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冒険者デビュー

 山を登り始めてすぐに、受付嬢が『偶々』に含みを持たせていた様に思えていた訳が判った。薬草が自生するのは八合目から上だが、三合目を過ぎた辺りで、魔獣の群れに囲まれていた。

 毒狼の群れだった。通常は『乙の上』階級、群れが大きい場合は甲の階級に限定する依頼らしい。

「護りはお任せしますわ!」

 秋穂は何もつがえていない弓を引くと、通常は、矢があるはずの部分が緑色に輝いた。右手が弦を放すと、緑色の光は無数の輝く矢になり前方の狼を殲滅した。振り向きざまにもう一発。後方も処理完了。道の脇から襲ってくる残党は冬実の張る結界に弾かれ、怯んだ所を春菜の槍と夏果の剣が刈り取って行った。

 15分程戦い、1時間以上掛けて死骸を回収。蚤やダニがいるので、春菜が水魔法で洗ってから駆除確証の尻尾を回収、冬実が掘った穴に放り込み、夏果が焼いてから埋め戻した。

 その後は順調に八合目迄登り、目的の薬草をゲット。無事に下山してギルドに報告。

「はい、薬草に問題ありませんね。この書類を階級符と一緒に、お隣の受付に提出して下さい。」

無愛想なおばさんに一応礼を言ってお隣に移動。

「お帰りなさい!完遂お疲れさまです!」

元気に迎えてくれたのは、昨日のお姉さんだった。

「はい、ポイント登録しましたよ!所で、毒狼の群れに会ったりしませんでしたか?」

「ああ、それなら駆除の報奨金を申請しようと思ってたんです。」

ウエストポーチから、詰め込まれた尻尾でパンパンのクッションみたいになった袋を出すと。

「あら?偶然ですね?『甲の下』からの依頼でしたけど、完遂済みですから、こちらの依頼もポイント登録しておきますね!」

ウインクして見せてくれた依頼書は、今日登った山での毒狼の駆除、依頼の受付は昨日の日付だった。

「累計ポイントは足りないけど、実績で『乙の上』になりますね!飛び級なのでちょっとお時間頂きまして、3日後ですね。乙の階級符が出来ますので、今のと交換しますから手続きに来てくださいね。あっ、午後からが良いです。」

薬草の4,500円と毒狼の54万円を貰って宿に帰った。

 昨日の居酒屋で夕食を済ませ、同じ様に入浴、起きて待っていたのは夏果だった。三つ指の挨拶までは春菜と同じだったが、

「覚悟は良いかしら?」

夏果は俺を押し倒し、足を付けて貰った日のように跨った。が、夏果の中に入る筈の俺は、その途中で暴発してしまった。

「ゴメン、想定外で心の準備が・・・。」

「昨日よりはいいかも?」

「ああ、って言うか、昨日の事も知ってるんだね。」

「そりゃ夫婦ですからね、5人で夫婦。」

不甲斐ない結果で恥ずかしかったが、しばらくスキンシップを楽しんで眠りについた。


 翌日は依頼を請けていなかった。もう少し落ち着いて住める所を探すのと、馬車を手配する計画だった。

 先ずは馬車。ギルドの受付嬢のオススメはレンタルだった。泊まっている宿の近くにも馬車屋があり、1日5千円、1週間で2万、1ヶ月なら6万。お姉さんは1週間が良いと推していたので、その通りに借りる事にした。

 続いて棲家。アパートか小さい家を探そうと不動産屋に相談した。

「申し訳ございませんが、冒険者さんの場合、乙階級にならないと賃貸の契約は出来ないんです。」

丙階級のうちは、稼いだ日は宿、稼げなかった日はテントっていうのが一般的らしい。いつ帰って来なくなるか解らない駆け出し冒険者に信用は無いようだ。新しい階級符が来てからと言う事になり、家賃相場とかをチェックして、買い物をして宿に帰る事にした。

 四人は目覚舎にいた頃と同じ、飾り気の無い黒のワンピースを着ていて、他に着替えは持っていなかった。清楚な感じで悪く無いのだか、あまり活動的じゃ無いのと、ギルドで悪目立ちしているので、新しく洋服を買おうと提案したが、

「稼ぎの見込みと、生活費の予算を把握してからにしましょうね!」

春奈はにこやかにシャットアウトした。

 せめて古着でもと、古着屋の前で再度アピールすると、

「あっ、新しいパーティーの皆さんですね!クズボンを懲らしめてくれた!」

若い店員さんが飛び出て来た。

『クズボン』とは、初日に絡んで来た男の事で、クズのボンボンとの事。街の有力者の跡取りらしいが、家の権力を振りかざし、ろくな事をしないそうだ。迷惑なクズボンをやっつけた俺達は、チョットしたヒーローになっていた。因みにクズボンの階級は『甲の下』で金の階級符、『甲の上』パーティーにルーキーとして加入、1年後に分家、『甲の中』だったが、素行が悪く、今の階級に格下げになったそうだ。

「レディースしかありませんけど、お似合いのお洋服いっぱい有りますよ!うんとオマケするし!試着だけでもいいから見て行って下さい!」

春菜の首が縦に振れて、四人は店に駆け込んだ。

 しばらくすると、キレイに着飾った四人が登場。ちょっと、イヤかなり露出が多いのが気になるが、皆んなとても似合っていた。

「これなら動き易い、ハードな依頼でも大丈夫ね!」

なるべく視界に入らない様にしていた太腿や谷間だったが、接近するとそうも行かない。ズボンの中に違和感を覚えてしまうと、それを確認した四人は、

「「「「これ、お願いします!」」」」

四人が声を揃えてお買い上げ決定。全身揃えても一人千円程だった。

「女のコって、カワイイお洋服思わず買っちゃうんですけど、一般的なプロポーションじゃ着こなせない服だったりすることもあるんですよね。そう言うのがダブついてるんですよ、まだまだ色々有りますから良かったらご贔屓にしてくださいね!」

 また居酒屋に寄って、宿に帰る。お風呂も同じ様に入り、部屋に戻ると秋穂が待っていた。

「古着屋さんであの様子ですと、今夜も期待しない方が良さそうね。」

秋穂は自ら浴衣の帯を解き、布団に引っ張り込んだ。呼吸を妨げる程に舌が絡み、柔らかく滑らかな肌を堪能。反応する部分が秋穂の腿に挟まれると、敢え無く暴発してしまった。

「仕方ありませんね。」

頭から布団に潜ると、魔力注入の時の刺激が全身を駆け巡る。モザイクが掛かって然るべき視界も手伝って、あっという間に臨戦態勢になった。回復魔法では無いので問題無いのだろう。

「あとはお任せしますわ!」

攻守を入れ替えて改めてトライ。2つ目なので、興奮も少し落ち着いているから期待していたが

敢え無くで暴発。

「仕方ありませんね、全く。」

 冷たく言い放ったが腕枕で幸せそうに寝息を立てていた。温もりを十分に堪能したが、秋穂はどうだったんだろう?気にはなったが気にしないようにして眠りについた。

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