孵化
モヤに先導(?)され、ドンドン登る。82、81階層は、サソリっぽい魔物。毒が心配だが、蜥蜴系よりはかなりラクに倒し、安全地帯の80階層に到着。
79階層からは熊系の魔物。魔物は階層か上がるに連れ徐々に弱いモノになり、サクっと70階層。安全地帯でティーブレイク。
69階層に昇るとモヤが赤点滅。群がって来たのは、またまた蜥蜴系。99階層に居たここのダンジョン最強のヤツ。何度も倒しているので、サクサクと片付け魔石を回収。相変わらず、ダメなのが半数程。64階層まで殆ど同じ事を繰り返し、63階層で脇道跡の仕上げヒールは83階層の再現。62、61階層の大蛇を片付けて、60階層でランチ。
食後、テーブルを片付けながら、
「ちょっと試して見たい事があるの。」
春菜はポーチから、拾い集めていた魔石をいくつか取出して地面に並べた。するとちょっと離れていた所で浮いていたモヤがフワフワと魔石の上を漂った。
「やっぱりね!」
魔石は輝きを失っていた。そういえば、モヤの光は初めて見た最下層の時より明るくなった様にも見えた。
モヤは少し速く飛んでから青点滅。『速く来い』って言ってる?まぁ、ついて行くんだけどね。
「次からの9つは、ガイドブック通りの虫系だと思う。蜥蜴系は出ないだろう。」
夏果は、そう言って『読み』の根拠を話した。
浅い階層に現れた深層の魔物は全て、99階層の最強蜥蜴で、ヒールで埋めた通路から脇道で各階層に入り、そこから下の各階層に降りて、安全地帯の上まで占拠していたと想定、50台の階層には脇道が無かったので、従来の魔物がいる筈。
59階層は、夏果の予想通りカマキリで、強力な鎌に苦労したが、動きや守りが大した事ないので、深層で慣れている俺達の敵では無かった。ハチ、ムカデ、ダンゴムシ、蝶かな蛾かな?いろんな虫を退治して50階層。魔石も春菜の予想と実験結果を裏切らなかった。回収せずにいると、モヤが飛び回り魔力のみを回収していた。
50階層は安全地帯で、いままでの場合、休憩が終わるとモヤは一直線に登り口に飛んで青点滅で俺達を急かすが、何も無さそうな所でフワフワ漂っていた。近付くと地面ギリギリに降りて白く輝いた。【鑑定】すると、岩壁の向こうに空洞が見えた。モヤが離れたので、空洞の部分を触ると、ガラガラと崩れて中を見ると、真っ黒な玉が1つ転がっていた。
モヤは玉に近づくと、すぅっと吸い込まれていった。真っ黒な玉の天辺だけ、ベレー帽のように青くなった。
「君、ここに来たかったの?」
冬実が話し掛けると、青い部分の光が増した。
「じゃあ、あたし達、もう行くね。ここまで案内してくれてありがとう!バイバイ!」
今度は赤く点滅した。
「持って行けって事かしら?」
秋穂の問には、青く光ったあと、短く赤く光った。
「何?今の?何か舌打ちされた感じね。」
「『持って行く』では無く『連れて行く』が正解であろう?」
夏果の読みは当たっていたようで、青の輝度がグッと上がっていた。
休憩もそこそこに階層を上がる。49から43階層は予想通り、最強蜥蜴で、上2つは、ガイドブックに載っていた狼系。回収した魔石を玉に近付けると、魔力の吸収し、青い部分が増えてくる。41階層の狼系の魔石を10個位吸わせても青の部分は微増だが、最強蜥蜴のは1個でジワリと増えた感じがわかった。40階層で休憩中に春菜は、
「今迄の魔石吸わせて見ましょうか?」
回収した魔石をポーチから出して山を作って頂上に玉を置いた。魔石と接触した下の部分から青くなって行って、地球儀で言うと、北回帰線付近が黒い帯になった青い玉になった。
30台の階層は狐な狸でサクサク退治。魔石の魔力を玉に吸わせるがほぼ変化なし。魔石の方はしっかり輝きを失うので、吸っているけど、微量なので変化が目に見えないのだろう。
30階層には、逃げ込んだ冒険者が7人、29階層の蜥蜴系に敵わないと判断して救出を待っていた。
「下から来るとは思いませんでした。」
経験豊富そうなベテランさんか仕切っていた。色々聞いてみたら、たぶんこの人が居なかったら既に全滅していたと、思われる。保存食を充分持っていたのと、安全地帯の階層には食べられる実や野草が有るので、特に衰弱した様子では無かったので、直ぐに昇ることにした。
「次は最強蜥蜴だから、気を付けて!」
29から27階層で最強蜥蜴を倒しほぼ青い玉に魔力を吸わせた。ほぼ青い玉は、青い玉に変わり、激しく輝くと、白い玉になった。玉と言うより卵だろう。そう思うと、割らないようにと急に緊張して来た。26階層から上の邪人は避難していた人達も余裕で戦えるので一気に駆け上がった。20階層で夕食、温かい食べ物は久し振りだと、泣きながら食べている人もいた。
「腹ごなしに一気に昇っちゃう?」
「そうね、この上も邪人よね?」
妻達はもちろん、避難していた人達も頷き、強行案が通った。卵は籠にタオルを敷いて、安全に運ぶ事にした。
10階層まで駆け抜けると、安全地帯で見回りの冒険者達に会った。そこから上の魔物は微々たるモノなのでスルーして地上に到達した。
ギルドの手続きはさっさと済まして、面倒な報告は、救出したリーダーさんに任せた。キャンプ場でテント泊。流石にダンジョン内ではリラックスしきれないので、思い切り気を緩める。風呂には入れないが、浄化魔法でサッパリして、寝袋ではなく、布団に寝転んだ。スキンシップのリクエストの意味を理解してくれたので、妻達に魔法を掛けて、1ラウンドずつ揺れあうつもりだったが、第4ラウンドの冬実が終わっと頃にはすっかり朝になっていたので、引き続き、朝のおかわりを楽しんで、計8ラウンド。キャンプ場を出ようとすると、昨日のリーダーさんが、
「私の両親と妻の両親が冒険者で、4人でパーティーを組んでいたんです、引退の時に貰った御守なんですが、お礼に受け取って頂けませんか?」
「そんな大切な物、頂けませんよ!ギルドの報酬がちゃんと出ますから気にしないで下さい。」
「いえ、命の恩人に何もしないと、その4人に、こっ酷く叱られますから是非!」
ちょっと折れそうも無い人なのでお守りを受け取った。
ようやく解放され、近くの宿に部屋をとって、昼から爆睡した。
翌朝、何かに頭を突かれて目を覚ます。枕元に置いてあった玉の籠がひっくり返っていて殻が散乱していた。割れたのかな?孵ったのかな。蜥蜴が最強のダンジョンだったから蜥蜴かな?見回してもそれらしい生き物は見当たらなかった。ダンジョンの魔物は基本的にそのダンジョンの中でしか生きられないので、持ち出した時点で死んでしまったのかも知れない。敢えて何の卵か鑑定していなかったので、それ程愛着も無い、まぁ気にしないでおこう。二度寝を選択して布団に潜ると、柔らかい何かが入っていた。
掛け布団を剥ぐと、赤ちゃんがスヤスヤ。全裸だったので、小さくなったときのひかりのシャツを着せて、ついでに女の子である事も確認した。【鑑定】すると・・・、
「えっ!いつの間に産んだの?」
隣で目を覚ました春菜が驚いていた。皆んなも起きて、赤ちゃんを覗き込んだ。視線を感じたのか、赤ちゃんはグズり、 春菜があやしたがギャン泣きで、俺が代わると、大人しくなって乳首に吸い付いていた。古文書で読んで、まだ試していなかった授乳の魔法を掛けると、上手くいったようで、赤ちゃんはご機嫌で乳を吸っていた。満腹になったのか、また眠ったので布団に戻す・・・、戻そうとすると泣き出し、そのまま抱き続ける事になった。
オムツの代用品をなんとかして、ベビー服が手に入りそうな根路の街を目指して早々に宿を発った。




