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それから

《地獄なのか?まぁ天国ってことも有りかな?》


 俺、四元光樹は、暗闇の中に居る。思考回路が重く、フリーズしながら、記憶を辿ってみる。

《そうだ、魔物に喰われて胃袋で魔石を狙ったんだった。あれ、倒せたのかな?》

 記憶の整理が進み、気配を感じる様になった。目覚舎で治療を受けていた時の様な感覚だったので、魔物の腹から瀕死状態で助けられたと思っておこう。

《閣下に教わった鍛錬でもして治療が進むのを待っていれば良いな。》


 コッチに来た時と同じ様に治療が進んでいるようで、念話を試してみた。

『気が付いた?またボロボロだからね、しばらく我慢してね。きっとまたお婆ちゃんになってると思うけどよろしくね!』

金鷹領主の別荘で治療しているそうだ。


 触れられた感覚は若いまま。嗅覚が戻っても加齢臭はしなかった。聴覚からも枯れた声は聞こえない。視覚が戻るのを待った。

 先に手脚が治り、落ち着いたトイレを堪能、鍛錬の成果が現れていて、キッズサイズ迄成長していた。


「あのね、お婆ちゃんになったってのは嘘よ、気付いてたと思うけど。」

「うん、そりゃあ解っちゃうでしょ?でもどうして今?」

「光樹が中から魔物を倒した時にね・・・」

魔物を切り刻んで救出してくれた時に毒を浴びて、防具の無い鼻から上が焼け爛れているそうだ。

「自分達の治療を優先すれば良かったのに!」

「視力はね、色々不便だから先に治したけどね、光樹は放っておいたら死んじゃったからね!目が治ったら私達をしっかり治してもらいますわ。」


 視力が戻り、久し振りに見た妻達はかなりのダメージだった。

「春菜からで良いかな?」

他の3人が頷いたので、早速今まで寝ていたベットに春菜を寝かせた。

 夜までお喋りして過ごし、久し振りのスキンシップを楽しんだ。キスしようとすると、

「こんな顔で気持ち悪くないの?」

「え?春菜は春菜でしょ?」

拒んだ手の力が弱くなったので、そのまま唇を重ねた。

 キッズサイズの光樹(・・)は動くと外れそうなのでじっとしているが、しっかり春菜の中に入ることが出来ている。念のため身代わりの指環を確かめてから、肩代わりの術を掛けた。

 目の辺りに感じた事のないレベルの熱さと痛みと痺れを感じた。1分したかどうかで痛みは全く無くなり、倦怠感と脂汗が残った。身代わりの指環は壊れていて、術の成功を確信した。何事も無かった様に寝付くまでスキンシップを堪能した。

 翌朝、キレイに元通りの顔になった春菜は鏡を見て、

「えっ?一晩で治るの?どうやったの?」

「あ、うん、ちょっと頑張ってみた。まぁ方法はちょっ説明が難しいからさ、後で纏めて話すよ。それより買い物に行きたいんだけど、ここから街って遠いの?」

「馬車が必要ね、わたし達も酷い顔だから外に出てないのよ。屋敷の人に連れて行って貰えると思うわ。」

 春菜の言う通り、執事さんに相談すると、馬車を出してくれた。古道具屋で身代わりの指環を2つ見つけて購入、未鑑定アクセサリー詰め合わせが捨て値処分していたのを棚の5箱を買い占めた。鑑定すると、まぁまぁ使える物があり、お目当ての身代わりの指環も1つ見つかった。

 夏果、秋穂、冬実と3夜で3つ身代わりの指環を壊し冬実と朝のおかわりを楽しんでいると、

「どうやったらそんなに早く治せるの?」

「あ、うん、ちょっと頑張ってみた。まぁ方法はちょっ説明が難しいからさ、後で・・・」

「って、春菜の時もそう言ってたでしょ?まぁいいわ、皆んながいるときにしましょっ!」

キッズサイズの光樹(・・)が弾けて、食堂に向かった。


 待っていた三人が冬実と同じ質問をした。

「肩代わりの術を使ってね、身代わりの指環で受け流したんだ。指環が1個しか無かったから、街で捜してね、上手く3個揃ったんだ。」

夏果は眉をひそめ、

「肩代わりの術って、全快と引き換えに同じ苦しみを受けるんだよね?身代わりの指環って、そこも代わってくれるの?」

「いや、残念ながら、発動にタイムラグがあってね、1分位は滅茶苦茶だったよ。2日目に三連チャンって思ったけど流石にアレ、しっかり回復してからじゃないと無理だったんだ。」

「そんな合せ技、良く知っていたね!」

「いや、多分大丈夫だと思ったからね、試しにやったら上手く行ったんだ。ヘヘ、先に言ってたら反対したでしょ?」

 一応お叱りを受けて、領主に快気を報告しに屋敷に向かった。


 屋敷はセキュリティを心配するくらいに、スルーで執務室。報告を済ませ帰るつもりだったが、

「帝都に報告するように言われております、暫くはこちらをお使い下さい。」

客間に案内された。復活まで半月程世話になっているので、断わる訳にもいかず、荷解きをした。


 半月前まで散見したいた魔物の被害が無くなっていて、各地に散らばっていた尊村が同化した魔物達が集まって、あの魔物になったと考えると安心だが、まだどこかに潜んでいないとは言い切れない。近々の被害が無いのは好ましい事には間違い無いので、先ずは喜ぶ事にしよう。


 帝都から使者がやって来た。病み上がりなので、帝都に来いとは言われなかったが、どうしても行かなきゃならない状況だった。受けるにしても、断わるにしても、使者に伝言を頼むのは不味いだろう。諦めて、帝都に行く事にした。

 断れるなら断りたい所だったが、帝の意志は固く、準備も万端で逃げ道は塞がれていた。


 案内の、執事風のオジサマは、

「大明国は、魔物退治で国を救った四元光樹殿は公爵の爵位を授けます。公爵領は・・・」

帝都の西部の直轄領が『四元領』になっていた。帝都が東京だとすると、神奈川、山梨、静岡に相当する地域だった。更に説明が続いて、

「大明は、一夫一婦制で、皇家と領主にだけ、一夫多妻が認められているんです。現状、違法状態ですので、悪く無い提案だと思いますよ。」

 ハメられた感じもあるが、帝都に呼ばれても、近いから帰れるので、程よい距離かもしれない。領主の仕事がどんなものなのか解らないが、ムリに、断わるのも大人げないので、大人しく受ける事にした。

 当たり前のように晩餐会に参加して、北道に帰ることを帝に告げると、思ったよりあっさりと解放してくれた。


 道草食わずに一気に青林、港で待っていたのは大明の軍艦。監視艇って感じだろうか?

「何かあったんですか?」

「いいえ、公爵様をお送りするように承っております。」

港で一泊待つよりは良いので、有り難く乗船した。

 外観は、やや小振りで大きな大砲とかも無い、戦闘力低めと思われたが、魔力砲が搭載された、最新艦だった。

「帝専用に開発された艦です。快適に過ごして頂けると思いますので・・・」

艦長の案内でデッキを降りると、ホテル仕様だった。快適に一泊で樽内に着いた。


 港には馬車が待機していてそのまま登城、上皇は悲しそうに、

「そなたのような人財を北道で独り占めするにはいかないんじゃなぁ。」

「父上、北道ではなく、『北大明』ですよ。」

 説明を求めると、新旧大明と、北道が1つになって、新たな『大明』になったそうだ。僕の提案だというが、そんな事話したかな?戦うより仲良くしたほうが良いので、元の世界のEUとかを想定した話を誰かとしたことあったかな?まぁ、平和路線だし、歳名対策にも効果的だろう。


 割とあっさり解放され、家に帰ると木綿子が来ていて、書類の束と待っていた。旅行中に稼いだ分の確認が殆どでサインするだけだったが、最後の4部は子供達の転校の手続きの書類だった。

 新しく貰った四元領の学校に転校することになっていた。偶にあっちに顔出す位に思っていたが、そう軽い話じゃなかったようだ。


 荷物を纏め、帝都にトンボ返り。挨拶して、四元領に入った。


 新築の屋敷は城の規模で要塞の様になっていて、軍港を見下ろしていた。騎士隊等を再編した軍隊の基地が併設されている。

「四元領は、どこにも属さない独立領です。新しく編成した軍隊の将軍も兼任ですので、国の護りも宜しくお願いいたします。」

ん?聞いて無いよッて言いたい所だか、爵位を授かった時に貰った書類になんか色々書いていたが面倒で読んでいなかった。


 今更断わる訳にはいかないし、尊村の同化した魔物がまだ残っているかもしれないので、全国を見渡せるのはメリットだろう。居心地は悪いが、頑張る事にした。


 領や、軍の仕組みなんかを精査していると、『幕府』という文字が見つかった。いつの間にか、国を任されてしまったようだ。帝は元々の直轄領の領主となり、北道の王は、そのまま北大明の領主となった。

 翌日、全国の領主が集まった。中には冒険者風情に国を任せるわけにはって人も居るだろうから、その人を担いで再考してもらう計画だったが、幕府案は満場一致で決まったそうで、逃げ道は完璧に塞がれてしまっていた。


 成り行きで引き受けてしまった将軍職だが、折角なので、旧北道で成功した街づくりや交通インフラの整備に取り掛かった。各々の領主達に成功例を見学させると、直ぐに同意を得られ、生活支援ギルドがパンクしそうな位に再開発が進んでいった。


 地方の人口流出対策で、一次産業優遇税制や、旧大明の戦車工場をトラクター等の農機に変更したり、戦艦の技術で漁船を建造したりした。

 深刻な過疎化には至らずに、農業、漁業は安定し地方の憂いは免れる事が出来た。


 5年が過ぎ、スラム街が無くなった都市部では、犯罪も激減、一応将軍としての成果は出せているだろう。そろそろいいかな?将軍を廃業することにした。

 各領主を集め、引退と大統領制度を提案した。初代大統領を引き受ける事を条件に次回から選挙で決める約束を取り付けて、民主化も容認してもらった。

 

 時は流れ、大統領を2期8年務めようやく表舞台から解放された。


「さあ、冒険だ!」

と行きたい所だが、危険な魔物は駆除済み、ダンジョンもしっかり管理しているので、面白味の有りそうな事は殆どない。取り敢えず、旧北道王都の家に戻ってのんびりすることにして、青林まで列車で北上した。海底トンネルはムリ?そんな想像をしながら船に乗り継いだ。


「只今、異国のものと思われる艦隊が接近中です。乗客の皆様は、船室に戻り、待機願います!」

 突然のアナウンスに、のんびり暮らすことを諦めて、操舵室に向かう。ずっとこんな感じなのかな?きっとそうだよね。ハプニングにワクワクする光樹は、それからも落ち着かない暮らしをずっと続けてバタバタした老後をおくった。


 因みに、閣下から伝授された鍛錬は、ずっと継続し、標準を遥かに超えた光樹(・・)は、大往生のその日までバリバリの現役だった。ただ残念な事に、そのシーンではひかりになっている事が殆どで活用する機会は殆ど無かったそうだ。

明けましておめでとうございます!

1年と1日、お付き合い頂き有難う御座いました。

今年も元旦スタートで、新作を、投稿致します。

『どうやら、レトロゲームの世界に転移してしまったようだ。』

毎週土曜日、日曜日と祝祭日、深夜1時の更新予定です!

よろしくお願いいたします。


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