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隷属

 早速フルハウスを試す。一人ずつの場合だと秋穂の番なので、秋穂と、冬実が俺の部屋に泊まる。ここに越してから始めて自室で眠る事になった。

 五人の時は回復剤(夜用)(ドーピング)で意識を飛ばしていたので、複数を相手にするのは実質初めてだ。まぁなるようにしかならない、細かい事は考えずに楽しむ事にしよう。

 二人はじゃれ合って、冬実が風呂場のリベンジと言うか、攻守交代して楽しんでいた。どう参加して良いのか解らず様子を見ていると、

「そうやって観ているのがお好きなの?どうぞお好きになさって下さいな!」

返答に詰まっていると、

「ふふふ、冗談よ!」

グイッとベッドに引き摺り込まれた。何とか対応しようと思うが、思いっ切り空回り。代わる代わるスキンシップを楽しんだが、どうも落ち着か無かった。一人を相手にしても上手く行かないのに、二人相手でどうにかなるとは思えなかった。ただ、二人はそれなりに楽しめたようなので、偶になら付き合っても良いかな?目覚めた時に柔らかな圧力に挟まれていたのは良かったかな?


 日曜日は全くのオフ。前世では趣味らしいモノは何一つ持っていなかったので、急に時間が出来ても何をして良いのか解らない。出版の文化があまり発達していないようで、本や雑誌で暇をつぶす事も出来ない。取り敢えず火曜から遠征に出るダンジョン迄の地図やダンジョンのガイドで予習をして過ごしていた。


「ちょっと手伝って!」

窓から春菜の声がした。荷馬車に荷物と一緒に春菜と夏果が乗っていた。積まれているのは、何かの苗?野菜かな?趣味と実益を兼ねた家庭菜園を始める様だ。スペースは十分に有るので、裏庭を開拓して野菜畑にした。通りに面した表の庭は花を植える事にしたが、花屋は日曜が休日なので、植えるスペースを耕しておいた。結構な労働であっという間に暗くなっていた。 

 

「今日はいっぱい働いたから、夜は外食にしようよ!」

冬実は、出掛ける気満々。比較的高値感のある野菜を作ると言う『実益』の部分を考えると、経済的には本末転倒だが、気持ちよく身体を動かせたので、それも良いのかな?冬実は小型犬の様な視線で春菜を落とした。

 新しく居酒屋を開拓してみた。いつもの店よりは少々お高めだが、ゆったり落ち着ける雰囲気と値段相応以上の味とボリュームで特別な時に贅沢する店に丁度良さそうだ。

「じやあ、菜園開始記念と言う事で乾杯!」

 無理矢理記念日にしてグラスを傾けた。


 ほろ酔いで店を出ると、鍛冶屋の弟子、薫が歩いていた。鍛冶屋とは同じ商店街なので、会っても不思議じゃ無いが、完全に彼女の視界に入った筈だが、何時もの蔑みの視線が無かった。俺達に気付かなかったようには思え無いが、視界に入ったことすら不快で、無かった事にしているのかも知れない。まあ、あの視線を浴びなくて済むのは喜ばしい事だったが、どうも様子がおかしい、 

「あの娘、魔力で操作されているわね、気になりますわ!」

秋穂が後をつけ、皆んなもそれに続く。 尾行って感じではなく、直ぐ後ろを歩いても何も感じていないようだ。ドンドン灯りが少なくなり、シラフの人はほぼ居ないエリアに入ると、脇目も振らず娼館のドアに吸い込まれた。

「光殿、買って来ては?」

夏果が慌てた声で救出(?)を提案、皆んなも頷くと春菜はズッシリ重い財布を差し出した。


「今入った娘、頼めるかな?」

「2時間で1万だよ、前金でね。」

物価は元の世界の1割程の筈なので、結構な額と言う事になる、

「3万で持ち帰りはどうだ?」

「5万だね。」

「中取って4万、領収書は3万でいい。」

婆さんは、下卑た笑いを残して薫を呼びに行った。


「御主人様、宜しくお願い致します。直ぐにお楽しみになりますか?」

「朝までの分払ってあるから、付いてきてくれ。」

「承知致しました。」

外に連れ出し、四人と合流し家に連れ帰った。空いている部屋を客間に使える様にしてあるので、そこを案内すると、

「少々お待ち下さい。」

いきなり洋服を脱ぎ始めた。夏果と秋穂が止めに入り、催眠魔法で眠らせた。事故等で正気を無くして暴れ出す患者の治療に使う技らしい。

【鑑定】を使うと【隷属】のスキルで操られていた。術者が解かれば何とかなるが、残念ながらそこまで都合良くは出来ていなかった。取り敢えず、眠っているので朝になってから調べる事にした。


 何となくバタバタと風呂を済ませ、そのまま部屋に帰った。そう言えば、ここに住んで初めて独りで寝る事になる。魔法で操られて娼館で働く女性を見てしまうと、流石に性欲なんかは湧いてこない。苦々しい気持ちで眠りについた。


 安眠とは言えない状況で目を擦りながらリビングに降りた。皆んなもう起きていて、薫もソファーに居心地悪そうに座っていた。

「操っているのは、母の夫です。」

薫の母は目覚舎の出身で、その夫が【隷属】のスキル持ちらしい。目覚舎を出た時、一緒に連れて来た六人の妻に客をとらせ財を成したそうだ。妻達に商品価値が無くなると、借金の担保に搦め獲った娘や、妻達が産んだ、どの客の子供か解らない娘達の春を売っていた。

「それで目覚舎を嫌ってたんだね?」

薫は頷いた。

「その男の居場所は判る?」

「ええ、子供の頃住んでいたアイツの屋敷に居るはずです。結界で堅く護られているので手出しは簡単には出来ませんけどね。」

地図に場所を書き込んで貰って、娼館のオーナー屋敷に向かった。元々遠征の手続きと準備の予定だったので、そっちは四人に任せる。娼館に関わる所に連れて行きたくないとの主張が認められ単独で乗り込む。

 屋敷は結界で囲まれていたが、新しく手に入れた刀に魔力を込め、赤く光らせて斬り付けるとあっさりと突破。薫の情報でオーナーが居ると思われる部屋に更に結界が張ってあった。

 前世で取った杵柄?雨樋を伝って登り【破視】で中を調べる。【鑑定】重ねて使うと、眠っている男は【隷属】のスキルを持っていた。魔力レベルは低かったので、【隷属】をサクッと奪い、そのまま姿を消した。

 家に戻ると薫は、皆んなと馴染んで街の情報や、ファッションの話で盛り上がっていた。【鑑定】を使うと【隷属】は解除されていた。


 安心すると急に空腹に気付いた。薫オススメのレストランへランチに出掛けた。

「ごめんなさい、目覚舎出身の方が皆んなアイツみたいって訳じゃ無いんですね!アイツしか見た事なかったものですから。」

俺が出掛けている間、目覚舎のシステムや、俺達の関係を説明し、ある程度の理解を得ていたらしい。魔法で操られていた事は師匠の杏も知っているそうなので、鍛冶屋に送って経過を説明した。様子見を師匠に引き継いで、いつも行ってる方の居酒屋に寄ってから家に帰った。

 

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