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猫の手貸します

 猫としての暮らしがしばらく続いた。幸い、発情期じゃ無かったので、オス猫に絡まれたりすることは無かった。因みに、猫でいるうちは『ひかり』と呼ばれている。『()樹』の『光』から女性の名前を付けて貰った。

 魔獣駆除の依頼を請けて、大きくなって戦ってみたり、爪に魔力を纏わせてみたりしながら、魔力のコントロールと、変身のコツを学習した。相変わらず、お喋りは出来ないが、ディアンは会話の精度が少しずつ上がっている。例の薬の効果は勿論だろうが、お喋りが楽しくて仕方がないように見える。前世の英会話教室のキャッチフレーズを思い出し、ディアンの成長を喜んだ。

 

「四元さん、是非とも請けて頂きたい依頼があるんです。正規の依頼ではないのですが・・・。」

いつもの受付嬢がヒソヒソ話。彼女以外には、変身の事は隠している。

 依頼は、最近急増している、泥棒の調査だった。何かのスキルで身を隠し、何かのスキルで持出しているようで、証拠が一切無い。唯一疑いが掛かっているのは、『便利屋三兄弟』だけ。しかも疑いの理由は、彼らがこの街に来て、便利屋を開業した時期と、被害が出だした時期が重なる事だけなので、とんだ言いがかりとも思える。それで、まともに動く事も出来ないので、猫を頼る事になった様だ。こう言うケースも『猫の手も借りたい』って言うのかな?

 快く請けて、便利屋を調査。店舗と言うか受付に使っている広めの玄関には怪しい所は無かったが、居住スペースはガッチリ結界が張られていた。夜中、コッソリ覗きに行った。表の顔の便利屋は、毎日昼間働いているので、夜中は普通に眠っていた。犯人なら稼ぎ時の筈、シロなのか?

 破視を使って三兄弟を調べてみる、見掛けで長男から順に【影使】、【影縫】、【影潜】のスキルを持っていて、詳細を覗くと、

 【影使】自分の影を分身として使う事が出来る。

 【影縫】影を抑える事に寄って、対象者を拘束する事が出来る。

 【影潜】影に潜って人目に付かずに移動する事が出来る。

 更に結界に包まれた大きな箱には、質素な建物に不相応な、高価な貴金属類がギッシリ詰まっていた。お駄賃に毛が生えた程度の便利屋の報酬を考えると、間違いなくクロだろう。【影潜】は、持ち物も一緒に潜る事が出来るので、影に潜って建物に侵入、お宝を手にまた影に潜って退去。泥棒にうってつけのスキルだ。

 爪を赤く光らせて結界を引っ掻くとすんなり通過。【影潜】を奪ってそのスキルで脱出。全く気付かれずに済んだので、三男(推定)がスキルを発動しようとする時まで、何か有ったかも解らないだろう。


 翌週、日曜の夕方、特殊な薬品を専門に扱う薬局の前に、便利屋の三男がいた。薬局は定休日。夕方を選んだのは影が長く伸びるからだろう。沈まない地面に焦っているようだ。

 少し離れて様子を見ていた兄達に近寄り何かを話している、三人が頷き合うと、長男が店の前に立ち、自分の影をショウウインドウ越しに店の中に落とした。程なく中から扉が開き、三人は薬局の中に消えて行った。

 この薬局がターゲットなのは、便利屋にガセネタで、超レアな薬草が入荷していて、他の薬草が揃うまで、保管している事になっている。ギルドから衛兵にも情報が伝わっているので、既にマーク済み。薬局は、改装予定で中はほぼ空っぽで、裏口には罠。三人に続いて、待機していた衛兵が踏み込むと、裏口から逃げようとした三男が罠に掛り、【影使】で抵抗し、【影縫】で衛兵を拘束した二人は正面から逃げ出した。

 次男の影に潜って、苦労要らずの追跡をする。流石に便利屋には戻らず、市街地を抜け、山道を登って山小屋に逃げ込んだ。

「アイツ、【影潜】出来て無かったんじゃねえか?」

「ああ、確かに!俺達のスキルは大丈夫だよな?取り敢えず、助け出す作戦を考えようぜ。」

二人が考え込んだ所で影から出て、次男から【影縫】を奪った。早速、二人の影を縫ってみると、完璧に拘束出来て、念話が届く距離で付いて来ているディアンにメッセージを送り、衛兵を呼んで貰った。無事引き渡して一件落着。


 正式な依頼では無かったので、通常の報酬は無いが、1週間ギルドで拘留し、【影使】も奪えるようにして貰うのが報酬代わりと言う事になっている。まぁ、欲しい順に奪ったので、1つ目で充分満足なんだけど、受付嬢がそれでは申し訳無いとの配慮だった。


「今度のスキルで、今のお姿でしたら、こちらなんて如何でしょう?」

人を化かす、狐狸の類の駆除の依頼を請けた。人命に関わるような大きな被害は無いが、食料庫を荒らるような事が日常茶飯事で、駆除に向かう冒険者は化かされてしまって、上手くいかないらしい。


 自宅に帰り、ほぼ伯爵邸専属護衛になっている四人に、便利屋の始末ができた事と、狐狸討伐の依頼を請けて来た事を伝えると、春奈は嬉しそうに、

「もしかして【変身】のスキルがレベルアップしたら、元に戻れるかもしれないわね!」

ジャンプして同意をアピールすると、

「もふもふも悪く無い。元に戻っても偶には、もふもふを強請っても良いか?」

軽く赤面して、視線を泳がせた夏果に、軽く頷いた。

「また猫になるにしても、今度はオス猫が良いわ!」

冬実に抱きしめられ、ボディーランゲージが出来ずにいると、

「それでは、ディアンの貞操が心配ですわ!」

秋穂の毒舌に、実際に尻尾を巻いてみせた。意図が伝わったようで、四人は大笑いしていた。


 狐狸討伐の日、四人はいつもの様に伯爵で護衛、ディアンと二匹で荷馬車に便乗する。狐狸出没地帯で飛び降り、影に潜んで情報収集。狐風の魔物がボスらしく、狐か狸かは曖昧な魔物達が数頭が幹部的な役割で数十頭の群れを構成している。元々は群れるタイプでは無く、被害も軽微なので、山林資源の乱獲防止や、強い魔物に遭わなくて済むセンサーになるので、駆除の対象にはなっていなかった。偶々?知恵を付けた、このボスが群れを形成し、人里に害をもたらす様になったらしい。


 ボスのスキルが原因と睨み【鑑定】したが、スキルらしいモノは無く、レベルも他の幹部よりかなり低かった。【変身】に付いては、最底辺の下っ端もそのチカラを持っていた。取り敢えず、ボスと幹部を斬り、子分達を散らした。元々の依頼が『ボスを倒し、群れを解散させる』という内容だったので、ミッションクリア。

 ボスが持っていたと思われるスキルは【偽装】で、【鑑定】を撹乱させていたようだ。それぞれの【変身】能力は、持っていたスキルのレベルアップに繋がっているようだ。駆除確証の尻尾を回収して、残りは穴を掘って埋めてギルドに向かった。


 猫が報奨金を受け取るのもおかしいので、尻尾を提出するだけで帰宅。

「それ、確証を届けるだけでも、十分に怪しい猫よね!」

春菜のツッコミに、

「お喋りする猫よりマシよ!」

ディアンが涼しい顔で答えていた。

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