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反乱抑止

 行きたく無いけど、挨拶しておかなかったら、後々面倒なので、アポ無しで登城する。帰りに外食しようと子供達も連れて行く。一介の冒険者が謁見を求めても、すぐには叶わないので、城門で引き返すだけで帰国の報告が出来る。万が一を考えて、それなりの装いで向かっている。

「お待ちしておりました。馬車をお預かり致します。」

城門はほぼフリー、城の車寄せで馬車を降りると、いつもお世話してくれるメイドさんが待っていた。まるでアポイントがあったように、応接室に通された。廊下が騒がしくなると、肩で息をした上皇が登場、

「よく、無事で帰ってくれた!土産話を聞かせてくれ!」

父に圧倒され、影薄く現れていた国王も、

「おかえりなさい、是非お願いします。少し時間がありますから、早速。」

サクっと報告。いつの間にか上皇の隣には工藤さんが座っていた。

 仙術の修行では女人禁制で雪の結晶の御札と工藤さんの名前を出したお蔭で体験入門が許された事を使えると、無表情の工藤さんは、少し嬉しそうにしていた。修行の話もそれなりに盛り上がったが、覗き未遂で罠に掛かった人の事を話すと、

「その男、敏之ではないかな?」

工藤さんが反応した。

「あ、はい、その通りです。ご存知なのてすね?」

「あいつなぁ、相変わらずだな。仙術の実力は、次期師範の正明と甲乙つけがたいんだが、素行が悪くてな、何度か破門されそうになった筈、正明と志郎が取り繕って何とかしてたんだが、さっさと破門しておくべきだったな。」

山での話では一番のウケだった。


「それから、霊力を整える為に『左道場』って所に行ったんです。」

「まぁ、御左様!私達も参りました。」

王家の女性達が声を揃えた。王家の女子や有力な領主の娘は10歳になると、1年間、花嫁修業に入門するそうだ。

「では、ダンスも?」

「ええ、女性ばかりですから、背が高いので、男性パートでしたけど。」

「あれ?ひかりさん?私達には、そんな報告有りました?扇子や刀で舞ったのではありませんか?」

秋太の尋問に為す術もなく詳細を話した。

「では、良家の御息女達を選り取り見取り抱き放題(・・・・)って事ね?」

「いや、それは語弊が有り過ぎでしょ!そりゃ背中に手を回すけどさ、抱いてる訳じゃ無いでしょ。」

テッパンの弄られネタなので、黙っていたのが仇になった。まぁ皆んな楽しそうなので気にしないでおこう。

「結構頑張って上達した筈だから、元に戻った時には、踊っていただけますか?」

「仕方がないわね。」

秋穂の口調での返答だった。

 上皇は、ダンスより大明舞踊の方に興味があるようで、

「ひと差し舞ってくれんか?」

拒否権は無さそうだ。

「では、着替えて参ります。」

振り袖に着替え、剣の舞を披露した。

中々の高評でダンスのダメージがボヤけてくれた。

「実際に剣を操る者の舞は迫力が違うな。」

「ありがとうございます。舞に使う竹光ですと、帯刀禁止の宴に持ち込めますからね、魔法を纏わせれば真剣同様ですから、そういった席での護衛に便利かと思って剣の舞を集中して覚えました。」

 気は使うが実入りのいい王家を仕事に役立つし、今の開発を続けるには国の安定が必須なので、損得抜きでも便利な技能って事になる。その後、雑談をしていると、パーティーの準備が整い会場に移動した。

 乾杯の後、

「着替えて来てもよろしいでしょうか?」

「そうですね、お食事も大変そうですからね。折角ですから、光樹さんに戻っては如何ですか?奥様達も!そしてダンスをご披露願いましょう!」

ノリノリの国王に逆らえず、妻達の首は縦に振れた。

 変身はすんなり成功、衣装は用意されていたので、直ぐに会場に戻った。既に何組か踊っていて、春菜から順に4人と踊った。妻達は目覚舎でダンスもマスターしていて、華麗にリードしてくれた。王家の人達とも踊って、そろそろ子供達に、眠くなって貰おうと念話を送ったが、

『もう少し、ダンスを楽しみましょう。』

あれ?居ない?会場の扉が開くと、大人になったディアン達が、ドレス姿で登場した。4人とも、踊った事は無いそうだが、見様見真似で中々の出来映えだった。

 引き上げのタイミングを見付けられず時計の針が真上で揃った。上皇の挨拶でやっとお開き。今更帰るのも面倒だし!明日は学校も休みなので、薦められるがままに一泊することにした。ディアン達は子供に戻り、パジャマに着替えた。ワタシ、いや、僕はそのままパジャマになると、

「メンズの着替えしか持って無いから、また変身頼むよ。」

ダブダブのパジャマの4人は、ブレスレットを確かめていた。既に決定事項のようで、交渉の余地は無いらしい。折角、元に戻れたのに、またひかりになってしまった。


 翌朝、気兼ねしないよう配慮してくれた朝食を摂って城を出ようとすると、いつものメイドさんが小走りで近付き、

「何やら不穏なお便りが届いたようです。今お帰りになりましたら、お招きの伝令と駆けっこになりそうですよ。」

「では、さっきの部屋で待機していますので、お呼びが掛かったらお知らせ下さい。」

客間に戻ると寛ぐ間もなく、慌てた感じのノック。やはり国王からの呼び出しだった。


 執務室に通されると、

「未確認事項が多いので、ご内密にお願いします。」

四元塾でも見かけた男性が小声で話しかけた。

 南方の領、枚蘭(まいらん)に派遣された塾生からの報告が途絶えているそうだ。最後に届いた報告書には、暗号のメモが入っていて、解読した所、『謀反の恐れあり』とのこと。公に動いては騒ぎが大きくなるし、勘違いだったら枚蘭との関係悪化に繋がるので、コッソリ覗いて来いって感じだろう。

 国王は観光用の地図を広げ、

「ウサギネズミの毛皮を、指名依頼します。一応これで遠征の大義名分は確保出来ますね。」

 ウサギネズミは枚蘭にしか生息しない大型の鼠で、肌触りも、通気も良い毛皮は、枕の素材として重宝されている。王都から態々っていうのが多少無理はあるが、それ程細かい事を気にする人は少ないだろう。

 早速、商店街て旅支度の買い出し、

「この身体に合わせて、冒険者っぽい服を揃えないとな!」

変身したまま戻る気は無いようだ。

「ひかりもバレないように年齢調整したらどうだ?」

そんなものかな?と思いつつ、13歳程度になってみた。ヒョロっと背が高いので、童顔の16歳(成人)に見えるだろう。弟達?は17相当で、大人っぽく見えるので、兄と言った方が良いかも知れない。うん、兄達だね。ミリタリー風の衣類を、洗い替えも含めて買い込んで、それぞれ分担の買い出しに分かれた。


 帰宅後は子供達の欠席届け、岩の巨人の時は、彼女達がいなければ殺られていたと思われるので、今回も同行する。飛び級しても問題ない成績だし、旅の間も勉強を見てあげられるので、先生も駄目だとは言わないだろう。届けを書いて、明日出発前に学校に寄って提出する。

「こっちの馬車がいいね、器用だよね!」

春介と夏彦は、分体達が改造した馬車に馬をつないでいた。駆け出し冒険者が、やっと中古の格安馬車を、ゲット出来たような外観になっている。馬は偽装できないのでいつもの感じ。ショボい馬車と立派な馬のギャップが素人臭さを醸し出している。

 移動中は、試作の継ぎ接ぎ防具に、いかにも修理しましたって感じに塗装した物を装着しているので、王命で働いているようには全然見えないだろう。

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