第十四章 ヒミコの正体
一行は休息を楽しんだ後、ヲニ国に帰ることにした。宇宙空母であっという間にヲノ国の近海まで飛び、着水した。そこから小舟で岸に着いたが、空母よりも小舟に乗っている時間の方が長かった。それから陸上を歩いて1か月で女王の待つ城へ到着する。オキタが笑いながら言う。
「画面の上じゃ、山を一歩で越えてますがね。その一歩が一日ってところでしょうか。正直、スライムだけでレベルアップしようと右左にちょこちょこカニ歩きしてれば、何万年も経っていることになりそうですね。
ああそうです。人類は月に行くより隣の家をノックしに行く方が難しい場合がありますね。」
ナツメが答える。
「一歩が一日なら、伝説の勇者の鎧ってけちだよな。一日でHP1しか回復しない計算になるよ。でもあの国ですごい奴がいるぞ。鍵作ってる人だ。その鍵、一回使うと壊れてしまうんだよ。そんなのどうやって作るんだ?とんでもない技術力だよ。波動砲も真っ青だ。
そうだ、年が経つっていう設定、ウィザードリィにはあるぞ。宿に泊まると日付が進むんだよ。桃太郎伝説も年取るぞ。
そういやモンスターを倒せばお金が手に入るっていう設定、すげえよな。モンスターは買い物するんだろうか。そうじゃなきゃお金持ってる説明つかないよな。そのお金ってラスボスが給料で払ってんだろうか?だとすると、モンスターってサラリーマンだよな。給料は手渡しだよな。銀行振り込みってわけにいかないし。スライムなんか財布持ってるようには見えないね。
そもそもラスボスは造幣局とつながりありそうだな。モンスター持ってるお金をそのまま店で使えるもんな。財務省はラスボスと持ちつ持たれつっていうわけだ。ていうか、ラスボスは財務省そのものだよな。」
みんなはナツメのきままな妄想に付き合いながらヲニ国の首府を目指した。アルファはナツメがベタベタくっついてくるので一緒に歩くのを嫌がり、『離れて』と言ってもナツメが言うことを聞かないのでうんざりしていた。
「もう、うっとうしいな。またカエルになっていろはに技かけられればいいのに!」
と怒鳴りつけると、あの黒いのが現れた。そしてナツメをパクッと飲み込んでしまった。
「あんがと、しばらくそれでついて来てくれる?」
アルファはいろはと連れ立って歩くことにした。ナツメを飲み込んで再びカエルになった黒いのは、いろはの射程距離に入らないように気をつけながら同行した。
「ふう、助かった。みんなの前だってのに、デレデレベタベタしていやんなっちゃう。」
いろはが少し不思議がる。
「このカエル、何かこの前と少し違うわ。」
するとカエルになったナツメがうんちくを混ぜて語り始めた。
「前のはモリアオガエルタイプだよ。吸盤があるから船体をよじ登れたんだ。これはヒキガエルタイプだよ。ガマって言うけどね。カエルはフロッグ、ヒキガエルはトードだから、意味合いが変わるね。カエルは水を泳いでピョンピョン飛ぶけど、ガマはあまり飛ばずに歩くし水にも入らないんだ。ガマが水に入るのは卵を産む時だね。ちなみにカエルやガマの産卵は交尾じゃなくて包接っていうんだよ。」
言われて気がついたが、ガマは確かに飛ばずに歩いている。ガマが提言してきた。
「ボクが荷物を持とうか?それともアルファ、君を乗せてあげようか?いろはでもいいよ。」
アルファはイボイボのガマの背中に乗りたいと思わなかったが、いろははピョンっとガマの上に飛び乗った。
「揺れるけど、まあ、しばらく休ませてもらおっと。」
ガマは結構タフなようだ。嬉しそうに、といってもガマなので表情はないのだが、喜んでいろはを運んでいる。結局アルファも乗りたくなってきた。
「後で代わってね。」
ガマは喜んでアルファも乗せて歩いた。
「疲れないの?重くないの?」
ガマはのんきに答えている。
「楽しいよ。女の子乗せてるからね。男はそんなもんだ。」
いろはが疑問を呈した。
「しかし、なんでカエルなんかに変わるわけ?」
ガマは白黒のチェック模様のシルクハットを頭に乗せて語りだした。
「カエルは座ったままの姿勢でジャンプが出来るからね。」
アルファがまたかという顔をする。
「それが言いたかっただけってこと?」
ガマは二人を代わる代わる乗せて三日間歩いた。しかし、ガマのままで何も食べずにいたので弱ってあえなくつぶれてしまい、ガマはナツメを吐き出した。黒いのはまたどこかへ去って行った。アルファが這いつくばったナツメをのぞき込む。
「もう、ちょっと大丈夫なの?」
「え、ボクっていい男なの?」
顔をあげてナツメが妙なことを聞いてきた。アルファが変な顔をして聞いた。
「体は何ともないかって聞いてるの。いい男って何よ。」
「大丈夫っていい男って意味だというよ。」
「ややこしいから中国語の講座はしなくていいよ。歩けるの?」
「ああ、いい男だからね。」
「だからややこしいっての。」
「はい、どうぞ。」
ナツメがアルファの前で兩手を差し出す。
「何?」
「抱っこしてあげるよ。」
「・・・・・」
アルファはガマに乗っていたので、ナツメの抱っこがまともなものに思えた。黙って躊躇しているといろはが名乗り出た。
「あなたが嫌ならわたしがしてもらうかな。」
「う~・・・何この展開。分かったわよ。はい。抱っこしてちょうだい。」
アルファはしぶしぶナツメにお姫様抱っこをしてもらった。ナツメは大喜びで歩いていく。ナツメの元気さにテルーが感心する。
「しかしナツメはタフだな~。ガマの間の何も食べてなかったぞ。その分食料が節約できてよかったけど。」
オキタがテルーに聞いてみる。
「テルーさんはいろはさんを抱っこしたらどうですか?」
テルーが参ったを言う。
「体力的に無理だよ~。こっちが手を貸してほしいくらい。ガマに乗りたかったよ~。」
アルファは首と腕がしんどくなってきた。
『ローラ姫はこれで毒の沼とか進んだんだよな~。しかもあの勇者、鎧とか着てたよね。ごつごつして痛くなかったのかねえ。そういや牢屋の前にドラゴンがいたよな~。糞とか息とか臭かっただろうな~。彼女モンスター並みに強いんじゃないかな。
しかも「王女の愛」で勇者の経験値や現在位置まで把握してたぞ。いろはみたいにスカウターでも着けてたのかな。それとも浮気防止のGPSなんか付けてたかも。スカウターじゃなくてストーカーだよ。あの女一体何者なんだよ。
抱っこされたまま竜王のとこまで行く場合、あのピシッ、ピシッていうバリアどうしたんだ?そのまま竜王倒して王様のところに帰ったら、階段のところに瞬間移動したよな。ローラ姫はヤードラット星人かな?それともザ・ハンドでも使えるのかな?そしたら王様、ローラ姫が連れてかれた時、「オロロ~ン」って泣くんだろうな。
そういやローラ姫、自分を連れてってくれってせがんで、「いいえ」を無限拒否して強制的に勇者に「はい」って言わすんだよな。究極の諦めない女だよ。レジェンドとかキング・ローラと言おうか。男はそういう女でも、美人とかかわいかったら嬉しいんだろか?
そういや、「王女の愛」使ったとき、「おしたいしていますわ、ぽっ」なんて言ってたかな?正直「ぽっ」じゃなくて「ゴゴゴゴゴゴ」とか「ドドドドドド」それとも「ドッギャーン」だよな。』
ローラ姫のことを考えていて、アルファは嫌な予感がした。
『ナツメの奴、まさか・・・』
アルファにとっては救いのタイミングで、オキタがみんなに声をかけた。
「みなさん休憩しましょう。これが最後の休憩です。王宮はすぐそこですから、もうひと踏ん張りです。」
残りの食糧をふんだんに食べ、みんな十分に満たされた。ナツメも満足そうだ。
「いや~。ずっと断食だったし、アルファやいろはを運んで体が心地よく疲れているから、食べ物がおいしいねえ。今から行けば、日が高いうちにゴールできそうだね。いい天気で良かった。みんなお疲れさんだ。」
アルファは抱っこはもう嫌だとナツメに言った。
「もう自分で歩くからね。首が痛くなったよ。」
ナツメは心底残念そうにした。
「え~!?もうちょっとなのに~。」
アルファは頑なに拒んだ。
「嫌なものは嫌なの。その手には乗らないんだから・・・」
アルファはいろはに小豆洗いの話を聞いていたので、かまをかけてみた。
「じゃあ、わたしの質問に答えたらおんぶでもだっこでもさせてあげるわよ。あのさ、あなた、夜中に川で何か洗ってたよね?何洗ってたの?」
「え!?見てたの!いや~、妖怪小豆洗いの真似してたかな~・・・幽霊の正体見たりナツメ君、なんてね。」
「・・・ほんとに小豆洗いって答えやがった・・・じゃあ、その小豆洗いになる前に、どんな夢見てたか言ってみろ。」
「派手なおかっぱ頭と、チョコ好きの髪の長い女のお化けが出て来る怖いくらい○○な夢かな・・・」
「それでどうなったの。」
「お漏らししちゃったかな・・・」
「放送コードギリギリのごまかししやがって・・・」
そこでいろはが質問を加えた。
「それはそうと、気が付いたことがある。夜中にパンツ洗った奴は、鼻の頭に血管が浮き出る。」
「うそだろ、いろは。」
「ああ、嘘だぜ、だが、間抜けは見つかったようだな。って男三人みんな触ってるのかよ!アルファまで触ってるじゃない!」
「ああ、そうか!クニ国の牢屋だ!あそこには鉄格子があったもんな。」
「てめーは黙ってろ!」
一行は耕作地を通り、街並みを眺めながら王宮へたどり着いた。門番がオキタの姿を確認する。
「みなさん、おかえりなさいませ。ヒミコ様にお伝えしてまいります。待合室でしばらくお休みください。」
そう言って門番は各所へ報告へ行った。ヒミコはすぐに会うとのことで、一行は体を浄めて身なりを整えた。そんなこんなでヲニ国のヒミコの王宮までの旅が終わった。
一行はヒミコの前に横一列に並んだ。
「皆の者、ご苦労であった。礼を言うぞ。まずはオキタ、そなたから報告を聞こうか。」
ヒミコの問いかけにオキタが今までの経緯を説明した。
「大魔王の正体は人間の悪意と怠惰が生み出した、狂気の宇宙樹でした。この巨大樹は人々を永遠のまどろみに陥らせ、養分を吸い取って全人類を死滅させようとしていました。我々というよりナツメ君がですが、これを粉砕することに成功しました。
しかし、人々の悪意が満ちる時、またこの大魔王は姿を現すかもしれません。」
ヒミコは満足そうにほほえみを浮かべた。オキタは続けてヒミコに尋ねる。
「ところで、ヒミコ様、あなた神龍ですね。」
みんなが驚愕する。
「どういうこと?!」
いろはがスカウターの数値を述べる。
「スカウターの上限値は1億(99999999)ですが、FF2のように『あ9999999』となっているので、1億は軽く超えています。」
オキタが納得する。
「やはりスカウターの故障ではなかったのですね。私が初めてヒミコ様を見たとき、その数値はあり得ないと思いましたからね。」
ナツメが騒ぎ立てる。
「それってラスボス後の裏ボスってこと?!ヒミコ様の正体はヤマタノオロチじゃなかったっけ?ヤマタといいながら5本しか首ない奴。カンダタ仮面倒した奴。」
アルファが訂正を入れる。
「カンダタ仮面って言わないであげてよ。たまにオルテガが勝つこともあるみたいだよ。オルテガ倒したのはヤマタノオロチじゃなくてキング・クリムゾン。オープニングの妙な心理テストなんかにメモリ使わずに、オルテガのビジュアル何とかするべきだったとは思うけどね。」
ナツメが再度つっこむ。
「今キング・クリムゾンって言った?カンダタ仮面の正体はポルナレフってわけ?」
ヒミコが笑う。
「おっほっほっほっほ。元気なお仲間です事。そうですよ。わらわは神龍です。ただし、ラスボスでも裏ボスでもありませんよ。」
オキタが尋ねる。
「世界は滅びかけました。こんな危ない任務、なぜあなたご自身で行われなかったのですか?そのほうが確実に世界を救えたのではないですか?我々のような非力な人間に任せるのは危険ではないですか。」
ヒミコはほほえみながら話を続ける。
「ふふふふ。わらわが何もかもやってよかったのかの?確かにわらわがやれば事は簡単に済んだじゃろうの。いくつかたとえを出そうかの。わらわがやれば物事はすべて過去形で語られることになるぞよ。何もかも済んでしまっているのじゃからの。誰かわらわの問いに答えよ。まず一つ目。『海賊王に俺はなった。』」
ナツメが早速反応する。
「わ~い。ワンピース第一話が最終回だ!初回拡大最終回スペシャルになっちゃうな~。」
「では、二つ目。『このジョルノ・ジョバァーナには正しいと信じる夢があった。』」
アルファが答える。
「なにそれ、そんな諦めた奴、ブチャラティ仲間にしないぜ。ほんとに何言ってんだおめーだよ。」
「三つ目。『クリリンのことだった。』」
ナツメがつっこむ。
「それでスーパーサイヤ人になれるんなら、ベジータも苦労しないぜ。」
「まだまだ行きますよ。『禰豆子、鬼になっちゃった』」
アルファが同じつっこみを入れる。
「また第一話最終回だよ。しかもまったく救いがない~。ラーテルになった方がましだ。」
「『だが、断った。』」
「え~、ハイウェイ・スターはどこ行ったの?もしかして岸部露伴、トンネルの部屋でずっと待ちぼうけ?」
「『この岸部露伴をなめたな。』」
「なめたのきっとブチャラティだよ。『岸部露伴、お前は嘘をついていた』何これ?」
「『ボールはトモダチだった』」
「うっそ~、翼第一話で引退~?」
「『逃げちゃダメだった。逃げちゃダメだった。逃げちゃダメだった。』」
「逃げちゃったんだ・・・。」
「『一匹残らず駆逐してやった。』」
「エレン初めから無双じゃねえか。」
「『俺は火影になったてばよ。』」
「ナルトって読み切りだっけ?ダイダラ追いかけるだけで地球一周してたように思うけど。長い谷だったな~」
「『穴があったから入った。』」
「え~?煉獄さん壊れた~。」
「『この空条承太郎はいわゆる不良のレッテルを貼られていた。』」
「え?なんか承太郎さん、人間丸くなってない?」
「『夢は終わった』」
「え~、ワンピース最終回二回目?。伏線回収せずに終了~?!」
「いい加減終わろうかの。『てめーは俺を怒らせた!』」
「あの~、それはそのままでいいんですけど・・・」
ヒミコが締めくくる。
「どうじゃ?何もかも、誰かが、つまり神が人のやることを先にやってしまったら、楽しいかの?神が災禍をすべて取除いた方がいいかの。人の間違った行いを強制終了させる、あるいは初めからさせないことがよいかの。そういうシステムを構想する人間は後を絶たぬ。人が罪を犯す前に、間違う前に、精神的に物理的に介入して止めさせる装置を思いつくのじゃ。
人は失敗することを恐れる。失敗したくないために、始めから何もせず、成功した夢だけを見ようとするのじゃろう。
そして世の中平穏無事で問題や争いが全くなくなるのじゃ。最終的には空想の世界のみの『永遠のまどろみ』に至るのじゃ。
そこまでではなくとも、世界を自分の思い通りの形にしようとしたのは、テルー、いや照彦、そなたじゃの。」
みんながテルーの方を見る。
「何~?どういうこと?」
テルーが身の上話を始める。
「俺はいつも姉の話をしてただろ。その姉ってのはヒミコなんだよ。俺は姉を超えて自分を認めてもらおうと思っていた。そこでまずはクニ国を乗っ取り、打ち出の小づち、浮鯛抄、十六花弁菊花紋木札を使い、この国すべてを支配しようと考えたんだ。民がみんな平等で生きられるようにな。平等と言っても配給制みたいなもので、自由は全くないんだがな。結局大魔王の影響を受けて堕落してしまったが。そして姉をも自分の手中に収めようとした。
それでも、自分の中のヘタレがそれにブレーキをかけていたんだ。ヘタレはいつも俺の野望を邪魔していた。キングオリハルコンスライムを倒したドラゴンは俺自身、ドラゴンを倒したのも俺、藤原不比等も俺、そもそもクニ国の王ビャッコは俺。残ったヘタレが本物の俺。」
アルファがこき下ろす。
「なんだ、ヘタレの前はくそったれかよ。」
ナツメが変に納得する。
「そうか!うんこした後やたら屁が出るのはテルーがルーツだったんだ!」
テルーが嘆く。
「あんまりだ~・・・」
オキタが理解を深めた表情で話す。
「なるほど、クニ国の王はあなただったのですね。あの国は男が犬で女が人だという言い伝えがあります。雄犬は子犬を作るだけで後は知らんぷりするように、あの国の男は外面がよく、欲深で狡猾ですが、家族を全く大事にしない性癖があります。危ない真似をしましたね。この世はヘタレに救われたわけです。」
ナツメが尋ねる。
「テルーの名前、照彦って言った?」
テルーが答えた。
「俺の名はアマテルクニテルヒコヒコホアカリクシミカダマニギハヤヒ、略して照彦、テルーだ。」
アルファが驚く。
「何それ、どっかの女の子がはまった川の名前ですか~?」
ナツメが別の意味で驚いた。
「それって浦島太郎じゃん。髪の毛白いのはそういうわけ?もしかしてヒミコ様の名前も長いわけ?」
ヒミコが自分の名を名乗った。
「わらわの名はアマテルヲニテルトトヒモモソヒメヒメホアカリクシミカダマナガスネトミヤスタチバナオトヒメ、略してヒミコじゃ。」
一同驚く。
「もっと長くなった上に無理矢理縮めてる~!」
ナツメが付け加える。
「ルイズ・フランソワーズ・ル・ブラン・ド・ラ・ヴァリエールなんてのもあるぞ。」
アルファがそれは言わないでという感じだ。
「わざわざ言わんでいい。」
テルーが説明を続ける。
「姉さんは乙姫でもあるんだ。さっきの三つの宝物は玉手箱に入っていて、それを持ち出したんだ。姉さん、これ返すよ。ほんとにごめん。」
ヒミコはテルーから玉手箱を受け取ると、ナツメに向かって語りかけた。
「ナツメよ、今回の働き、心から礼を言うぞ。どうじゃ、ナツメ、わらわはそなたを好きじゃ。わらわを忘れないために、この玉手箱を授けるぞ。」
ナツメは蒼白になった。
「ふぎゃ~!!また心理戦ですか~!?だからボクはダービーじゃないよ。玉手箱って開けたら煙が出て爺さんになるんでしょ。箱の中身はザ・グレイトフル・デッドですか~!ヒミコ様はプロシュートの姉貴だったんだ。だからさっき過去形のたとえばかりしゃべってたんだ。テルーはマンモーニだったんだ。浦島太郎が釣竿持ってるのそういうこと~?最後は『ぶっ殺した』で終わるの~?!助けて~!誰か氷持ってきて~!!」
ヒミコは笑っている。
「面白い男よのう。とまあ、玉手箱はオキタ、そなたが受け取ってくれるのう?」
いろはが質問する。
「あの、玉手箱の中に入ってる打ち出の小づちと浮鯛抄に十六花弁菊花紋木札って何?打ち出の小づちって、背が伸びたり、お米が出て来る宝物でしょ?」
オキタが説明する。
「打ち出の小づちはお米が無限に出て来るものではなくて、百姓にお米を作らせて好きなだけ受け取ることの出来る権利証です。浮鯛抄は全国のどこの海や河川で漁をしてもよいという権利証です。十六花弁菊花紋木札は全国のどこの山でも木を切ってもよいという権利証です。これらは農林水産業すべての利権を手にするものなのです。イコールこの国の支配権です。
すみません。私は大事なことを忘れていました。あなたに借りていたゴールド・エクスペリエンス・レクイエム・カードをお返しします。おかげでこの任務を完了することが出来ました。」
ヒミコがオキタに改めて確認する。
「そうか、これは役に立ったようじゃな。ある意味大魔王よりも恐ろしい悪魔のカードにもなりかねなかったが、うまく使ってくれたのじゃな。」
オキタはヤレヤレといった感じで話す。。
「そうですね。まさに悪魔のカードです。利用枠1兆円なんて、政令指定都市の年間予算ですよ。それを人一人に託すなんて、正気じゃないです。『宇宙戦争するほどの買い物しましたし・・・』」
ヒミコがオキタを諭す。
「オキタ、今回の働きに対し、そなたへの褒美は何がよいかの?何でも言うがよい。」
オキタは別に嬉しくもないようだ。
「今私が望むのは、家族とよりを戻したいことだけです。お心遣いは嬉しいですが、たとえこの国をもらえるとしても、何の魅力も感じません。」
ヒミコは嬉しそうだ。
「そうか。玉手箱はそなたのような正直者が持つにふさわしいの。引き受けてくれるかの?」
オキタがしぶる。
「私は政治家になるつもりなんかなかったんですがね。仕事もほどほどにしたいんです。たとえ世界を救っても、家庭での失敗は取り戻せませんから。」
その時、女性が声をかけてきた。
「あなた、引き受けたら。」
オキタは心底びっくりした。
「え、よめさん?!なぜここに?」
オキタの妻が笑っている。
「これまで以上に大変な仕事になりそうでしょ。助けがいるんじゃないかしら?ヒミコ様が、わたしの許可がなければこの仕事は頼まないっておっしゃってるわ。」
オキタは申し訳なさそうに話した。
「今までいろいろすまなかったよ。もっと君や子供たちのことを大事にするよ。戻って来てくれないかい?」
オキタの妻はさっと背を向けて去って行き、もう一度振り向いて言った。
「子供たちと家で待ってますから。」
「ありがとう。」
ナツメも嬉しそうだ。
「よかったじゃないか、オキタ。ボクも嬉しいぞ。けど、玉手箱は開けちゃだめだよ。ザ・グレイトフル・デッドだよ。コインチョコより怖いぞ。さて、ボクも順番は変わっちゃったけど、アルファと早く籍入れたいな。ボクの頭の中はそれだけだ。」
アルファが怪訝そうに聞く。
「順番って何?」
ナツメはとぼける。
「え、なんでもない、なんでもない。全くなんでもない。気にしない~、気にしない~、気にしない~。」
アルファがしらける。
「名にそのまぜこぜ歌。ほんとにも~。」
ヒミコは再びナツメに提案する。
「そなたへの贈り物はこれじゃ。小さい葛籠と大きい葛籠、どちらか好きな方を選ぶがよい。」
「なんですか~?今度は雀のお宿ですか~?それ知ってるよ。大きい方はお化けが入ってるんでしょ。」
「どうかの。」
「え?また心理戦ですか。小さい方が正解というセオリーを知っているのを承知で、これを用意したわけ~。」
「一つルールを追加してあげるぞよ。選んだ方ではない葛籠も後で中身を見てよいぞよ。」
「まあ、大きい方はボクがすごく欲しいものにしては小さいんだよな。だから小さい方。」
ナツメは、小さいと言っても本当に小さい。手のひらに載るくらいの小さい葛籠を開けた。
「わあ!こんなアイテムあるんだ。ネコドラくんも真っ青だよ。」
いろはが一番興味を持ったようだ。
「それって何?」
「どんなプラスチックでも、くっつけられる接着剤だよ。しかも強度は完璧。プラモデルって、部品が折れちゃったら、くっつけても強度はないし、おまけにくっつかない素材もあるんだ。子供の頃は何度も泣かされたよ。これは素晴らしい。世紀の大発明品だ。
あれ?まだもう一つ入ってる。何だろ?ありゃ~、ボウリングのピンの形した爪切りだ!よーし、これでアルファの爪切りしてあげようっと。」
「気味悪いこと言うんじゃねえ!」
実はアルファは大きい葛籠が気になって仕方がない。
「ナツメ、大きい方を開けて見てよ。」
「どれどれ。」
大きい方の葛籠にはガンダムの100分の1プラモデルが入っていた。
「よかったあ~!こっちを選んだら、ヘソ出しガンダムをもらうとこだったよ。セーフ、セーフ。ん?ほかにも何かある・・・ぎゃ~!!!」
葛籠の中から出て来たのはメトロイドだった!!メトロイドはナツメに憑りついて精気を吸い取り始めた。
「ふぎゃ~!!!結局グレイトフル・デッドが入ってた~!そうだ、アイスビームだ。って結局氷だよ。でもアイスビームもミサイルもないよ。まるまり爆弾もないよ。スイッチのネット配信メトロイドはGCコントローラーで遊ぶと、セレクトボタンがないからミサイル打てないんだよな~。って意識が遠のいていく~・・・」
いろはが何度目かのヤレヤレを出している。
「仕方ないわね。こういう恰好は好きじゃないのよね。」
いろははゼロスーツサムスのコスプレをしてメトロイドをてなづけてしまった。
「アルファ、ナツメがいやらしいことをしたら、この子使ってね。」
「やったあ!」
「やだー!やっぱり大きい方開けるとろくなことないんだ~。」
ヒミコがみんなに尋ねる。
「どうじゃ、皆の者、何か望みのものはあるかの?」
いろはがなにやら深刻そうな顔をして言った。
「銀河鉄道ターン・トリプル・ナインの切符って手に入りません?」
ナツメが驚く。
「え、あの666の悪魔の汽車のことかい?」
いろはが訂正する。
「トリプル・シックスじゃない。ターン・トリプル・ナインよ。」
「え~?どう見ても666だよ、あれ。何?ターン・エー・ガンダムっぽい名前なわけ?」
「よく見なきゃね。アンダーバーが付いてるでしょ。アンダーバーがある方が下になるの。」
「それに乗りたいってわけ?」
「そう。」
「なんで?」
「旅に出たいの。」
「・・・今旅から帰って来たのに?」
「そうね。」
「じゃあ、ボクも乗りたいのあるよ。ドクター・サンライト・イエロー・オーバー・ドライブっていう黄色い新幹線。略してオーバー・ドライブだよ。走る時、『キュン、キュン、ボアァ、ドバドバドバー』っていうぞ。」
「素直にドクター・イエローって言えよ。」
ヒミコが話をまとめようとしている。
「みんな乗りたい列車があるようじゃの。いろはの乗りたい汽車の切符はわらわが手配してやるぞ。ナツメの乗りたいのはブレイク・ダーク・サンダー・フェノメノンだったな?」
「どうやったらそこまで名前変わるの~?ていうか、そういう列車もあるの?だったらそれもいいな。バルバルバル、ドッギャーンって音するのかな?」
アルファも自分の望みを話した。
「わたしは回転木馬がいい。」
ナツメが不思議がる。
「回転木馬?ずいぶん古風だね。」
アルファが反論する。
「ナツメ、発音が違うぞ。ナツメの発音は『奥歯』と同じ。それ違うよ。この場合は『職場』と同じ発音。要するにシャアが言う時の発音。」
ナツメが目を見開く。
「え、メリーゴーラウンドみたいに回るホワイトベースがあるの?いいね!それ乗りたいね。」
オキタが提案する。
「ヲニ国の東、海の果てのニライ・カナイには、なにやら楽しそうな遊園地があるそうです。そこにアルファさんの言う回転木馬もあるそうです。ナツメ君の乗りたいレッド・ホット・チリ・ペッパーに乗って行けるそうです。」
「なんかいろいろあるね。YEAHって音するんだろうな。それよりボクはまずアルファに乗り・・・いや、何でもない。その遊園地、面白そうだね。みんなで行こうよ。ヒミコ様、ご褒美はニライ・カナイの旅行がいいな!」
ヒミコがほほえんで答える。
「そうか。楽しんで来るといいぞよ。みんなの家族も連れて行くがよい。」
「ヒミコ様、ありがとうございます。」
一行はこれで解散となった。




