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新居

 出来上がった階級符は銀色に輝いていた。乙階級の証との事。これで不動産の契約も出来る。続いて盗賊団の報奨金と戦利品の売上を精算してもらう。約260万にもなっていた。3,000万の借金は20年ローン、金利を含めると毎月の返済は25万。返せると思って貸してくれたと考える様にしていたが、こんな収入が有れば、何とかなりそうだ。受付嬢は繰上返済を説明してくれて、早速手続きを進めて貰った。元金が減る分、金利も減るのでかなりラクになるそうだ。

「あと、お客様がお待ちなんです。貴賓室です、ご案内しますね。」

少しだけ立派なドアを開けると、先日盗賊団から助けたお嬢とダンディなオジサマ、それと不動産屋さんのお姉さんが待っていた。オジサマは円山組の組長だろう。

「この先で、賭場を開いております、円山と申します。娘が大変お世話になりました、その前に息子もですがね。」

ん?息子?首を傾げると、

「クズボンの父です。イヤ、父でした(・・・)。」

謎の回答でニッコリ笑った。

 勘当にリーチが掛かっていて、俺達に絡んだ時の抜刀事件でロンだったとの事。

「アイツの祖母が、所帯を持った時に暮らす家を建ててたんですが、出来上がる前からに主が居なくなってしまいました、空き家にすると家が傷むって言うから、住んでくれる人を探してましてな。受付嬢に相談したら、貴方達を紹介してくれたんです。」

部屋の見取り図を開いて、見せてくれた。

「折角ですが、そんな豪邸借りる予算ありません。魅力的な事は間違いありませんけど・・・。」

「どの位で?」

「馬車を置けて1万位です。恥ずかしながら、借金が有りまして。」

「では、決まりですな。ここ、丁度1万です!」

不動産屋さんで聴き齧った情報で試算すると、どう見ても50万は軽く超えるだろう。


 早速、契約を交わし新居に向かう。円山父娘と不動産屋さんが案内で付いて来てくれた。馬小屋と馬車の車庫が2台分、広い玄関を過ぎると、ゆったり10人は座れそうなソファーが置いてあるリビング。ダイニングも10人想定かな?キッチンはちょっとしたレストランの厨房の様になっていた。風呂は泊まっていた宿のより広く、5人で入っても余裕だろう。

「他と比べると部屋は控えめですね。」

シングルベッドが2台と小さな机に椅子。クローゼットは造り付けの様だ。同じ部屋が3つあった。不動産屋さんは驚いた様に、

「こちらは使用人の部屋です。皆さんのお部屋は、お二階です!」

と、階段を先導した。

 ゆったりしたベッドに書斎風の机、ソファーにテーブル。収納はやはり作り付けで広さはさっきの倍位で6部屋あるそうだ。幅広でなだらかな階段が二部屋分占めているのがとても贅沢に感じる。個室で使っても余ってしまうし、大体使用人なんて雇うつもりも無いので正直言って広過ぎだ。まぁ、家賃が予算内だし、円山さんが恩返しのつもりらしいので、有り難く住まわせて貰おう。


「空いているもう一部屋にウチの娘は如何かな?5人目として。」

「それってお嬢さんの意志じゃありませんよね?まぁ冗談と言う事にしておきましょうね。」

実は結構本気のつもりだろうが、何とか躱して娘のみどりに振る、

「宮森さん、元気になりましたか?」

「あ、はい、お陰様で!」

「凄く感謝して頂いてますけど、彼が一人で持ち堪えた賜物ですからね、しかも爆弾と呪符で刺し違える覚悟でしたからね。」

「爆弾は私も見ましたけど、呪符って何ですか?」

「命を落とすと即アンデッドになって、少しの間自分の意志で動けるんですよ。命がけで刺し違えて、討ち漏らした分を魂をかけて始末するつもりだったんでしょうね。」

みどりはしばし沈黙の後、

「お父さん、私、宮森が好きなの!ずっと前から。向こうは親分のお嬢としか思っていないみたいだけどね。」

真剣な眼差しで父を捉えた。

「歳も十は違うだろ?」

「16歳違うけど、そんなの関係無いわ、お父さんだって、お兄を勘当して居なくなった跡目に丁度良いでしょ?」

「お前、家業は継がないって言ってなかったっけ?」

「あ、ここでする話でも無いでしょ?」

「ああ、まあな。」

謎の騒ぎは収まり、大家になった父娘と不動産屋さんを見送った。


 家具だけじゃなく、食器や調理器具も揃っていて、早速広いキッチンで料理をと思ったが、食材が一切無かったので、毎晩通っている居酒屋に出掛けた。

「まさか今日決まると思って無かったから、宿の予約そのままだったね、前金は帰って来ないと思うけど、一応断って置いたほうがいいね。

 宿に寄ってから居酒屋、引っ越し祝いで乾杯。ちょっとだけ贅沢をした。気持ち良く酔って新居に帰る。前世では、酔ってしまう様な飲み方は出来なかったのでかなり新鮮な気分だった。


「おや、クズボンをやっつけてくれたヒーロー様だね!」

店仕舞いで幟を片付けていた薬局の老婦人が声を掛けた。軽く会釈して通り過ぎるつもりが、

「ちょっと待っててね!」

手にしていた幟を押し付け店に飛び込んだ。

「奥さんが4人だと必要でしょ?」

そう言って押し付けて来た小瓶のラベルには、『回復剤(ポーション)(夜用)』と記載されていた。断ろうとしたが、冬実があっさりと受け取ってしまった。ちょっと気まずい雰囲気でお礼を言って新居に帰った。


「お風呂お先にどうぞ!」

春菜の勧めで風呂に入ると、直ぐに脱衣場が騒がしくなった。

「「「「入るわよ!」」」」

まぁ、広さで言えば問題無いんだけど、視線のやり場に困ってしまう。

「どうして困った顔してるの?」

返答に戸惑うと、

「誰にするか迷ってる?せっかくお薬貰ったから、今日は皆んなで良いよね?」

冬実が差し出した小瓶を開けて飲み干した。

 身体中にチカラが漲る感じを覚え、目視できる部分は、いつもの臨戦態勢よりも一回りは強化されていた。目の前にいた冬実を抱き寄せ、欲望のまま漲ったチカラを発散した?

 ん?それからの記憶が飛んでいる?窓からは陽が差し、腕の中にはぐったりとした夏果がいて、他の三人も浴槽の縁に掴まったりしてぐったりしていた。

「お薬飲んでからずっと元気なままで・・・」

夏果を壁に寄りかかる様に座らせて、自分自身を確認すると、薬を飲んだ時の状態をキープしていた。効き過ぎだろ?そのままでは不便なので、代わる代わるしゃぶって落ち着かせて貰った。

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