09 好み
目覚めたリーサリアさんとフナエさんが抱き合って喜び合う姿、
何だか、歳の離れた親子の感動の再会、みたいですね。
実は幼なじみなのだそうですが。
僕もクロ先生から、ぐりぐりとハグされちゃったり。
でも、クロ先生のハグって、他の女性のとは違いますね。
なんて言いますか、戦友同士の握手、みたいな感じ?
艶っぽいところが無い、カラッとした感じなのです。
「もしかして、かなり失礼なことを考えていないか、サイリ君」
「そりゃあ私にはササエみたいな柔らかハグは無理だけどさ」
いえいえ、美味しいハグ、ごちそうさまでした、クロ先生。
クロ先生とだったら、何度でもハグ出来そうです。
「うん、決めた」
「今後は、サイリ君を赤面させることを目標に、肉体改造に励むとしようか」
「ばいんばいんになったら、イヤってほどハグしてあげるからね」
勘弁してくださいよぅ。
隠し固有スキル書き換えの件は、しっかりとリーサリアさんに伝えました。
戸惑っておられましたが、もし不要でしたらいつでも消去しますと、アフターフォロー済み。
出来ればこのスキルが、リーサリアさんのこれからの人生が良い方向に進む手助けとなりますように。
フナエさんたちから、お祝いのパーティーのお誘いがありましたが、遠慮しちゃいました。
申し訳ないのですが、モノカ邸の一騎当千のお姉さんたちが虎視眈々と僕の隙をうかがう様子は、めっちゃ怖いのです。
猛烈ハグ祭りだけは、本当にご勘弁。
「本当にありがとうございました、サイリさん」
いえ、とんでもないです、リーサリアさん。
それに、この件の一番の功労者は、クロ先生ですよ。
重ねて言いますが、新しいスキルがご迷惑をお掛けするようなら、いつでもご連絡くださいね。
「この御恩は、必ず……」
いえいえ、リーサリアさんがこれからの人生を楽しんでくれることこそが、僕だけじゃなくみんなの幸せになると思うのです。
ぎゅっ
うひゃっ、油断したっ。
素敵なお姉さんになったリーサリアさんからのハグだけは絶対に避けねばと、気を張ってたのにっ。
あったかくやわらかくて、なんか何もかもどうでもよくなっちゃうくらい気持ちよいですよ。
なにこれすごい。
「あー、ついにサイリ君も陥落だよ」
「あればっかりは私たちには真似できないからねえ」
「もしかしてお持ち帰りパターンなのかな」
「本当? クロ先生」
「スーミャはリーサリアお姉さんと一緒に暮らせたらうれしいな」
「けど、もしかしてサイリはうちのみんなじゃ物足りないってことなのかな」
「残念ながら戦力差は歴然なのですよ、スーミャ」
「私たちに出来ることは、サイリ殿の快適な暮らしの環境を整えることのみ」
「つまりは、我が家の戦力豊胸、もとい、補強もやむなし、なのです」
聞こえてますよ、御三方。
何だか好き勝手言ってくれちゃってますが、
大事なのは家主たる僕の気持ちでしょ。
我が家は現在の顔ぶれで充分に満ち足りているのです。
いつも言ってますよね。
普通が一番って。
「つまりは、プリナさんくらいのサイズが好みだと……」
あーもう、いい加減お胸の話題から離れましょうよ、クロ先生。
年頃の女性が公衆の面前でおおっぴらに話していい話題じゃないでしょ、それ。
「サイリさんは博愛主義なのですね」
もうそれで良いですよ、リーサリアさん……




