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帝のお迎え

 しばらく遠話器にドップリだったので、全く稼いでいなかったが、家賃収入や、四元塾の顧問料等などの名目で結構な額で蓄えを増やしていた。遠話器も順調に進みそうなので、旅行を兼ねた遠征を計画した。


 丁度、大明の帝が来訪するタイミングなので、面倒に巻き込まれないよう、入れ替わりで大明を訪れて見ることにした。

 旅仕度を始めると、ギルドから『待った』が掛かった。帝の初来訪の護衛の依頼が、当たり前の様に指名依頼で入るそうだ。

「解っていて出掛けるつもりだったでしょ?」

木綿子が困り顔で訴えていた。仕方がないので請ける事にして、打ち合わせの為登城した。

 旧大明の技術で造った戦艦で迎えに行き、1週間の滞在の後、送って行くそうだ。そんな物騒なモノに乗らなくても良さそうだが、北道が海軍を持った事と、大明との同盟が密な事を旧大明にアピールするのが目的との事。漁船を改造した俄仕立(にわかじた)ての戦艦(?)で、艦隊を撃破したメンバーが護衛に着いている事もスパイ経由で伝わっているので、安全な航海になる予定。しっかり打ち合わせて、出港の準備を整えた。

 お迎え当日、樽内の港から出発。今回も王弟殿下が大使でその護衛として同行する。殿下の外出には通常、城の重鎮と、それなりの騎士や衛兵が同行するが、四元塾の塾生が2人、将来騎士団長になる筈の若いエリート騎士だけが随行していた。殿下自らの人選だが、エリート騎士の大路(おおみち)さんは、どうも、ギルドの護衛を快く思っていないようだった。『平民の冒険者なんて』って感じの古いタイプの貴族のお坊ちゃま。ワタシ達と行動を共にして、偏見を無くす作戦だろうね。ただ波風立てないで済ます計画なので、そうそう見解が変わる様な出来事は無いだろう。まぁソッチは依頼に明記されている訳じゃ無いので気にしないでおこう。


 何事も無く帝都の港に着いて、お偉いさん達の出迎えで城に向かった。お約束のパーティーが開かれた。相変わらず居心地が悪いが仕事と割り切って帝や皇太子と踊ったりして時が早く過ぎるのをひたすら願った。

 子供達は、皇族のお子様達と中庭で遊んでいた。艦では思いっきりお転婆モードで暴れていて、大路さんは、なんで子連れ?ってあからさまに睨み付けていたが、今はすっかりお嬢様モードで、到着した時頂いた着物姿。お子様達と一緒でも全く違和感が無かった。大路さんはそれでも不快な視線に変わりは無かった。

 ノンビリ歓談していると、不快な魔力を感じ、城の結界が破られた事が解った。中庭に何かが舞い降り、眩しく光ると、グラリと揺れた。建物が壊れて瓦礫の煙で視界から遮られた。煙が収まると、巨大な黒い猫と、白い犬が居た。衛兵が駆け付け包囲したが、2頭の間から、お子様達が無傷で現れた。2頭がペットサイズになると、飛行船のゴンドラを掴んだ龍と魔鳥。ほぼ残骸状態のゴンドラには、それぞれ1人武装した男が乗っていた。意識が無かったが、生きてはいるようなので取り敢えず放置。龍と魔鳥も小さくなって、猫と犬と一緒に寄ってきた。結界で更衣室を作って、ポーチから着替えを出して、人型になった子供達に渡した。着替えて出て来た子供達は、襲撃の経緯を報告。飛行艇が突っ込んで結界を破り、もう1艇から爆弾を投下したそうだ。

 ディアンとネージュは元の姿になって爆発からお子様達を護り、リュンヌとエールは、飛行艇を襲って、襲撃犯を捕らえた。衛兵達は、襲撃に備えて潜んでいた曲者を一掃したそうだ。


「ごめんなさい、折角頂いたお着物ダメにしちゃいました。」

ディアンが皇太子妃に謝ると、

「いえ、あなた達が居なければ、皆んな助からなかった事でしょう、助けて頂きありがとう。それよりお怪我してるじゃありませんか!」

「お気遣いありがとうございます。これくらいでしたら!」

視線でヒールを要求して来た。4人とも軽症だったのでサラッとヒールで即完治。


「開祖様!」

一人の男が駆け寄って跪いた。旧大明のスパイだが、想定外の出来事に対応出来ずにいると、

「な、なんでもありません!!」

ダッシュで居なくなった。

 妙にな反応は後で調べるとして、現状把握。被害は建物だけで、負傷者は無し。襲撃者に誰の差し金か吐かせる。軽くヒールして意識を戻し、【隷属】を掛けて尋問した。嘘をつけない状態なので信じるしか無いが、全く情報が無かった。記憶を操作されているらしい。

 記憶喪失という訳ではないので、襲撃迄の経緯を確認すると、博打で大きな借金を作って、借金のカタに配達の仕事を請けたそうだ。乗っていた飛行艇や、彼らが大負けした賭場を調べると黒幕が見え隠れして来た。

 動機も含めて、一番の容疑者は皇太子の異母兄、真大(しんだい)明男(あきお)の周辺。皇位争いを避ける為、皇族の身分を剥奪された男らしい。更に彼を担ぎ上げようとする勢力が、良からぬ事を企てたため、平民に落とされたそうだ。その時から名乗っているのが、『大明の真の男』で真大明男との事。

 明男を推す勢力で飛行艇を所持又は手配出来る者、賭場への影響力を持つ者、記憶を操作する程の魔力と持つ若しくはそういった魔術師を使える者で篩うと、かなり絞られる。分体を猫にして、各容疑者宅に潜入した。

 7人の容疑者のうち4件を調べた。全員が関わっていて、夜のうちに全員が明男の母の実家に集まってくれた。城の目の前の屋敷で直ぐに乗り込んで、全員を捕まえることが出来た。その先は地元の方々にお任せして、『開祖様』に付いて調べて見る。


 先ずは腹拵え。バタバタと夜通し働いたので、街をブラついて、朝から開いている店を探した。宿を兼ねた食堂が、宿泊客向けに開いていて、簡単なモノならと、空腹はなんとかなった。お喋り好きなオバちゃんがしつこく話し掛けて来るので、ダメ元で『開祖様』のことを聞いてみた、

「ああ、旧大明の建国神話に出てくる女神様だよ。黒髪に琥珀色の目、黒い猫、白い犬、赤い鳥と金の龍を従えてね、魔物ばかりだった島を人間のために解放してくれたんだとさ。」

意外とあっさり解決してしまった。スパイはまだバレていないと思っているので彼にとっては大失態だろう。取り敢えず気付いていないフリは継続する。


 襲撃の黒幕もしっかり突き止めた。旧大明の関与は無かったようだ。帝に取って代わろうという勢力が、明男の母の実家を旗印に、クーデターを企てた。昨夜はお子様達を拐って行く予定だったらしい。その他諸々の計画も未然に塞いで、計画通り、超VIP達を乗せて、北道に艦を進めた。

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