとった金髪の剣士が振り下ろした稲妻の剣は、アルティメットドラゴンを一瞬で倒してしまった。

 「ふふふふふ、経験値はがっぽりいただきだ。」

 そう言って戦士はドラゴンを引きずって去ろうとしていた。ナツメとアルファが興味深そうに言う。

 「ブルー・ダイヤだって、金銀パールがもらえるよ。」

 「俺を洗剤と一緒にするな!」

 「あれってテリーじゃない? ヘンダーランドの。」

 「それはクレヨンしんちゃんの映画だろ! テリーのワンダーランドだ!」

 「あの青い服、ぶりぶりざえもんだよね? 変だ変だよ、ヘンダーランドー!!」

 「歌うな! しつこいんだよ!」

 「ねえ、お姉さんへのストーカーは上手く行ってるのかい?」

 「貴様に姉さんの何が分かる!」

 「あれ、今ボク明治の剣客に思われたかな? じゃあ、あんたは弟のエニグマなんだ!」

 「話を脱線させるな!」

 「ああ、そうだったね。べらぼうってやつが姉さんをさらったんだよね。」

 「ワルぼうだ! 尻ふき棒なんぞにさらわれてたまるか。」

 「確か相棒はびんぼうって言ったよね?」

 「わたぼうだ! わざと間違ってるだろ。というより、ワルぼうもわたぼうも関係ない。誰のことを言ってるんだ。俺の名はテルー。ドラゴンハンターだ。それじゃあな。」

 そういってテルーはドラゴンを引きずって行ってしまった。ナツメはひどくがっかりした。

 「あ~、なんてこった。経験値はあいつがみんな持ってってしまったよ。せっかくレベルマックスになれたっていうのに。」

 経験値が得られず、望んでいたレベルマックスになれなかったのを、ナツメとアルファは悔しく思った。


 すると、一人の若い女性が声をかけてきた。

 「迷ったの?」

 ナツメが歓喜の声を上げる。

 「わっ! ほんとにいた! 鈴美ちゃんだ! ねえ、ポッキーちょうだい!」

 「あら、わたしの名前を知ってるんだ。えらいわねえ。いいわよ。じゃあ、そっちの端っこ持って」

 「来た来た!」

 ナツメは彼女が差し出したポッキーの端っこを持った。

 「今からポッキー折るけど、わたしとあなたとどっちが長いと思う?」

 「あれ、展開がちょっと違うね。まあ、いいか。そりゃあ、鈴美ちゃんでしょ!」

 「じゃあ、折るわよ。『ポキッ!』あっ、わたしが短いから、わたしの勝ちね。」

 その途端、ナツメの体は霧のようなものに包まれ、次の瞬間にナツメはコインチョコになっていた。アルファがびっくりして彼女に詰め寄る。

 「てめえ、今何しやがった!」

 「彼は賭けに負けたのよ。わたしの名はレイミ。能力は、賭けに負けた相手をコインチョコに変えてしまうってものよ。」

 「なんだその魔人ブウみたいな能力! ナツメを元に戻せ!」

 「え、魔人ブウって思われちゃった。いいわよ、あなたたたちの誰かがわたしに掛けで勝てたらね。次のゲームは・・・」

 いろはが間に入って来た。

 「今度はわたしが受けて立つわ。コインチョコだなんてふざけた能力、打ち砕いてやるわよ。ルールは私が決めてもいいでしょ? このあいうえおチョコを使うわ。」

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― 新着の感想 ―
[気になる点]  隊長! 改行がほしいです!  カオスなお話大好物なので、初版頃の全部つながった奴解読しようとしたけど、大変だった。  章分けされて読みやすくなったけど、贅沢言うと、適度に空行が、ほし…
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