ようやく観光
結局、夜中迄付き合わされ、翌朝やっと解放された。折角来たので、旧大明を観光する。現在、南大明に居るのでここを観て回る。
南大明には、建国神話にまつわる史跡が多く、それを巡る、八十八巡礼が有名との事。南と西の『元祖VS本家』争いで、南は史跡こそがルーツの証と主張している。西には西で別の主張が有るそうだが、行った時のお楽しみ。
首都のある、金龍郡からスタート、反時計回りに、緋鳥、玄猫、白狛と一周して金龍に戻る。本来は、白装束を着て徒歩で回るそうだが、馬車でサクッと回って見る。
道中、宿の心配な無い位らしく、温泉も沢山あるそうなので、変身はひかりのまま、全員女子が都合良さそうだ。雰囲気を楽しもうと、巡礼の白装束に身を包んだ。普段の服と比べ格段に露出が少ないのは良いが、素肌に着るという事で、下着が無いのは落ち着かない、下は忘れてしまえば気にならないが、上は動く度に余計な揺れを感じるのでずっと落ち着かなかった。
スタンプラリーというか御朱印帳みたいな感じで、行った所で印を貰う。台帳は有料だが、宿、食堂、土産店、温泉等等、どこにいっても巡礼者特典が受けられる、昼の食堂では、デザートがサービスだった。
史跡は元の世界の神社のイメージで、鳥居が屋根付きの門みたいで黄色。二礼二拍手一礼みたいなルールも違って、お賽銭を入れて、右手のグーを左手で包む様に手を合わせ、一礼。見様見真似で大丈夫だった。貰った龍のデザインの印は朱色ではなく黄色。ほんの少しラメ?金龍だから金色のつもりかも知れない。
13箇所制覇して温泉宿に泊まる。早速温泉を楽しもうと、脱衣所に向かった。夕食のメニュー予想なんかで盛り上がりながら白装束を脱ぐと、ワタシ以外の全員が下着を着けていた。
「えっ?本気にしてたの?以前はそうだったけど、最近はOKだって。あと、着けないのが普通だった頃も上はサラシ巻いてたんだって。」
表情を読むと、全員共犯のようだった。今更怒っても仕方がないので、気にせずに温泉を堪能した。
翌日は途中から緋鳥に入った。鳥居的な門は赤で鳥デザインの印も赤だった。朱色ではなく赤なのは、朱と黄の違いよりも、文化の違いが感じられた。
玄猫では黒の門と印、白狛では白い門、印は白じゃ不味い(?)ので青だった。
10日間で一周、藤雄さんに帰国の挨拶に行くと、
「西は観て頂けないのですか?お急ぎなんでしょうか?」
西大明観光を勧められ、案内を買って出た。それは更に面倒なので、ワタシ達だけで、西も回る事にして、王宮を逃げ出した。
西に渡り、藤雄さんオススメの観光地を巡った。南・西と呼ぶのは歴史が浅く、以前はお互いに『大明』を名乗っていた。地名なんかも不都合があるそうだ。西大明と言っても、南大明よりもやや南にある。便宜上呼び分ける事になった時、(新)大明で読んでいた名前が採用されたらしい。赤兜から見て、真南に位置するのが南大明、そこから西にあるのが西大明、赤兜からは西南西位に位置する。
温暖な気候なので、南国のフルーツなんかが味わえる。北道も合わせ4地域のご馳走を味わったが食材の違いが、一番ハッキリしていた。温泉とグルメの旅、偶にオススメの史跡も見たが、南程は整備させていない。ただ、その分歴史を感じるので、こちらがルーツって言う主張も否定しかねる。まぁ、決着はどうでも良いかな?なんて思っていたが、もう既に決着は着いていて、南・西の統一を待ってこの度、発表されたそうだ。
南・西・(新)大明の中間地点、海賊が根城している島々の中に蔵江と言う島がある。島々のなかで、古くから人が住み着いていた事は有名だったが、数年前、あっちの世界で考古学者だったと言う人が調査し、大明のルーツは、遥か北で遭難し、流れ着いた蔵江の人達が島を切り拓き、やがて南・西に開拓の手が伸びたそうだ。ルーツはどちらでもなく、変則的な王位継承も改善されるので、平和になってくれそうだ。
西大明をグルリと回り、一旦南に戻る。藤雄さんに、西を観てきた報告と、笠本さんを赤兜に送り届ける。新旧大明の国交の件で残っていたが、そろそろ一段落との想定。大体想定通りで、和平交渉は順調とのこと。笠本さんは名目上はワタシ達の旅のガイドだが、本当の目的は、旧大明対策なので、赤兜に戻って、本職を頑張って貰う様に、赤兜から別行動。日本地図で言うと、日本海側、裏大明を回ってみる。
港の規模の関係で、入港出来る所が限られてしまったが、どの港も旨い食べ物、旨い酒があり、しっかりグルメ旅を満喫した。最北の青林を回って、帝都に戻る。旧大明の事は当然報告されているだろうが、一応挨拶と報告。護衛を一緒にした役人さん辺りに会うつもりでいたが、帝に謁見することになってしまった。断わる訳にも行かず、プレゼントされた和服に着替えた。妻達の着付けを手伝うと、代わりに簪の似合いそうな髪に結ってくれた。
子供達は御左様で習った事をちゃんと覚えていたので、サクサクと完成していた。
「ちょっと、羨ましいわね。」
「冬実も御左様にお世話になってみる?」
「いいの?ってか入れて貰えるのかな?」
「謁見の後、パーティーでしょ?その時、誰か関係者がいると思うから相談してみるよ。」
「面白そうね、私もいいかしら?」
「僕もぜひ!」
「そんなに言うなら、付き合ってあげてもいいわ。」
結局、4人とも参加希望となった。
控室に通されると、(多分)偉い人がやって来て、
「四元殿の提案通り、大使館を設置しました。北道側でも出来ているそうです。旧大明大使館も現在建設中です。」
ん?そんな提案したんだったかな?国と国との連絡窓口が必要って事は言ったかな?まあ、必要な事なんで、きっかけになったなら良かったんだよね。
謁見は、ガチガチな正式行事って感じだったが、あっという間に終了、報告なんかも無く、形式的にしなきゃならないからするって感じだった。パーティーになると、帝が土産話を御所望、冬実に任せていると、四元塾で学んでいた青年が話し掛けて来た。
「大使として、こちらに常駐しています、緊張する方々との対応が多くて大変ですが、両国の関係改善に少しでもお役に立ちたいと頑張っております!」
うん、彼の話を聞いて思い出した、そうそう、大使館。提案したような気がしてきた。上手く行ってそうでなにより?だね。
次にやってきたのは、旧大明のスパイ。まだガセネタを送らせているのかと思ったが、旧大明の大使として働いているそうだ。ある意味、公式か、非公式かの違いで連絡窓口としては同じような仕事かもしれないな。
「上手に着こなしてますね。」
御左様の桜香師範だった。早速妻達の入門の相談をすると、快く受け容れてくれた。ダンスの時に、男性パートを手伝う事が条件とのこと。
旧大明との交渉は、北道との交渉でノウハウがあり、必要な事項は抑えていたので、サクサクと進んでいるそうだ。軍事的な面では、多少の食い違いがあるようだが、歳名の脅威を、共通の敵とし、『敵の敵は味方』の論法で取り敢えずはなんとかなりそうとのこと。どこも順調らしいので、安心して帰る?ああ、妻達が御左様で修行なので帰れないんだね。取り敢えず、子供達と観光でもして過ごそうかな?