第三章 かぐや姫
三人はアルファを仲間に加え旅を続けた。オキタは男旅に若い女の子がついてくるのを心配していたが、ナツメは古いネタに御執心で、変な気を起こしてはいないようだ。まあ、何かあればスタンドかコスモか錬金術で懲らしめられるので、ナツメも悪いことはしないだろう。
やがて一行は大きな村に入った。そこで一軒の家に男たちが群がっているのに出くわした。アルファがむさくるしい物を見る目で言う。
「何だろ、あれ?男ばっかりあの家にへばりついてる。穴開けて中覗いている奴もいるぞ。」
近くでそれを見物していた人に聞いてみた。
「何なんですか、あれ?」
「あの家にかぐや姫がおるんじゃよ。なんでも絶世の美女で、見るだけで幸せになるっていうんじゃとよ。男どもは何としても嫁にしたいと思っておるんじゃが、かぐや姫は誰とも会おうとせん。爺さんと婆さんがおっての、最初はみんなを追っ払っておったが、しつこすぎて疲れてしもうたようじゃ。もう家に籠ったきり、出てこようとせん。」
ナツメは興味津々だ。
「会ってみたいな。きっと無理難題を仕掛けて来るから、その謎を解いてみたいな。何とか周りの連中をどかせないかな?連中がいなくなったら爺さん婆さん喜ぶだろうし。アルファ、オキタ何かいい知恵ない?」
「あいつの能力を真似してみよう。みんなゲラゲラ笑ってくれる?」
沖田は仕方なくだったが、ナツメは待ってましたとばかりにノリノリで笑い始めた。
「ウヒヒヒヒ、ゲラゲラゲラ・・・・」
アルファは指輪の力でかぐや姫の家の上空に太陽を出現させ、ものすごく気温を上げた。家の周りにいた男どもは暑さのあまり退散した。
続いて家の中からお爺さんとお婆さんが『参った、参った』と汗を拭き拭き出て来た。それから若い女が暑さに文句を言いながら出て来た。十二単を着て汗だくになっている。
「何この暑いの?誰よこんなことしたの?」
三人は彼女をよく見ようと近づき、アルファがナツメを指して話し始めた。
「こいつがね、北風と太陽の話みたいに、太陽で照らせばあんたの服を脱がせられるかなっていやらしいこと考えたんだよ。」
ナツメはアルファの予想外のジャブに面喰った。
「何言ってるの!?あんまりだよ。そんなことするわけないじゃないか!」
「女のウソは赦すもんだよ。」
「自分でウソって言ってるし!」
「二人ともうるさい!わたしが怒ってるのはこの暑さでチョコレートが溶けてしまったことよ!」
そういって彼女は溶けたチョコレートの入った大袋を見せた。それを見てアルファがあからさまに嫌悪感を見せた。
「なんだ、あいうえおチョコじゃん。クソと同じだから、溶けたそいつは便所に流すのにちょうどいいじゃん。」
「おい!今てめーなんつった!」
「ああっ、何べんでも言ってやるよ。あいうえおチョコなんざ、犬のクソとおんなじだ。」
彼女はあいうえおチョコを侮辱されて、完全にブチ切れているようだ。その原因となったのはアルファのはずだが、彼女はナツメを威し始めた。
「てめー、わたしの頭をサザエさんみてーだと言ったな。」
「え~!?なんでこっちに矛先が向くの~?!しかもチョコと関係ないし。」
「確かに聞こえたぞ。」
「言ってないし~!!」
アルファも脅迫に加わる。
「ナツメ、てめー、ハマーンの髪型がミンキー・モモみたいって言ったな!」
「いや、確かにそうだけど・・・言いたくても言えなかった・・・ってなんでこんな展開になるの~?」
かわいそうなナツメをオキタが助けてくれた。
「チョコが溶けたのは申し訳ありません。これ、あいうえおチョコ・プレミアムです。カカオのグレードが上がり、五十音もコンプリートしてます。これに免じて勘弁してやってくれませんか?」
「・・・・・ふん、まあいいわ。あいうえおチョコを侮辱した二人は、いずれ痛い目に遭わせてやるから。」
「え~、なんでそこにボクが入ってるの~?」
ふと気が付くと、一人の男がそばにいた。
「誰?あんた。」
「それがしは藤原不比等だ。」
「そうだ、かぐや姫に求婚した五人のうちの一人だ。ここでは本名で出てるんだ。」
「え、あのかぐや姫を一番苦しめたっていう、藤原不平等のこと?」
「不平等ってなんだよ。不比等だ!」
「ああ、不等式だったか。」
「いや、不等辺三角形だろ。じゃあ、三角でいいや。」
「それで三角、何の用です?」
「三角って原形留めてないじゃないか。」
三人と不比等が言い争ってると、お爺さんとお婆さんが取り巻きたちを追っ払ってくれたと感謝し、三人を家に招いてくれた。ついでに三角もついてきた。先ほどの若い女は奥に引っ込んでしまい、姿を見せなかった。
「本当にありがとうございます。毎日毎晩、あのように家の周りで騒がれていましたので、疲れ切っていたんです。助かりました。何かお礼をして差し上げたいのですが。」
オキタが三人を代表してあいさつする。
「いえいえ、御礼には及びません。わたしどもは旅の者で、たまたま通りがかっただけですから。聞く所によると、先ほどの若い女性を妻にと、大勢の人が言い寄っているそうですが?」
「そうなんです。かぐや、彼女の名前ですが、どうも名前だけが独り歩きして大勢の人を呼び寄せたようでして。かぐや姫とは別人だと言っても誰も耳を貸さないんですよ。」
ナツメが話に入って来た。
「へえ、かぐやっていうんだ、彼女。空の太陽消えちゃったから、また男ども来ると思うよ。これじゃ休まらないね。彼女と話を出来ないかな。何か助けがしたいな。」
出しぬけに奥から声がした。
「助けがしたいって言うのね。先ほどの侮辱に対する償いがたんまり残ってまるからね。ということで、言うこと聞いてもらいましょうか。」
十二単衣を脱いで簡素な服に着替えたかぐやがみんなの前に進み出てきた。オキタがまず自己紹介を始める。
「わたしはオキタ・アルガといいます。」
「わたしはアルファ・イージス。」
「ボクはナツメ・デーツ。」
「いろは・かぐやよ。」
「へ~、いろはちゃんっていうんだ。」
ナツメがヘラヘラしてるので、アルファが叱り飛ばす。
「何デレデレしてるのよ。また何、一緒に旅しませんかって言う気?」
「そうだね、それいいと思うよ。」
いろはが尋ねる。
「旅って何?」
オキタが説明する。
「我々はクニ国目指して旅をしています。ヲニ国の大切な宝がクニ国に盗まれた疑いがあるものですから。頼りになる仲間を捜しながらの旅なんです。」
いろははナツメに尋ねる。
「あなた、わたしに来てほしいの?」
「そりゃあ、来てくれたら嬉しいよ。」
「その理由はなんなの?」
「世の中、女の人はいろいろ大変で、言いたいことを自由に言うこともままならないよね。でも、キミは言いたいことはっきり言うみたいだから、一緒にいるときっと楽しいし、頼りになると思ってね。」
「・・・・・お爺さん、お婆さん、わたしがここにいてもストーカーがうるさいだけだから、しばらく旅に出てもいいかしら?この人たちの、何か大きな目的の手助けができるかもしれないし。」
「そうかい、そうかい、行っといで。わしらのことは心配せんでもええ。わしらは見かけよりは若いんじゃ。気にせんでええ。世界を見ておいで。」
「ありがとう。」
ナツメが一番喜んでいる。
「いいねえ。またきれいな女の子が増えたよ。こうでなくっちゃね。」
いろはが怪訝そうに言う。
「『また』ってどういうこと?男二人に獣が一匹でしょう。どこにほかの女がいるっていうの?」
「何だとこらー!!これ見よがしに毒吐いてんじゃねえぞ!」
「とりあえず、言葉はわかるみたいね。」
「ぶっとばすぞ、こらー!」
「まあ、二人とも、仲良くしようよ。いずれボクを取り合ってしまう二人なんだろうけど。」
「「どさくさに紛れてキモイこと言うんじゃねー!!」」
ここは二人とも息が合ったようだ。
いろははオキタにいろいろ尋ねた。
「さっきの太陽は何?」
「あれはアルファさんが持っている指輪の機能の一つです。」
そこでナツメが付け加える。
「彼女の正体はジオンの総帥で、秘密兵器を授けられたんだよ。」
「ここで人生終わりにするか?」
「強い子に出会えてよかったってなる~!!!」
二人が会話の邪魔をするのでいろはが叱り飛ばす。
「うるせえ、うっとおしいぞお前ら!ねえ、オキタ、一緒に旅するのに、アルファが持ってるようなグッズはあるの?彼女と同じ指輪は嫌だけど。」
「じゃあ、このペンダントはどうですか。形が違っても、性能はみんな同じです。腕輪タイプもブローチタイプもありますよ。」
「特殊能力アイテムっていうわりには、バーゲン品みたいね。ペンダントでいいわ。それと、あなたの目に着けてるスカウターもくれないかしら?」
「これですか?・・・まあ、いいでしょう。あなたの方が上手く使えそうですし。わたしの持ってるタブレットと連動していますが、みんなの分もタブレットを用意した方がよさそうですね。」
ここで三角が怒って喚きだした。
「待て待て!何勝手に話を進めているんだ。それがしはこのかぐやに結婚を申し込みに来たんだ。邪魔するんじゃない。」
「勝手なことしてるのは三角、あんたでしょうが。わたしは誰とも結婚する気はないわ。帰ってちょうだい。しかも、あんたのいうかぐや姫は別の人でしょ。わたしじゃないわ。」
「ごまかしても無駄だ。そなたはそれがしの妻になる人。何が何でも妻になってもらう。」
ナツメとアルファも話に加わった。
「名前は三角だけど、三角関係どころか蚊帳の外だね。」
「それがしは三角ではない。不比等だ。失敬な。」
「よく見ると、のび太とも読めるね。」
「じゃあ、妻はジャイ子だね。」
「え?しずかちゃんじゃないの?」
「その歴史は闇に葬られたらしいよ。」
「そんな・・・あのマンガ、ホラーだったんだ。」
「そういや、あの猫型ロボット、ネコドラくんとかいったかな。耳をネズミにかじられたっていうけど、あれってグーグー・ドールズにやられたのかな?22世紀のロボット製造工場なんだから、塵一つないはずなのにネズミが入りこむなんておかしいね。スタンド以外無理だろ。」
「えーい、貴様ら、人の邪魔をするんじゃない。それがしはかぐやに用事があるのだ。貴様らの茶番に付き合ってる暇はないんだ。」
ここでいろはが話を区切った。
「そんなにいうなら三角、一つ課題を出しましょう。それが達成できれば検討の余地はあると言っておきましょう。」
「お、始まった、始まった。課題が出るぞ。なんだろな。」
「三角、蓬莱の珠の枝を持ってきなさい。3分間待ってやる!」
「時間なさすぎ!絶対無理じゃん!」
「ナツメ、あなたは飛行石だ。時間だ、答えを聞こう。」
「なんでボクに課題が出てるの?ていうか、え~?持ち時間ゼロ?ラピュタは本当にあるの~?」
「安心してください、ナツメ君、いろはさんに渡したペンダントは飛行石と同じものですから。」
「あら、クリアできるとは思ってなかったわ。というわけで、三角、あんたは退場ね。それに、人違いだから。いい加減にして。」
「まったくいいとこなしだな。ここは引き下がるしかないのか。」
不比等はすごすごと退散した。
ナツメがまた余計なことを言った。
「それって飛行石なんだ!バルスって言っちゃ駄目なんだよね?」
「あなた今、亡びの言葉を口にしたわね!」
「あ、言っちゃった・・・ど、どうなるの・・・?」
オキタが忠告する。
「ほんとに困ったもんです。安全装置をオンにしておいてよかったですよ。」
「安全装置付けてたら意味なくない?」
いろはは今までの感謝を老夫婦に伝えて別れを告げ、クニ国目指して再び旅立った。