08 治療
ベッドに眠っている患者さんは、リーサリアさん。
すごく痩せている、年配のご婦人です。
モノカ邸のメイド長フナエさんのご友人、だそうです。
小さい頃から複数の病気に悩まされていて、どんな治療を受けても完治しなかったのだとか。
今もクロ先生が手を尽くしているにも関わらず、です。
「恥ずかしながら原因不明、だ」
「診察すれば、すぐに病名は分かる」
「私の薬で、間違いなく完治させている」
「それなのに、しばらく経つと再発する」
「何度治しても、だ」
「これは病気や呪いではなく、もっとタチの悪い何か、だ」
「すまないが手を貸して欲しい、サイリ君」
……クロ先生の手に負えないほどの厄介な症状、僕なんかが癒せるのかな。
「サイリ……」
スーミャが、手を握って、僕を見つめてきます。
小さい頃から呪いに苦しめられてきたスーミャには、他人ごとじゃないんだね。
正直まだ良く分かっていないことが多くて迂闊に使いたくはない僕の能力だけど、
出来ることがあるかも知れないなら、やってみなきゃ。
「今のリーサリアさんは、複雑に絡み合った複数の病いに苦しめられている状態なんだ」
「サイリ君の『鑑定』は強力過ぎて、今の彼女の病気てんこ盛り状態のステータスからこの件の真の原因を探し出すのは、逆に難しいだろう」
僕には医学的知識も全く無いですし。
「そこで、一度完治させて、余計な情報を削ぎ落とそうと思う」
「彼女の許可を得て、秘薬を使うことにした」
「効果が異常に強すぎて封印していた『エリクサー改』と言う、私の切り札でね」
「それを使った直後の、まっさらな状態の彼女のステータスから、この異常の根本的原因を見つけ出して欲しい」
……分かりました、やってみます。
クロ先生が、水差しで『エリクサー改』をリーサリアさんのお口に含ませました。
効果は劇的、何と、みるみるうちにリーサリアさんが若返っていきます。
あっという間に、きれいなお姉さんに。
「頼む、サイリ君」
それでは、始めましょうか。
『鑑定』!
リーサリアさんのステータス、今は病気など影も形も無い、全くの健康体です。
ただ、年齢の表記が"18/××"となっています。
初めて見る表記ですが、たぶん『エリクサー改』で若返った分の二重表記ではないかと。
それにしても、ステータスの項目が、ものすごく多いですね。
たぶん、人生経験豊富な方だと、こんな感じになるんじゃないかと。
僕なんかのステータスだとペラッペラですし。
それはともかく、より深く探ると……ありましたよ、隠されていた原因が。
『不幸長寿(極み)』:身体上の不幸ごとを招きやすいが、不幸ごとに見舞われるたびにポイントが蓄積され、それが寿命として加算される
何だこりゃ。
呪いじゃなくて、隠し固有スキルとでも言うのかな。
不幸を長続きさせるためだけに長生きさせられるなんて、無駄どころか害悪でしか無いでしょ、これ。
こんなの、とっとと削除しなきゃ。
待てよ、今までこれに苦しめられてきたリーサリアさんには、これまでの不幸ごとが帳消しになるくらいの良いことがあるべきだよね。
ただ、スーミャの時みたいに周りの人がえらい事にならないよう、ちゃんと考えなきゃ。
……決めた、これでどうだ。
『善行貯蓄(極み)』:善行を成すたびにポイントが加算され、蓄積されたポイントを任意で解放すると、加算度合いに応じたレベルの奇跡が起きる(ポイントの蓄積具合は本人のみ確認可能)
『貯運』という固有スキルを参考にしてみました。
カレルさんの蔵書棚に『固有スキル大全』という分厚い本があって、興味深い固有スキルがたくさん載ってたんだけど、覚えていて良かったです。
これならきっと、リーサリアさんだけじゃなくて周りのみんなもハッピーになれるよね。
ついでにもういっちょ、
"10分後に気分スッキリ気持ち良くお目覚め"を付与。
はい、こんな感じでどうでしょう。




