回復
一週間程経過した、
「目を治せる様になったけどどうします?」
「えっ?治さないって選択肢アリ?」
「私達がおばあちゃんでガッカリするかと思ってね。」
声を聞いたり、手の感触からそれなりの年齢だろう。自分達でも話したの忘れてるのかな?楽しそうな声の29号が、
「フフフ、冗談よ。貴方のカラダがもう少し治ってからの方が良いかと思ってね、かなり傷んでいるからガッカリしないでね、少し時間が掛かるかと思うけど、しっかり治すから!」
目隠しをする様に手の平で目を覆われた。今迄同様、温かい感覚が続いて、手が離れた。治った?目を見開いたはずだか、闇のままだった。
「慌てちゃダメよ!」
49号の声の後、額に軽い刺激。デコピンだろう。
耳かきの様な感覚で目を?眼球を掻き出す様にゴリゴリと、感じたことの無い感覚が続いた。痛くは無いが、まさかの感覚だった。
「こっちは準備オーケーよ!」
55号の声と共にカチャリ、ガラスの音がした。瞼を開かれ、ヌルリと何かが入った感触。再び手の平で目隠し。温かくなったと思うと、手の平の隙間から、薄っすら明るさが漏れているのが判った。
手の平を外されると、薄暗い部屋にいる事が判り、4人のおばあさんが心配そうに覗き込んでいた。
「見える!ちゃんと見えてる!」
「美少女が4人見えてるかしら?」
「・・・は、はい。」
4人はお互いに視線を絡めて笑い合った。
「大丈夫な様ね、『・・・』が入っていたものね!あとは、落ち着いて見てね!」
『美少女』は冗談として、高齢だが整った顔立ちなので若かりし頃は、本当に美少女だったと推察できる。
ん?さっき迄の和やかな雰囲気が一変した。視線を落とし、自分のカラダを確かめる。両腕は二の腕の途中迄しか無かった。足で膨らんでいる筈の掛け布団は、膝辺り迄しか無さそうだ。
「もう少し掛かるけど、心配要らないわよ。」
大きな水槽が乗ったワゴンを運んで来た。少し白濁し、時々ブクブクと泡が立っていた。ゆらゆらと漂う何かをよく見ると、人間の手足?この流れだと俺の手足だろう。
「あと2、3週ってとこね!」
結局、食べさせて貰い、着替えもオマルも尿瓶も頼っている。目が見える様になったら自分の身の回りの事は自分で出来るのかと思っていたが、暫くは世話にならなければならない。
夜になって灯りが消された。電気でもランプでも無い不思議な灯りは、魔力で光っているそうだ。暗さに慣れて来るとベッドの横には29号がいて、毎晩の快樂を再現してくれた。
「生命維持の為にね、効率良く魔力を吹き込む手段なの、自身の治癒能力を高める効果もあるのよ。ちょっと恥ずかしかったから、説明しなくてゴメンね。」
「毎晩してくれていたの?」
「ううん、4日に一度だけよ。わたしはね。」
2週間後、例の水槽が運び込まれた。
「じゃあ、うつ伏せになってくれる?」
ベッドで起き上がったり、寝そべったりは自力で出来るようになっていた。反動を着けてひっくり返り枕に顔を埋める。
無いはずの爪先が痺れる感じがずっと続いていたが、左の爪先に温かさを感じた。一瞬目の前が真っ暗になり、寒いのか暑いのか微妙な感覚から、徐々に元に戻った。
「目眩は治った?」
繋がった足に一気に血液が流れるので、脳の血液が不足し立ち眩みと同じ様な状態になるらしい。解っているなら先に言ってくれても良さそうだが、
「ああ、平気です。」
55号は嬉しそうに、
「じゃあ、右も付けるね!」
さっきより軽い目眩の後、両足の感覚を確かめた。指や足首を動かして見ると、何も違和感が無い。古傷のうずきも無いし、無数にあった傷跡も消えていた。寝返りも容易になり、仰向けになって腹筋で上体を起こした。
これからリハビリかと思ったが、魔法とは都合の良い物で、直ぐに立ち上がり、歩く事も出来た。軽くストレッチをして、踏み締める感覚を確かめて、意識を取り戻して以来、ずっと行きたかった所に向かった。余りの嬉しさに、手が無いことを失念していた。トイレの扉を開けられ無い。
「困るのは、扉だけじゃ無いでしょ?」
47号は扉を開け、一緒に入って来た。確かに一人ではどうしようも無いし、尿瓶ではお世話になっていたので、気にしない様にしたが、排尿を手伝って貰うと、違う目的の時の反応をしてしまった。
「あら、こんな婆さんでも?元気なのね!」
ベッドに戻ると、
「47号が一番くじ?残念だ。でも最後も悪く無いかも?」
36号が、しょんぼりした顔で、横になるのを手伝ってくれた。毛布を掛けてくれるシチュエーションの筈だが、寝間着の帯が解かれた。
「では、私から!」
47号は、ふくらはぎ迄のスカートをたくし上げると、その中のものを脱いで俺に跨がった。なかなか上手く行かないようだったが、さっき反応したままだった俺が、47号の中に入って行った。体験した事の無い快感を味わうが、ほぼ同時に彼女の中の俺が爆発してしまった。若い頃こっそりビデオで観たような盛り上がり等はなく、艶っぽい声が漏れるような事も無かった。彼女は降りて、血が付いた俺の下腹部を浄化魔法で洗い、回復魔法で臨戦態勢にした。55号、29号、36号と同じことを繰り返した。
前世では、女性とお付き合いなんて経験は無く、フーゾクに通うことも無かった。一応は婚約者になった相手もいたが、交際が始まった頃に拉致されそのまま帰らぬ人になってしまったので、五十年以上も生きて、初めての体験だった。
その後、四人は何事も無かったように振る舞う。コッチの世界ではこう言うのがスタンダードなのだろうか?聞くに聞けず、平静を装った。食事や着替えの世話、ちょっとトラブった排尿のサポートも、すんなりして貰える様になった(と言うか俺がおかしな反応をしなくなった)。排便の後始末を頼むのが嫌で、魔法を使って処理して貰らっている。この世界の事を教えて貰ったり、魔法について学んだりして過ごした。
一週間が過ぎ、また水槽が登場した。55号は、水槽から腕を取り出し
「仰向けで横になってね、左手から行くわよ!」
指先の痺れが温かさに変わった。足を付けた時のような脳貧血も、極々軽い感じだった。
「それなら、右手も付けちゃいましょうね!」
復活した両手を動かして見る。チカラ加減が微妙だがちゃんと動く。足もそうだったが、古傷は無くなっていて、気のせいか少し華奢になっているように思えた。
「やっぱり、あそこ?」
47号がニッコリ笑い、
「ん、ああ、行ってくる。」
トイレに行って、自力での排尿を堪能した。