第九章 大魔王最終決戦
一行は果てしない砂漠を何日も進み続けた。砂の地平線の遠い先に見えていた黒い点が大魔王の城だった。昼の暑さと夜の寒さに耐え、飲み水と食料を切り詰め、ひたすらその点を目指した。近づくにつれ大魔王の城が見えてきたが、蜃気楼のように佇んでいた。
その日の旅路の夕刻近くとなったが、一行は城の前に来た。巨大な城門は開け放たれており、一行を飲み込もうと待ち構えているようであった。中は霧がかかっていてはっきりしない。ナツメがみんなに言う。
「ここが大魔王の城だな。みんな疲れていると思うが、ここで一泊するほどのんきにもしてられない。覚悟はいいな。よしっ、行くぞ!!どこに敵がいるかわからない。気を抜かずに行こう。」
全員が武器を構え、油断なく城門をくぐって入った。周りを見回し、上空に警戒し、はたまた地面からモンスターが湧き出てこないか確かめながら進んでいった。ところが予想に反した中の有様に、みんな驚きの声を上げた。
「あれ、夕方だったのに明るいぞ。しかも緑がいっぱいだ。小鳥も鳴いてるし、いい香りがする。きれいで素敵なところだ・・・・。変だな。敵もいないし、その気配すらなさそうだぞ。」
城の中は緑の園のようだった。平和でのどかな風景が広がっていた。ポカポカ陽気でみんな木陰でのんびりしたくなってきた。
いろはが言う。
「これは幻覚魔法がかけられているのでは?」
ナツメが答える。
「だとすればこのままでは危険だ。いろは、解除できるか?」
オキタが声を上げる。
「ちょっと待ってください。これはチャンスじゃないでしょうか。」
ナツメが聞き返す。
「どういうこと?」
オキタがなにやら取り出した。
「破壊の剣と般若の面です。」
ナツメが問い詰める。
「なんだよそれ、呪いの武具じゃないか。」
オキタは話を続ける。
「そうですよ、破壊の剣は猛烈な攻撃力の代わりに自分の命が削られます。般若の面は、かぶると錯乱して味方に会心の一撃をお見舞いします。」
みんなが叫ぶ。
「みんな死んじまうだろうが!!」
オキタは再び話を続ける。
「いえいえ、よく聞いてください。我々は幻の中にいます。呪いの武具を装備してから幻を解除すれば、攻撃力そのままで普段の武器の効果を使うことができるのです。ナツメ君はこのピコピコハンマーを持ってください。破壊の剣の攻撃力でそのおもちゃの高速攻撃ができますよ。さらに平常心で毎回会心の一撃を出すことができます。」
テルーは疑いと期待の混ざった声で聞く。
「ほんとかよ。だとすれば超スゲーぜ。嘘じゃないだろうな。命かかってんだからな。」
オキタは落ち着き払って言う。
「わたしを信じてください。」
「よし、試してみよう。いろは、やばそうだったら即行呪い解除してくれよな。剣の方は使わなかったらダメージはないからいいとして、危険なのは般若の面だな。まずボクを縛ってから面をかぶらせてくれるかい?」
テルーはオキタから破壊の剣と般若の面を受け取り、ナツメを縛った。
「ナツメ、いいか、・・・よし、縛ったぞ。」
ナツメは破壊の剣を握りしめ、テルーがにナツメに般若の面を着けた。あたりに邪悪な空気が満ちる。ナツメは硬直し、そして錯乱した。テルーが叫ぶ。
「いろは、幻を解除してくれー!!」
「フッフッフッ、ホハハハ、フフフフ、ヘハハハハ、フホホアハハハ。」
「おい、いろは、どうした?」
「フハハ、クックックッ、ヒヒヒヒヒ、ケケケケケ、ノォホホノォホ、ヘラヘラヘラヘラ、アヘアヘアヘアヘ。」
「おい、なんの冗談だ?」
そうこうしているうち、みんなが爆笑し始めた。
「ヒヒヒヒッ、ギャハハハハー!!」
「みんな頭がいかれちまったのか~?」
いろはがテルーに説明する。
「よく見ろよ、あそこ。なんか車みたいのに乗ってこっちに背中向けてるやつがいるわ。たぶん、前方は鏡かスクリーンになっていて、隠れてるつもりなんだわ。ちょっと、そこのあんた、石がいい?オラオラがいい?」
「え!?ばれてる!お助け~!!」
変な車に乗っていた男が逃げると同時に幻は掻き消えた。ナツメはピコピコハンマーを持ち、錯乱も硬直もしていなかった。呪いにはかかっていないようだ。ほどなくして、どこからかあざけるような笑い声とともに、砂の中から巨大な影が現れた。
「ほっほっほっほ。よくここまで来ましたね。愚か者諸君。ふむふむ、煩悩小僧に、腐魔女が二人、ドラゴン引換券にパチモン商人ですか。」
現れたのは大魔王だった。真っ先にテルーがうなる。
「誰がドラゴン引換券だっ。」
大魔王が答える。
「おやおや自覚しておられるようですね、初めの頃はドラゴンハンターなどと大口をたたいていたのに、そのパーティーに加わったとたん、ヘタレになったことを嘆いているのではないですか。」
いろはが口をはさむ。
「まあ、馬車が指定席でしたからね。ドラゴン引換券という表現もありましたか。」
テルーがうめく。
「お前までなんだよ。馬車なんて乗ってなかったじゃないか。」
オキタが大魔王に抗議する。
「パチモン商人とは言いがかりもいいところです。私は正直に商売してますよ。」
大魔王があざ笑う。
「ほっほっほっほっほ。威勢がよろしいようですな。」
ナツメが啖呵を切る。
「大魔王、お前の野望は遂げさせない。」
大魔王が告げる。
「おや、そうですか。締切日が今日の日没までなのに、カウントダウンぎりぎりで我が許に来たのに、なんともおかしい。朔の日になればわが肉体は不死の大樹となり、全人類を肥やしとして栄光の生命体となるのですよ。まず初めに肥やしとなるあなたたちはとても幸運なのですよ。」
ナツメが叫ぶ。
「そんなことさせるものか。みんな、用意はいいか!!」
大魔王がさらに言う。
「皆さんレベルアップしてそこそこ強くなっておられるようですね。HP400前後というところでしょうか。ちなみに私のHPは53万です。」
ナツメが目を見開き、うめく。
「冗談だろ。」
いろはが左目に装着しているスカウターの数字を報告する。
「いえ、私のスカウターにもその通りの数値が出ています。」
ナツメが感心する。
「なんだって、どうやって左目だけでそんな巨大数字を数えてるんだ。ボクなんか指で一、十、百、千、万って数えないと無理だぜ。背後にいるアスワンツェツェバエが見えて、おまけにスケッチまでできるんじゃないか?」
アルファが呆れる。
「どこに感心してるんだよ。」
大魔王が諭すように言う。
「あきらめたほうがよろしいですよ。ついでに言いますと、私は後二度パワーアップします。また、ラスボスにふさわしく、全回復魔法を使いますよ。」
ナツメがわめく。
「ふさわしく全回復ってなんだよ。反則だぜ。ラスボスの回復はふつう薬草程度だろうが。シドーだってリメイク版はベホマ使わねえぞ。」
大魔王が更に諭す。
「私の肥やしとなれば、永遠のまどろみが手に入りますよ。悪い話ではないでしょう。人は惰眠が大好きです。それを提供しようというのです。私のHPをほんの少し削っただけで惨めな思いをしながら痛い目にあって死ぬより、今楽に死ぬ、いや、心地よい眠りにつく方が賢明でしょう。」
ナツメがまた叫ぶ。
「俺たちは決してあきらめない。たとえ結果死ぬとしても、信念を捨てなかった証を立てるんだ。」
大魔王がまた諭す。
「そうそう、それを自己満足というのですよ。我々は全力を尽くした、あきらめなかった、悪に立ち向かったという自己陶酔です。ですが、だれがそれが何になるのです。あなた方が死んだ後、全人類もまた眠りにつくのです。無駄死にというものです。」
ナツメはへこたれない。
「それがなんだ。俺たちは貴様を倒すためにここに来たんだ。貴様のスピーチを聞くためじゃねえし、肥やしになどなるものか。」
大魔王が語気を強めて言う。
「よろしい。ではかかってきなさい。しばらく遊んであげましょう。あなたがたの攻撃では休まず続けて1000ターンが必要でしょうか。こちらが全回復すれば、そのたびに同じ回数が必要となりますがね。それもこちらが全く何もしないという条件付きですがね。」
ナツメはその言葉に耳を貸さず、腰を屈め、戦闘態勢に入る。持っているのがピコピコハンマーなので何ともしまらない。
「ごちゃごちゃと御託を並べやがって、行くぞ!!」
ナツメが大魔王に打ちかかる。オキタの言った通り、ナツメのピコピコハンマーは破壊の剣の攻撃力でさらに会心の一撃を見舞うことができた。
『ピコン!!!』
大魔王はたった一撃ではるかかなたに吹っ飛んで行った。ナツメはそれを追いかけてボコボコとハンマーを振り下ろす。
「コリャスゲー!!夢みたいな強さだぜ。ビルの解体もこれ一本でOKだぜ。土建屋さんが欲しがるぞ。」
いろはが解析して報告する。
「今の攻撃で大魔王へのダメージは1秒ごとに100行ってますよ。」
ナツメが更に気合を入れる。
「よしみんなもかかれ!アルファ、無駄無駄でもボラボラでもアリアリでもいいから見舞ってやれ。いろはもオラオラやってくれ。テルー、君も攻撃しろ。」
アルファはキュベレイを呼び出してオールレンジ攻撃をし始めた。
「このキュベレイ、なめてもらっては困る!」
大魔王は余裕でつぶやく。
「なかなかやるではないか。今ので5000くらいはダメージがあったかのう。」
いろはもまた術式を展開する。
「マジックバリアー展開。」
いろはは自分たちに反射魔法をかけると同時に大魔王にも同じ魔法をかけた。アルファが怒る。
「何してんだおめえは、攻撃がこっちに跳ね返るだろうが。世界中のあいうえおチョコ溶かしてやろうか。」
いろはが解説する。
「バグ攻撃です。魔法が無限反射して敵に大ダメージを与えます。FSC版では修正されているようですが。しかしアルファ、あなた今またあいうえおチョコレートを侮辱しましたね。HP1まで削りますよ。」
テルーはみんなの雄姿に気を取り直し、また引換券と言われたことを思い出し、戦闘に加わろうとした。そこでまたオキタが進言する。
「テルーさん、このビームサーベルを使ってください。」
テルーが筒状のものを手に持ってぼやく。
「おいおい、これ不良品だぜ。ボタン押しても何も起こらないぞ。」
オキタがその棒を確認する。
「そんなことはないはず・・・。テルーさん、バッテリー用の絶縁シートを外してないですよ。ほらっ。」
オキタがシートを引き抜き、スイッチを入れると光の刃が伸び出した。
テルーがそれを呆れながら受け取り、攻撃に参加する。
「これ、最新式の武器だろ。なんでこんなアナログ仕様なの。まあいい、こいつで勝負だ。」
ナツメが歌う。
「デデデン、デデデデン、シュウ!」
「いちいち歌わんでいい!」
テルーの武器は会心の一撃並みのダメージを与えることが出来た。ところが、テルーがやる気全開になったところで突然ビームサーベルの光が消えてしまった。テルーがわめく。
「何これ、消えてしまったぞ。」
オキタが説明する。
「ああ、それ試験用のバッテリーですね。すぐ切れます。実はこれ、専用バッテリーが品切れなんですよね。」
アルファがテルーに向かって叫ぶ。
「まったく使えねえ奴だ。引換券どころか、いかがわしいサイトの請求書以下だな、てめえ。」
テルーが泣きながら言い返す。
「俺が悪いの~?」
ここで大魔王が笑い出し、全回復魔法を唱えた。
「ベホマ!はい。ご苦労様。これでまた53万です。そうそう、これを言うのを忘れていましたよ。皆さん、もし我が仲間となれば、世界の半分をそなたらに授けましょう。」
意外なことに、ここでテルーがこの問いかけに挑戦した。
「大魔王、世界の半分と言ったな。じゃあ、上下に分けることが出来るかよ。」
大魔王が感心する。
「ほほう、レイトン教授から学んだか。いや、テルーの本性が垣間見えたかの。画面が真っ赤になりたくはなさそうですな。」
ナツメがテルーの回答に感心する。
「とんちで大魔王をやり込めるとは、なかなかやるじゃないか。」
いろはがひとりつぶやく。
「このやり取りって、ソラミツヤンマトンボの国の未来にかかわることなのよね・・・テルーって男、危険ね。」
かなり自信を取り戻したテルーはオキタに尋ねる。
「オキタ、他にも何か使えそうなものはないのか?」
するとオキタがテルーに言った。
「テルーさん、ここで使うはポイズンニードルです。」
テルーが聞き返す。
「ああ、あれ?役に立つの?53万だぜ。」
オキタが答える。
「あれは攻撃100回につき1回、敵を一撃で倒すことが出来るギャンブルアイテムです。それ以外は1ダメージですが、100回くらいすぐ突けますよ。」
テルーが答える。
「なるほど、やってやろうじゃねえか。大魔王は俺たちをなめきって攻撃せずにせせら笑ってやがる。今の内だ。」
テルーが大魔王めがけて再び攻撃を仕掛ける。そして手に持ったポイズンニードルでチクチク大魔王を突き始めた。アルファが怒って叫ぶ。
「何やってんだてめえ。大魔王に鍼治療かあ。」
大魔王も大笑いしている。
「うあはっはっはっはっは。こりゃあ傑作だ。53万回突くつもりかな?そなたの寿命の方が先に尽きるんじゃないか?」
まわりで怒声と嘲笑が渦巻く中、出し抜けに「カス―」と音がし、大魔王が突然倒れた。テルーが歓声を上げる。
「やったぞ。ポイズンニードルが決まったぞ。俺はやったぞ。ばんざ~い。」
いろはが言う。
「引換券にしては上出来です。」
テルーが叫ぶ。
「いちいち引換券言うんじゃねえ。」
すぐにいろはが指摘する。
「次の変身が始まります。みなさん攻撃を続けてください。」
そうこうするうち、大魔王は第二形態に変化しつつあった。全員の攻撃は続いているが、大魔王の肉体は攻撃による損壊よりも速く生成している。ナツメが叫ぶ。
「予想通りというか、かなり巨大化したぞ。」
いろはがスカウターの解析を再び報告する。
「今回の変身でHPは95万パワーまで上昇しました。」
みんなが怪訝そうにつぶやく。
「今なんでパワーって言ったんだ?」
さらにナツメがテルーに言う。
「おい、もう一回あの針を刺してくるんだ。」
テルーは自分の両手を見つめてか細く答えた。
「ごめん、ばんざいしてどっかいっちまったみたいだ。」
全員が叫ぶ。
「何やってんだ!!」
しょげるテルーにオキタがここでまた提案する。
「テルーさん、モノマネの実です。大魔王に変身することができます。これは姿だけ変わるものとは違い、ステータスも同じになります。」
テルーがオキタに駆け寄る。
「おお、それって最強ってことじゃねえか。くれ、くれ。」
オキタが取り出した実はメロンくらいの大きさがあった。
テルーが驚く。
「でっけえな。とりあえず食うぜ。・・・うげっ、まずぃー。なんだこれ。」
オキタが続ける。
「テルーさん、全部食べないと変身できません。」
テルーは悲鳴とも絶望ともつかない声を上げた。
「しっ、死ぬ―。」
テルーが吐きそうになりながら食べ続ける。ほかの者たちは攻撃を続けているが、大魔王の変化は止まらない。そうこうするうちに大魔王は変身を完了し、ナツメたちに宣言した。
「さあ、第二ステージです。日没までもう時間がありませんよ。しかも第三ステージが残っています。今度はこっちからも攻撃しますかな。」
大魔王は焼けつく波動を放った。これには特殊効果をすべて消す効果があり、ナツメたちの呪いの攻撃力やいろはの魔法バグも消えた上に指輪もペンダントも破壊されてしまった。ただし、テルーはモノマネの実をぐずぐず食べていたので、この効果を免れることが出来た。大魔王はドラゴンが放つようなプラズマ火球を両手のひらで作り始めた。
「さあ、これは弾けるかな。カウンターマジックはもう展開できまいて。」
大魔王がプラズマ火球を作り終える前に、テルーが必死でモノマネの実を食べ終えた。
「うげげげげ、何とか食べたぞ。よし、大魔王に変身だ。」
テルーが大魔王に姿を変えた。大魔王が初めて驚きの表情を見せる。
「何と、これは面白くなってきましたね。」
テルーが大魔王のプラズマ攻撃が来る前に先に殴り掛かった。
「俺とお前はステータスが全く同じ。だから先に攻撃した方の勝ちだ。そしてこっちには仲間がいる。みんな一斉攻撃だ。」
テルー大魔王プラス仲間たち対大魔王の戦いは激しさを増し、壮絶な殴り合いとなった。大魔王は魔法や火炎などのタメ攻撃と回復を行う隙がないが、相手が大魔王なので容赦なしと、めいめいの武器を持ってルール無用で全面から攻撃する。
いろはがスカウターの数字を確認しながら言う。
「もう少しで大魔王第二形態のパワー切れとなります。第三形態に備えてください。」
ナツメがみんなに気合を入れる。
「物凄い相手だが、ここまでやれたぞ。倒すぜ。」
テルー大魔王は大魔王を抱え上げてジャンプし、フィニッシュホールドの体勢になる。
「テルーバスター!!!」
テルーの必殺技が決まり、大魔王はついにダウンした。
「グオオオオオォォォォォ・・・」
二度目のダウンを喫した大魔王であったが、また肉体が再生し始めた。今回は大きさが変わらない。テルーを中心に倒れた大魔王に攻撃を続けていたが、肉体のダメージよりも変身速度が上回った。
「私を第三形態まで進ませるとは、あっぱれではないか。褒めてつかわす。だが、もはやここまで。スカウターを見てみるがよい。」
いろはがスカウターの数値を報告する。
「大魔王のHPは7000万パワーまで上昇しました。」
テルーが呆れる。
「もはやお笑いの世界だぜ。」
ナツメがまた感心する。
「いろはの左目スゲーな。というより、あのレンズ、ゼロいくつ表示できるんだろう?」
突然倒れたままの大魔王が、テルーをブリッジで跳ね上げて技の宣言をする。
「まずは大魔王リベンジャーだ。」
続いて大魔王は頭突きでテルーをさらに上昇させる。そして、上空でテルーの両手を自身の両手でつかみ、右脚で首をロックする。それから体を背中合わせにして腕で腕を、足で足をロックし、テルーを下にして地面めがけて急降下する。
「喰らえ、7000万パワー大魔王スパーク!!」
「うわ―――!!!」
テルーがロックを解除できず、叫び声を上げて落下していき、大魔王スパークがもろにさく裂してしまった。みんなが叫ぶ。
「テル―――!!」
いろはがスカウターを見て言う。
「テルーのHPが99.99%減少しました。数字上即死ですが、残り100ですので単なるテルーに戻りました。」
みんなが口々に言う。
「もともとがそんなもんかよ。キングオリハルコンスライム倒した意味まったくねえな。」
元に戻ってみんなの所に退散してきたテルーが苦情を言う。
「そんなもんとはひどいじゃないか。活躍したのに。」
すると、突然あたりを引裂くような笑い声が上がった。
「わあっはっはっはっはっ!!!時間切れだ。」
大魔王の体は急速に伸びあがり、巨大樹の姿となっていった。
オキタがはっとしてつぶやき、タブレットを繰る。
「日没、ということは朔の日が始まったということ。つまり一日セールの日。・・・今日は20%引きだ!!。もしかして・・・よ~し、買えるぞ。なんとかゴールド・エクスペリエンス・レクイエム・カードの利用枠内でこれが買える。よし、えーと、配達先変更大魔王の砂漠、瞬時テレポート配達、配達時即使用可能で納品、送料は無料ですね。よし、確定!!みんな、集まってください。すぐに最終兵器が配達されます。」
みんなはオキタの方を見て何事かと思い、集まって来た。するとそばに、閃光と共にとてつもなく巨大な岩の塊が現れた。
「たしかあのとがった岩の上の方に艦橋があります。急いで中に入りましょう。アルファさんもいろはさんも魔法力を」
全員岩肌に削られた階段を上り、岩山に開いた穴に入って行った。中には長い階段があった。
「長ー!ティナー・サックスの幻じゃなくて現実の階段?」
「とにかく登りましょう。」
みんなその階段を走って登り、みんなへとへとになってしまったが、操縦席と思しき部屋に到着した。丸い計器が壁一面に並び、座席が多数配置されていた。
「あ、これ、レイジメーターっていうアニメーター泣かせのデザインだ。」
ナツメは赤い服を着て戦斗隊長席に座り、計器類を確認する。
「アフターバーナー点火、シリンダーへの閉鎖弁オープン、エネルギー充填80%、100%、120%、ターゲット・スコープオープン!!電影クロスゲージ明度20、目標、敵大魔王、距離50メートル。発射十秒前、対ショック対閃光防御、七、六、五、四、三、二、一、波動砲発射!!」
大岩の一辺を突き破ってまぶしい火球が飛び出し、炎の大柱となって大魔王に炸裂する。巨大樹と化していた大魔王は跡形もなく吹き飛んでしまった。
「やったぞ!!世界は永遠のまどろみから救われたー!!」
みんなは歓声を上げた。艦橋内でめいめいが喜び合う。しばらくさわいでいたが、戦いの疲れがひどかった。オキタがみんなをねぎらいながら言う。
「みんな、本当によくやった。でも疲れただろう。まずは休もうではないか。」
それを聞いてナツメとテルーは倒れるように床に寝ころんだ。いろはとアルファは座席をリクライニングして眠ることにした。オキタは艦長席からシートエレベーターで艦長室に昇り、リクライニングシートに横になった。




