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卒業

 校長室っぽい所に行って、ここで学んだ事を報告、書類を確かめる先生は、いちいち驚いていた。

 今後必要な武器や防具、その他の魔具を渡され、その説明を聞いた。至れり尽くせりって感じのラインナップ、特に驚いていたのは、魔力に応じて収納力が変わるウエストポーチ。相当なモノが入りそうだった。世話になった四人が見送ってくれると思っていたが、部屋を出た廊下でお別れを済ませていた。ちょっといや、かなり寂しい。

「では次の質問です。貴方の場合、戌の29号、36号、47号、55号を連れて行けますが如何します?」

想定しない質問が事務員っぽいお姉さんから飛び出た。

「・・・・・・。」

ポカン?

「ここは一夫多妻制なので、四人とも大丈夫です。」

更に答えられずにいると、

「ここにいる間、『夫婦相当の関係』があった者を連れて行く事が出来るの、どうする?」


校長先生風の年配の女性が付け足した。

「えっ?そんな事、何も教えてくれませんでしたよ。」

「教えてはいけない事になってますからね。コッソリ教えちゃってる人もいるようですけど。」

「では、四人ともお願いします。」

1人選ぶなんて出来ないな。ただ優柔不断で四人と回答した。

「おお、そうしてくれるか!準備に3時間程掛かる、その間に名前を考えておきなさい。」


 命名のセンスなんて俺にある訳無い。無い知恵を絞って考えた。29号:春菜(はるな)、36号:夏果(なつか)、47号:秋穂(あきほ)、55号:冬実(ふゆみ)

3時間ギリギリで四人分の名前が決定した。気に入って貰えるだろうか?3時間を少し過ぎ、事務のお姉さんが、また何かの書類と、高級感のある細長い小箱を持って現れた。小箱の中身は、三連のネックレスだった。

「一本で魔力が10分の1になります、この状態で千分の1ですから、今の鎖と取替えて下さい。魔力の制御に慣れてきたら一本ずつ外して調整して下さいね。」

なんて親切なんだろうと思ったが、一緒に持って来た書類は請求書と借金の契約書だった。莫大な治療費、滞在費、授業料、貰ったのかと思った武器等々、更には照明魔道具の修理費まで、請求額の合計が7,646万2,856円15銭で、控除額が退職金1,100万✕4人分、値引き2,856円15銭。差引き3,246万円請求だった。因みに俺は一銭も持っていない。四人の身請け金なんかも入っているのかと気になったが、それは無かった。丸々借金になり、書類を見せられ、返済方法等の説明を受けていると、

「ちょっと待って下さい!」

若い女性の声が、契約の作業を遮った。

「手持ちで元金を減らしておきましょう!」

四人の美女、いや美少女と言ったほうが適切だろうか?兎に角美しい四人が押しかけ、テーブルに金貨を積んだ。呆気にとられていると、

「お嫁さんにしてくれるのよね?名前は決めてくれた?」

よく見ると、29号?イヤ、春菜の面影がある、娘じゃないな、孫娘って感じで、他の三人もそんな感じだった。

「本来の姿に戻れたの!おばあちゃんより嬉しいでしょ?」

確かに嬉しいけど、どんなカラクリなんだ?事態を把握出来ないまま固まっていると、四人の蓄えから当面の軍資金を残し240万を返済に充て、6万値切って、借金を3,000万にして貰っていた。

 先ずは、皆んなの名前を告げた。それぞれ転生して来た季節を取り、これから喰うに困らないよう、食べ物の漢字を添えた。春菜(はるな)夏果(なつか)秋穂(あきほ)冬実(ふゆみ)あまり自信が無かったので恐る恐る話したが、皆んな気に入ってくれた様で一安心。

 それぞれ、魔法適正があり四人とも3系統使え、春菜が水、夏果が火、秋穂が風、冬実が土、光と闇は四人に適正があるそうだ。転生から11年間も修行して来たので、かなり高度な魔法も扱えるし、剣術、格闘などなど、弱肉強食のこの世界に適応するスキルもしっかり身に付けているそうだ。

 特にやりたい仕事も無かったので、前世の職業にやや近い冒険者をして見ようと思っていた。騎士や衛兵なんかも勧められたが、警察官で嫌な経験をしているので、民間の方が気楽に思えての選択だったが、四人の魔力と戦闘スキルが有れば良いパーティーになりそうに思えた。

 手続きを済ませ、乗り合いの馬車を待つ間、食堂でランチ。

「付いて来てくれて有難う。退職金は自動的に、俺の借金に充てられちゃったし、かなり減らしてくれて、本当に良かったのか?」

「うん、でも、連れて来てくれて有難うのほうが強いわよ!」

向かいに座った夏果が、俺の手をグッと引き寄せた。隣の秋穂は組んでいた手を払われた形になり、少し不機嫌。それでも解説してくれる。

「あそこに居られる期間って決まってるの、記憶のある人は3年、無い人は12年ね。55号じゃ無い、冬実ね、冬実みたいに12月に転生して来ると、すぐに年が変わるから11年とちょっとしか居られないのよね。」

「じゃあ、結婚しなくても出られたんだよね?」

「ううん、消えるの。」

ん?秋穂は続けて、

「誰かの妻として出るしか道は無いのよ。12回目の元旦を迎えるか、結婚の条件を満たす男性に拒否された時点で、消えて無くなるのよ。殆どが1、2年で出て行っちゃうんだけどね。」

「結婚の条件ってやっぱり・・・」

《聞いてよかったのかな?》

「あの夜、私達皆んな、初めてだったの判ってたよね?」

《やっぱり?》

「オブラートに包んで『夫婦相当の関係』って言ってたでしょ?要は、シたかどうかって事ね!」

夏果の説明でスッキリ。

誰かを選んでいたら、他の三人を消してしまう所だった。

「あと、どうしておばあさんの姿だったの?」

今度は春菜が、

「高い階級の魔法を使うと、副作用で齢を取るのよ、容姿だけね。光くん、脳とアソコ以外全部ダメだったからね!手脚は無くって、内臓は腐ってて、皮膚は焼け焦げていたわ!骨折していない骨の方が少なかっなんじゃないかしら?」

奇跡クラスの魔法で、30歳分。その他魔法の強さは消費する若さに比例していて、全員が70歳分を消費して俺を治したそうだ。実年齢が16歳なので、86歳の高齢女性を嫁にするつもりでいた事になるのか。改めて考えると、かなりの物好きかも知れないが、本人達には黙っておこう。因みに、めでたく娶られた場合は元の姿に戻る。

 その他、規則で話せなかった事を教えてくれた。普通はハタチ前位で転生し、すぐにパートナーを見つけて出て行くそうだが、四人は(推定)5歳で転生、結婚の条件を満たすチャンスが無いまま、ただ消えない為だけにカラダを使う事に嫌悪を感じるようになったそうだ。あと半年で消えてしまうので、最後本当に生かしたい人に賭けて見たと言う事だった。前世の評価が高かった俺を選んだそうだが、評価の基準ってなんなんだ?あまり、イヤ全然プラス査定が思い浮かばない。まあ、五体満足でしかも若返って、キレイな嫁達に囲まれるのだから、結果オーライと言う事にしておこう。


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