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第十二章 チョコのメッセージ

 「アルファのやつ、どこへ行ったんだ?おーい、アルファ、どこにいるんだ~。ラムネ飲みたいんじゃなかったか~。」

 ナツメは大和の艦内を探し回った。

 「こんなとこでかくれんぼやったら面白そうだけど大変だな。メタルギアソリッド大和なんてのが出たりして。アルファは迷子になってんじゃないだろうな。」

 ナツメはアルファを呼びながら、時々ブツブツ言いながら歩いたが、アルファは見つからなかった。甲板は暑いのでクーラーが効いている艦内にいると思うのだが、広過ぎてどうしたものか。

 「ボストトーロに頼んでイヌバス呼んでもらいたいよ。」

 ナツメはアルファといろはが、ボストトーロと一緒に飛んでいった後、マッドウーメンと市女笠になっていた時のことを思い返していた。

 「あれはあれでなかなかかわいかったな・・・。照れくさくてふざけて『紛らわしい』なんてつい言っちゃったけど、素直に『かわいい』とか『美しい』って言えばよかったな。アルファは古いネタでも食いついてくれるし、一緒にいて楽しいな。振られたけど、そんな会話をずっとしていたいな。」

 何やら外が騒がしいので、ナツメは一旦甲板に出た。宇宙空母が大和に横付けになり、空母の甲板では大勢の人が配られたラムネを飲んでいた。隣の戦艦から『ずるいぞ、ずるいぞ』の文句が飛んでいた。しかし、ナツメの目を惹いたのは別の物だった。

 「わあ、すげー!甲板にとんでもないものが置いてある。アルファと一緒に見たいなー。早く探さないと。アルファもこれ見るためにきっと甲板にいるぞ。というか、あっちに行ってるかも。」

 しかし、アルファは甲板に出て来てはおらず、空母にもいないようだった。空母が横付けになったことで、仲間のみんなも見学に行ったが、いろはは大和に残っていた。彼女もアルファの様子がおかしいので探すことにしたのだった。

 「まったく、世話が焼ける。地蔵さんのとこにでも座ってるのかしら?ああ、そうだ、彼女の持ってるタブレットの位置を見ればいいんだわ。」


 アルファは艦橋にいた。そして、戦斗隊長席に座って物思いに沈んでいた。

 「 ムネ喫茶・・・ラムネ喫茶・・・先頭の文字が欠けて・・・」

 アルファは幼な友達とのやり取りを思い出していた。

 『あーちゃん、ぼくたちずーと仲良しだよねー。』

 『うん、定春君もわたしのだーいじなおともだち。』

 アルファは近所の定春君といつも遊んでいた。楽しかった思い出。

 『あ、あのさ、あーちゃん、君、あいうえおチョコレート好きだったよね。ぼく、君にチョコのプレゼントしたいんだ。お手紙も書いたよ。いいかな?・・・』

 『あいうえおチョコ!!!うれしい、うれしい、ありがとう!』

 アルファは早速袋を開けようとするが、定春君があわてて止める。

 『まってまって、うちに帰ってからにしてよ。実はチョコでメッセージ作ったんだ。恥ずかしくて口ではちょっと言えないかなー、なんて。一つだけ小さい字になるからね。読んでみてね。ぼくの将来の夢だよ。』

 そう言って定春君は走って帰っていった。アルファも早くチョコが食べたくて急いで家に帰った。

 『チョコ、チョコっと。』

 アルファは袋に手を入れてチョコを一つつまみ出し、歯で包み紙をくわえて引っぱって開き、そのまま口に放り込んだ。

 『あ、メッセージになってたんだっけ。一つくらいなら大丈夫よね。』

 アルファは袋から手紙を取り出し、残りのチョコも机に置いた。それから座って手紙を読んでみた。

 『あーちゃんへ。いつもあそんでくれてありがとう。あーちゃんといっしょにいると、とてもたのしいです。ぼくにはゆめがあります。おおきくなったらふたりで「○○○○○○○」さだはるより。』

 『わたしも楽しいよ。この最後の〇にチョコを並べるんだね。ひとつだけ小さい字になるって言ってたかな。』

 『こ、し、う、つ、ん、よ、????ん~~。』

 アルファはいろいろ並べてみた。

 『こ、う、し、つ、よ。子牛が強くても意味ないな。まてよ、一つ食べちゃったんだ。もう一つは「す」かな。す、こ、し、う、つ、よ、ん。将来の夢が二人でうつなんておかしいね。小さい字にならないし。小さい字は「つ」しかないよね。食べちゃったのは「ね」かな。ね、こ、よ、う、し、っ、ん、変だね。あ、「ど」かな。てんてんつかないから「と」だけど。こ、し、つ、よ、う、ど、ん。わたし蕎麦派なんだけど。これもちがうな。まって、恥ずかしくて言えないって言ってたね。あれ、もしかして、これ・・・う、ん、こ、し、よ、っ。これー!?』

 次の日、アルファは激怒して定春君を怒鳴りつけた。

 『何あのメッセージ。「何が恥ずかしくて言えない」よ。ほんとに恥ずかしいわ。二度と口きいてやんないから。』

 『ご、ごめん・・・』

 それ以来アルファは定春君と絶交してしまった。そしてあいうえおチョコレートが大嫌いになり、あれから二度と食べていない。


 「・・・あの一つだけ食べちゃったチョコ・・・。きっと・・・」

 アルファは悲しい思いにとらわれていた。ラムネの先頭の文字が欠けているのを見てから、定春君のことが頭に浮かんでいた。

 「定春君にひどいこと言っちゃったな。定春君、あんなこと言うはずないもんね・・・。」

 「こんなところにいたの。」

 いろはがアルファを見つけて声をかけてきた。

 「あいうえおチョコを侮辱したことは赦してあげるわ。あなたらしくもない。何があったの?」

 アルファがか細く聞いてきた。

 「・・・ね、ねえ、あいうえおチョコ持ってる?」

 いろはが怪訝そうに尋ねる。

 「もちろん持ってるわ。プレミアムのですけど。あなた、大嫌いじゃなくて?」

 アルファがうつむきながら話す。

 「そうだったんだけど・・・。もしよかったら、ちょっと分けてくんないかな?」

 いろはがさらに怪訝そうに答える。

 「・・・どういう風の吹き回しか知らないけど、深刻そうね。・・・いいわ。どれだけ欲しいの?」

 「7個欲しいんだ。」

 いろはが答える。

 「ナツメにはそれで通じるの?」

 今度はアルファがびっくりして聞き返す。

 「なんでナツメって・・・?」

 いろはが説明する。

 「全部聞いてたわよ。あなたたちに渡したタブレットはずっと通話中にしておいたの。指示を出しやすいようにね。あなた、ナツメを秒殺したからどうでもいいのかと思ってたけど。なんか落ち込んでるから、関係あるのかなと思ってね。」

 いろははチョコの袋をアルファに渡し、アルファは袋から7個のチョコを選び出した。

 「それじゃあ、わたしは行くわね。」

 いろはは艦橋を出て行った。

 「まったく、世話が焼けるわね。階段の上り下り、大変なんだから。この長い階段何往復させるのよ。ナツメはどこにいるのかしら。メトロイドとか言ってるかしら。」

 いろはは艦橋を出ると、ナツメのタブレットに電話した。


 ナツメはアルファが行きそうだと思った戦闘機の格納庫にいた。そこにはブラックタイガーと書かれた冷凍えびの空き箱がたくさん積んであった。そんなときにいろはから電話がかかって来た。

 「今すぐ艦橋へ急行せよ。」

 「え、なんだって。艦橋へ?とにかく行くか。」

 ナツメは艦橋へ走って行った。

 「やっとついた。は~は~。」

 ナツメは100メートル以上の距離を、階段やらなにやらを通って全力で走って来た。中を覗くと戦斗隊長席にアルファが一人座っていた。彼女はまだ物思いに沈んでいた。

 「あれ、こんなところにいたんだ。」

 「・・・・・・」

 アルファはうつむいたまま返事をしない。

 「どうしたんだよ。っとそうだ、アルファ、空母の甲板見たか。すごいぞ!モビルスーツやらバルキリーやらレギオスまで載ってるんだ。見に行こうぜ!ガンタンクはなかったけどね。」

 ナツメはアルファがここで思い切りつっこんで来ると思ったが、何もリアクションせずうつむいたままで黙っているので拍子抜けしてしまった。

 「何か悩み事かい?」

 そう言ってアルファの隣の航海長席に座る。彼女の前には何か包みが置いてあった。

 ようやくアルファが口を開いた。

 「・・・ねえ、これナツメに渡したいんだけど・・・。」

 アルファが話してくれたので、ナツメは少しほっとした。

 「なんだい?」

 アルファが小さな声で話した。

 「プレゼント。あいうえおチョコが入ってる。」

 ナツメは驚く。

 「え、いいの。嬉しいな。・・・え、今あいうえおチョコって言った?なんで?嫌いじゃなかったっけ?」

 アルファが言葉を濁す。

 「う、うん。そうだったけど・・・。・・・チョコがメッセージになってるの。組み替えて読んでくれないかな。一つ小さい字になるよ。一人で見てね。後で返事ちょうだいね。」

 ナツメが答える。

 「ああ、わかったよ。ありがとう。・・・空母に行かないかい?きっと気に入るよ。」

 アルファはやはり乗り気でない。

 「ううん。今はいい・・・。」

 ナツメはアルファが来ないのでひどく残念だった。一人で行ってもつまらないなと思いながら部屋を出た。みんな自分たちのことを探しているかもしれないと思い、声掛けに行くことにした。

 「ますます暑いな。それにしてもすごい人の数だ。みんなどこにいるかな?」

 ナツメは機関砲の上に登って大和と空母の甲板を見回した。オキタとテルーは空母クルーの制服と違うのですぐわかる。

 「ああ、あそこだ。お~い。」

 ナツメが声をかけて、機関砲から降りてオキタとテルーのところに走っていった。めいめいが尋ねる。

 「アルファは見つかったかい?」

 ナツメは心配そうに答える。

 「ああ、見つかったよ。でもなんか落ち込んでるんだ。この空母や甲板のメカのこと話しても乗って来ないし。」

 テルーが同意する。

 「そりゃ深刻だな。」

 オキタが先刻の出来事を話した。

 「アルファさんがいなくなる前、いろはさんと口論になりそうだったのですが、なぜか急にふさぎ込んで行ってしまったのです。」

 ナツメが聞き返す。

 「何について口論してたんだ?」

 オキタが続ける。

 「わたしが思わずヒエログリフチョコとあいうえおチョコを二流品扱いしたら、烈火のごとく二人は怒ったんです。怒りの矛先は最初はわたしだったんですが。直後に二人でけんかになるところで急にアルファさんがいなくなって・・・。」

 ナツメが疑問を口にする。

 「チョコがらみなのかな・・・彼女があいうえおチョコをくれたんだ。何か関係あるかも。」

 テルーがあわてて口をはさむ。

 「え、もしかしてチョコってその袋に入ってるのか?おいおい、この暑い中溶けちまうぞ。って溶けてるだろ、すでに。」

 ナツメがしまったという顔をした。

 「まずい!いや、味がまずいっていろはに勘違いされなかったか?大丈夫だな、彼女はいない。タブレットも通話中じゃないな。とにかく、大和の艦内に戻るよ。」

 ナツメはあわてて大和に戻っていった。

 「どこで袋を開けようか。う~ん。食堂に行ってみようかな。お腹もすいたから、ついでに何かないか見てみよう。」

 ナツメは食堂に向かった。食堂に着いたとき、オムライスやカレーライスの表示札に気がついた。

 「わ~。みんなで食べに来よう。って自分で作んなきゃなんないか。みんなもしかして、すきっ腹にラムネ飲んでるのかな?そりゃきついな。」

 ナツメは食堂の席に座り机の上にチョコを出してみた。

 「し、しまった~。溶けてる~!!!どうしよう、これ、彼女落ち込んでるってのに、こんなの知ったらとどめ刺しちゃうよ~。いや、刺されちゃうよ~。」

 「何してるの、まったく。」

 いろはがとがめながら食堂に入って来た。

 「あいうえおチョコレートプレミアムに対するひどい侮辱よ。」

 いろははナツメが暑い甲板に行く可能性があると思い、タブレットのGPSで行き先を見ていた。そしてチョコが溶けているだろうと見に来たのだった。

 ナツメが泣きながらいろはに謝り、懇願する。

 「ごめんよ。どうすればいい?これメッセージなんだよ。助けてくれよ。アルファが傷つくと思うと、気が変になりそうだよ。」

 いろはがため息をつきながらチョコの大袋を取り出してきた。

 「これ、あいうえおチョコレートプレミアムよ。彼女はここから七つの大罪、いやチョコを持っていったわ。」

 ナツメがつっこむ。

 「え、七武海がどうかした?」

 いろはがやりとりがめんどくさくなってさっさと話を続ける。

 「プレミアムはひらがなを一文字ずつコンプリートしているの。順番に並べて欠けているのが彼女が持っていったチョコになるわ。」

 ナツメが大喜びしていろはに感謝を述べる。

 「いろはは賢いな。」

 「相変わらずシャアの真似?」

 「いやいや、これは本音。とにかくありがとう。いろはは名探偵だよ。そのスカウター、追跡メガネじゃないの?気配りも抜群だね。君がすごいのは知ってたけど、改めて実感したよ。一緒に並べない?」

 いろはは何か嫌な予感がするので、しばらくナツメの作業を見守ることにした。

 「はいはい。さっさとアルファのメッセージを見つけなさいよ。」

 二人は机の上にチョコを出し、五十音順に揃え始めた。ナツメはいろはと一緒に作業をすることになって、嬉しくてたまらなかった。アルファもいいけどいろはもいいなと勝手なことを考えた。それから、黙って作業をするのがもったいないと思ったので、いろいろ質問してみようと思った。

 「なあ、いろは、好きな人っている?まあ、旅してたから、身近な独身の男はボクとシスコンのテルー以外はいなかったわけだけど。」

 いろははジロリとナツメを見て答える。

 「好きなのは『あなた』だと言ったら?」

 ナツメは腰を抜かすほどびっくりした。

 「え?そ、そうなの?そ、そ、それって・・・」

 いろははまっすぐナツメを見つめている。

 「あなたはどうなの?」

 ナツメはいろはが何を考えているのか汲み取れず、焦り始めた。

 『彼女はボクのことが好き?本当に?なんて返事したらいいんだろう。ボクが好きなのはアルファって答えたらいいんだろうか?でも思いっきり振られたし。なんかいろは優しいから吸い寄せられそうだし、どうしたもんかな・・・。いろはが好きって言ったらどうなるんだろう?二人とも好きとか言ったらだめだよなあ。あ~、こんな悩みって贅沢だな~。ボクは幸せ者だ~。ってアルファはメッセージをくれたんだ。まずはそれだよな~。いろはへの返事はそれから、なんて言ったら軽蔑されるよな~。』

 いろはが厳しく言ってきた。

 「何をニヤニヤしてるのよ。最初に質問してきたのはあなたで、わたしはそれに答えたでしょ。自分で吹っかけてきておいて、どういうつもりなのよ。」

 ナツメはまた悩み始めた。

 『そういえば黄泉平坂でのチョコバトルを思い出すな~。となると、これは心理戦。参ったな~。ボクの名前はデーツだよ。ダービーじゃないよ~。コールって言うの怖いよ~。おまけに溶けたチョコまであるじゃないか。ヒィィィィィィ、コインチョコになりたくないよ~。』

 いろははかなり怒っている。

 「答えろよ、質問はすでに・・・拷問に変わっているんだぜ!」

 ナツメは思わず叫んでしまった。

 「ボクをコインチョコにしないで~!助けて~!でもほっぺたはなめていいよ。」

 いろはは呆れている。

 「何わけのわからないこと言ってるの!困った人ね。会話にならないんだから。もういいわ。とにかくアルファのメッセージを確認してちょうだい。」

 チョコを五十音順に並べたので、欠けている部分を見てみた。いろはがメモ用紙と鉛筆をくれたのでナツメはそこに書き出してみる。

 「『う、け、こ、し、つ、よ、ん』だね。ん~、何かな~?一つ小さい字と言ってたから、それは『つ』か『よ』だよな。・・・・『けんこうよしっ』!これだね!完璧だ!」

 いろはは呆れかえる。

 「あのねえ、ナツメ、彼女これ渡すとき、どんな感じだった?」

 ナツメは思い返してみる。

 「ひどく落ち込んでるみたいだったよ。だからこれでいいんじゃない!」

 いろはは正直放って置こうかと思った。

 『こいつ人生で一番大事な機会を自分で潰してやがる。それとも、振られたのがショック過ぎて壊れてるのか。あ~、こいつを乗せるにはまた何かネタ振らなきゃならないのか~。』

 「貴様、コインチョコになりてえようだな!」

 ナツメは目を剥いた。

 「イヤァァァァァ!なんで?これおかしいの?分かった、分かった、ごめんなさい。」

 ナツメは焦りに焦った。焦ってあろうことかNGワードを作ってしまった。

 「え~と、え~と、よし、これしかない。『うんこしよっけ』これだ!」

 もちろんいろははブチ切れた。

 「たった一つのシンプルな答えだ。てめえは俺を怒らせた!HP1まで削ってやる!!」

 ナツメは椅子を跳ね飛ばして飛び上がり、部屋中を逃げ回る。

 「わ~、ごめんなさい~。うひぃぃぃぃー!え~、何がいけないの~。これって結構嬉しいんだけど。」

 この言葉がいろはの怒りを倍加させた。

 「もしこれが正解なら、二人ともライフゲージを一生赤いままにしてやる。鼻毛抜いただけで死ぬぞ。」

 ナツメは懇願する。

 「ごめんなさいぃ~。赦して~。助けて~。分かんないよ。もう一つ、一番嬉しい言葉が出来るけど、それはあり得ないよ~。」

 いろははその言葉で追いかけるのを止めた。

 「じゃあ、それを書きなさいよ。」

 ナツメはしぶしぶその言葉を書き出していろはに見せた。

 「けっこんしよう」

 いろははその紙を見つめて言った。

 「それを持ってさっさと彼女に会いに行きなさいよ。」

 ナツメはまだぐずっている。

 「あ、あの~、さっき彼女に断られたとこなんだけど。これはやっぱりあり得ないと思うよ。」

 いろはは月並みなことを言いたくないなと思いつつ、結局言うことにした。

 「一度上手く行かなかったから、それで『はい、さようなら』というわけ?彼女は簡単に諦めていいような程度の女性だったのかな?『それでも好き!』って気持ちはあるの?背中を蹴飛ばす必要があるの?」

 気持ちが落ち着いてきたナツメは、いろはに感謝しようと思った。

 「いろはは優しいね。ありがとう。甘えたくなるよ。ゴロゴロしたくなる。でも依存しちゃ駄目だよね。アルファのところへ行ってくるよ。」

 ナツメはそう言うと食堂を出て行った。『けっこんしよう』もしこれが本当なら天にも昇る気持ちなのだが、瞬殺の返事が尾を引いて勇気が出ない。でも行かなきゃと思い、艦橋へ向かった。


 ナツメが悪戦苦闘していたころ、アルファは歎願していた。

 「神様、もし出来るなら、人生やり直させてください。わたしは答えを間違ったけど、ナツメが正解してくれますように。定春君にも謝ります。トイレ掃除もちゃんとしますから。」

 アルファは結局席から動けずにいた。

 期待と不安が入り混じったナツメは、恐る恐る艦橋のドアに近づいた。

 「アルファいるかな~。」

 ナツメはそろ~っと艦橋を覗いた。アルファはじっと座っている。勇気を振り絞って隣に座る。

 「あの~、アルファ、君がくれたメッセージってこれで合ってるかな?もしそうなら、ボクは嬉しくって天にも昇る気持ちだよ。」

 ナツメはこわごわとメッセージを書いた紙をアルファに見せた。アルファはじっと一点を見つめている、と思ったら、彼女は眠っていた。定春君との楽しい日々の夢を見続けていた。

 「ありゃりゃりゃ?!」

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