光樹の分身
昼間は魔法の練習。いつも4人セットで出てくる分体を1人ずつ出すことにチャレンジ。なかなか上手くいかない。やっぱり駄目かと諦めかけたが、
ん?分体を呼び出すから皆んな出るんじゃないかな?
「光菜!」
声に出して分身した。魔力の消費量は特に気にしなかったが、いつもと同じ感覚で1人だけ呼び出すことに成功した。その後1人ずつ呼び出し結局4人呼び出した。
「「「「えっ?そんな事悩んでたの?」」」」
分体達が声を揃えた。
「1人がいいなら、4人呼び出して、3人戻せは良かったんじゃない?」
光穂の意見に3人は大きく頷いた。呼んだ順に返して、光穂の提案が有効な事を確認した。
『光樹』に戻ったら、分体も男になるんだよね。名前、考えておこうかな?リュンヌに相談するのが良いのかな?あっ良いの思いついた!春樹、夏樹、あききは変?秋樹だな。それと冬樹。統一性があって良いな。よし、春樹、夏樹、秋樹、冬樹、出て来い!なんてね?へ・・・?懐かしい自分の姿が4人。現れる時はやっぱり全裸。光樹は臨戦態勢だった。まだ日は高いが、しっかり結界で囲っているので、分体達の光樹の耐久性を確かめてみるが、正直期待はしていない。春樹から順に咥えてみた。自分自身の体験通りなら、あっという間に次に進む筈だが、想定外の持久力だった。待ち時間が長くなりそうなので、順番は気にせず自由に攻めて貰った。あまりにも持続するので、実はカタチだけ?気になりだすと、ゆったり楽しめないので、分体と感覚をリンクしてみた。間違いなく感覚は活きていて、最高の一瞬が立て続けに4発。そこで意識を手放したようだった。
失神した時点で分体は消えたが、結界には魔石を使っていたので、夜中に意識を取り戻した時までキープ出来ていた。
脱ぎ散らかした衣類を片付けて、再度分身を試す。冬樹だけ呼び出し、意識をリンクした状態で咥えて見る。悪い方の推測が的中し数秒で果てた。回復魔法は効かなったが、リンクを開放すると回復魔法は有効で、同じ攻めに30分ビクともしなかった。再び意識を繋ぐと、あっという間に終焉を迎えた。
冬樹を返して、春樹と夏樹を呼んだ。リンクを解除した状態で夏樹を咥えて、春樹を後ろから受け容れる。30分程で前後を入れ替え更に30分、リンクを確立させるとほぼ同時にピリオドがふたつ。
最後に秋樹に交代。リンクを外して跨がって、しっかり満足した所で意識を繋いだ。秋樹の表情を確かめてからそのまま眠りについた。
無事(?)出港の日を迎え、出国の手続きを済ませた。往路とは別の船で個室は無く、大部屋で雑魚寝になる。スキンシップはお預けだが、二晩満喫したので問題ない。2日間ただただ暇と戦って樽内の港に到着した。
手紙は出しているが、何日に戻るかは解らなかったので、出迎えは無い。乗り合いの馬車に乗ろうと思ったら、レンタルの馬があり、ここで借りて王都で返すことが出来るので最速で帰れる馬を選んだ。
軽快に馬を飛ばし、あっという間に王都に到着。たぶんまだ乗り合い馬車は出発もしていない。馬を返して、列車で我が家のある駅へ。
駅前はひと月前より華やいでいた。そこからは徒歩。学校に行っている時間なので、子供達は居ない。妻達は何か仕事を請けているだろうか?結界の防犯設備は機能していて、キチンとワタシを識別していた。すんなり門を開け、玄関もスルー出来た。
お土産を食糧庫に仕舞ったりしながら皆んなを待った。
妻達が先に帰って来た。
「あー、ディアン達の勝ちね!」
冬実が酷く落胆していた。
「光樹が帰って来たら、あたし達がお泊りでね、ひかりだったらディアン達って賭け、してたの。」
ちょっと残念と思っていると、子供達が学校から帰ってきた。
「「「「おかえり!」」」」
「ただいま!どう?学校楽しい?」
約ひと月の出来事を4連マシンガントークで聞いて、マシンガンを撃ち尽くした頃には夕食の時間だった。
お土産をテーブルに広げ、ちょっとしたパーティー気分。留守中の報告をし合った。
「手紙、届いて無いの?」
合計6通出した事を話すが、秋穂は不服そうに、
「大明に着いた時のが1通きりよ!」
なんか、叱られてる?春菜に視線で助けを求めたが、
「修行が忙しかったんですよね?」
やはり信じていないようだ。まぁ、大した問題でもないので、話題を変えようとすると、ちょうど良くベルが鳴った。
門に行くと、生活支援ギルドの人で、手紙の配達を請負って居るそうだ。渡されたのは目覚えのある封筒に見覚えのある文字だった。届いていなかった5通が纏まって届いた。筆無精の濡衣は晴れたが、自分が書いた手紙を目の前で音読されるのは、こっ恥ずかしい。
「郵便も必要だね、今回は大明で迷子になってたと思うけど、北道国内でもなかなか届かないもんね。」
手紙を本職で運ぶ人は居らず、届け先に向かう荷馬車に頼んだりするのが主流で、小銭を支払うが、預かった本人が届ければ良いが、途中再依頼するケースが多々あり、その場合は二人目以降はタダ働き。お互いに一人目になる事があるので持ちつ持たれつらしいが、そんな感じじゃ、責任を持って運ぶ感覚にはならない。
「それなら、運送ギルドで運んでもらいましょう!」
秋穂は、農業ギルドから独立して出来た運輸ギルドの説明をしてくれた。他のギルドや一般の荷物も運ぶそうで、郵便業務を付加しても大した負担にはならないだろう。
お喋りに夢中になって気付けは、子供達の寝る時間。奥の大きいベッドに5人で転がった。
「ちょっと待ってて!」
子供をおいで隣の部屋で分体を呼び出した。妻達が他の誰かに抱かれるなんて考えられないが、分体は自分自身のようなものなので、いや、自分自身だから気にする事は無いって自分に言い聞かせて、妻達の部屋に送り出した。
奥の部屋では子供達が睡魔と戦って待っていたので真ん中に潜って、皆んなを撫でて灯りを消した。
やはり引掛かかる。自分で思い付いて、自分で実行したのに、焼き餅を通り越して寝盗られてしまったような憂鬱でガンガン目が冴えていた。意識をリンクすれば、もう少し自分自身と思えるかも知れないが、それでは光樹が役立たずになってしまうので、分体達が何をしているのかも把握できない。眠れそうにないので、子供達が熟睡したのを確認してから、飲み直しにキッチンに降りた。
キッチンの魔力灯は明るく光り、光樹モードの分体達が酒を酌み交わしていた。
「フラれちゃった!」
微妙な表情の4人は、自ら回収される様に、ハイタッチ。妻達の部屋での記憶が流れ込んできた。
「私は光樹の妻ですから!」
サプライズには失敗したが、夫婦の絆を感じることが出来たので結果オーライとしておくことにして、いそいそと部屋に戻った。