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大明旅行

 翌朝、光樹と妻達のままで王城から解放された。久々に、我が家に帰り、子供達は学校に復帰した。大量の課題を持って来たが、その気になれば飛び級で卒業も出来る学力なので、サクサクと片付けていた。


 家も庭も畑も、生活支援ギルドの皆さんが快適にキープしてくれているので、特にすることもなく、なんとなく、燃え尽き症候群っぽい感じでボーっとしていた。王様が監視している訳じゃないが、自宅でのんびりしていると、ひかりに変身する大義名分が無いので、光樹のまま。ベイビーサイズの光樹(・・)の対処法を考えていた。


 結局、解決策は見つからず、庭でボーっとしていると、

「お仕事ヌキで旅行に行ってきたら?ウチ等は学校もう休む訳いかないから、お姉ちゃん達と楽しんで来てよ!」

ディアンの提案に他の子達も頷いて、

「お土産、楽しみに待ってるね!」


「そうね!ギルドも学校も病院も、私達居なくてもしっかり回るようになっちゃったからね!暇にしてると上皇様に呼び出されそうだから、行きましょう、旅行!」

全員一致で旅行に行く事になり、行き先は、艦が大き過ぎて入港出来なかった裏大明を回る事にした。


 出掛ける迄は、子供達が交代でお泊り。

「変身しようか?」

「ううん、光樹君とお泊りって珍しいからね!ウチが変身しよっか?」

「変身?」

「大人になってみようか?」

「いや、今のままが良いよ!」

「えー、残念!お姉ちゃん達の許可は貰ってるんだけどね!」

「いいから、もう寝るよ!」

灯りを消して腕枕にして布団を掛けた。

 リュンヌ、エール、ネージュと毎晩同じようなやり取りをして出発の朝を迎えた。

 子供達の登校を見送ってから、列車で城下に移動、そこから乗り合いの馬車で樽内に向かう。

 樽内から青林への船は、以前と変わらない外観だが、旧大明の技術で動力を改造、2泊3日の船旅が1泊2日に短縮していた。


 大明の階級符ですんなり入国。中古の馬車を買って馬をレンタル。海岸に沿って港町をハシゴしながら海の幸を堪能する計画。あまり整備が行き届いていない街道をガタゴト走る。

 仕事ヌキの旅行だが、偶に盗賊に襲われたり、犯行現場に遭遇したりするので、捕まえて、ギルドに突き出したりするので、今までの遠征と然程変わりは無かった。

 途中、内陸部の美味しいモノに寄り道したり、温泉で連泊したり、呑気に2か月程。その間、毎晩順番に同衾、スキンシップを楽しんだが、ベイビー光樹(・・)に変化は無かった。


 折返し地点の大明南西端、岡口(おかぐち)に着いた。いつもの様にグルメを満喫。宿でのんびりしていると、

「なんか、街の様子、嫌な感じしない?」

夏果が窓から外を眺めて眉をひそめた。

「やっぱりそう感じる?枚蘭の雰囲気だよね?」

全員気になっていて、散策がてら街の様子を見て回った。

 鍛冶屋を始め、武器関係の店が臨時休業、保存食の類が店頭から消えていた。騎士隊や、一部の冒険者はピリピリした雰囲気で、その他の人は平時のまんまと思われる。港の出入りはまぁまぁかな?普段が解らないのでなんとも言えないが、かなりの数の船が、荷物の積み下ろしをしていた。

 ギルドに寄って見ると、職員も冒険者もホクホク顔。

「最近、旧大明の貴族からの、ガイド兼護衛で高額の依頼が絶えないんです。」

護衛の報酬が、相場の倍で、普通なら護衛じゃ無く観光ガイドを頼むような所に同行するそうだ。

「1人欠員のパーティーがありますから、助っ人で参加してみますか?」

受付嬢の提案を二つ返事で引き受けた。妻達は、騎士とかからの情報収集のため別行動になった。


 旧大明の貴族という人達は、都度色んな人が来るそうで、毎回来るのは接待係のような中年女性とのこと。言語も共通だし、観光地は何度となく通っているので、この人がガイドでも可笑しくない感じに思えた。今回のVIPは、西大明の王族とのことで、閣下と呼ばれていた。藤雄さんの身内にあたるので、会っていても可笑しくないが、その時はずっとひかりでいたので、初対面の冒険者でも大丈夫だろう。

 有名な史跡に着くと、背後から、魔力を感じた。明らかに狙われた感じがしたが、振り向かずに気配を読み取る。術者は接待係の女性に間違いない。既に確認していた【主従関係】のスキルを使ったらしく、他の冒険者達は術にかかっていた。【隷属】の下位スキルと思われる。魔術反射で術にかかった接待係は気づいていないようだ。そのまま泳がせる事にして、観光に付き合った。

 定番コースを回って温泉宿。閣下は男風呂にも関わらず、連れて来ていた妖艶な美女達と温泉を堪能していた。

「目の保養だけは構わんぞ!」

貸し切ったりはせず、護衛の皆んなも、鼻息を荒くして入浴していた。


 呑気に食事をして酒も振る舞われた。他の護衛達は結構飲んでいたが、流石に勤務中なので、アルコールを浄化しながら付き合って、早めに布団に入った。なんとなく眠れずにいると、

「失礼致します、光樹様、閣下がお呼びでございます。ご同行願えますでしょうか?」

断れる雰囲気じゃないし、閣下から悪意は感じられないので、素直に付いていった。


「その小ささは、魔法の副作用か何かだろ?相談に乗るぞ!見てみい、次の還暦まであと34年だが、それまでは現役だ。」

浴衣を捲ると、固くなったモノの先がトランクスのゴムを越えてはみ出していた。

「魔力、霊力、仙力が別モノという考え方は解るか?」

「はい、北道の者ですが、体調不良の対策で、仙力の修行で来ていた事もあります。」

「おお、それなら話が早い。では、初めに・・・」

閣下は魔力、霊力、仙力を身体の中で練り上げ、弱点を補う鍛錬法を教えてくれた、ベイビー光樹(・・)に溜めて行くと外観にも影響が出るとのこと。閣下は長い間、この鍛錬を欠かしていないそうだ。次の還暦とは120歳だから、あと34年って事は86歳か。88歳の米寿は眼中に無く、ダブル還暦を目指すのが、納得出来た。

 色々お喋りして、

「では、今が本来の姿なのかぁ。」

なぜか残念そう。

「開祖様の姿が本来なら、朝まで楽しんでいって貰おうと思っていたんだがな。」

「えっ?ご存知だったのですか?」

「ハッハッハッ!国を救ってくれた恩人を見誤る程は老いてないぞ。」

閣下はお姉さん達を自分達の部屋に帰すと遮音結界を張った。

「実はな、岡口の領主と、ウチのヤンチャな連中が組んで、大明の帝都を落して国を取る計画が有るようなんだ。コッチに工作部隊が潜り混んでる筈で、俺はあの接待係の女が何か掴んどると読んでいるんだ。」

更に話し込んで、信用出来ると判断、情報交換の為念話で妻達を呼んでみた。隣の宿に泊まっていたので、猫になって紛れ込んで来た。ヒラリ宙返りして人間に戻る。閣下は息を飲んで目を輝かせていたが、現れたのは弟達。念話で、指示済みなので笑いを堪えていると、

「策士よのう。」

妙に褒められてしまった。

 街で拾い集めた情報と、閣下の推測、接待係の女の行動から、筋書きが読めてきた。岡口領主には、息子が3人いて、3にとも母親が違い、母親の実家が次代領主の座を争っているらしい。その混乱に乗じて西大明の好戦派が、歳名との連携を諦め、岡口を足場に、南西部の領を従えようとの作戦らしく、決行日は1週間後だった。


 閣下は西大命に戻り、戦艦などを取りまとめ、出陣を阻止した。徐々に潜伏していた、西大命の工作員は把握済みで、集まった所で一網打尽、【主従関係】でアテにしていた岡口の助っ人は、勿論解呪済み。接待係の女は、誰一人として言うことを聞かない事に腹を立てていた。昨夜のうちにスキルを奪っていたので、今更慌てても後の祭り。

 

 引き入れた岡口の状況も露わになり、関わりの無かった三男が継ぐ事になるだろう。内戦が起きてしまったら、相当な犠牲が想像できるので、未然に防げたのは、かなりの幸運だった。表では働いていないので、報奨金もなにも無いし、ギルドの成果にもならないが、どちらも困っていないので、後の面倒を抱えることを考えると、悪い状況でもない。バタバタした岡口を気兼ねなく後にした。

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