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帰国

 お茶、お花、書道、絵画、陶芸、舞踊等など、習い事のオンパレード。得手不得手はあるがなんとか熟して5日目の夕食後、

「明日は社交ダンスなのですが、背の高いひかりさんには、男性のパートでお手伝い頂けると大変助かるのですが。」

城に頻繁に呼び出される事を考えたら、踊れるようにしておいたほうが良さそうだ、佳乃さんはその辺りも気を使ってくれたのかも知れない。

 消灯時間までみっちりレッスン。最低限の動きをクリア出来て何とか明日に間に合わせた。

「衣装はこちらね、お好きなのをどうぞ!」

1着選んで、

「男性パート、他には?」

「講師の私達です。」

「ちょっと足りませんね、これも借りていいですか?」

サイズの合いそうなタキシードをあと4着借りて部屋に帰った。


 すっかりマスターした着付けでいつもの着物。朝食後、部屋に帰って分体を呼び出してタキシードに着替える。洋装なので久々に下着を着ける。かなり慣れては来たが、極小さな布切れでも、それが無いと、妙な不安感で落ち着かない。今日は男装なので、下だけ着けて上はサラシで目立たなくする。髪は後ろで一本に結って、ノーメイク。それなりの男役を完成させてレッスン場に向かった。


 8対19なので、ほぼ休み無く踊り続ける。途中、踊りが苦手な4人が別メニューになり講師二人が張り付く。佳乃さんは全体を見る感じになり、更に休めなくなっていた。

 ランチはテーブルマナーの勉強を兼ねて洋食だった。流石に疲れてしまい、全身に軽くヒール。

「ご協力ありがとうございます。貴方達と踊る方が皆んな活き活きしています。こんなに急成長する例はありませんからね。」

 午後もみっちり踊って、夕方の座学は免除してもらった。部屋で寛いでいると師匠がやって来て、

「如何ですか?霊力は上がりましたか?」

「いえ、霊力の強弱とか解りません。お師匠様はお解かりになるのですか?」

「ここに横になって下さいね。」

指示通りに横になると、師匠の手のひらでふんわりと両眼を塞がれた。玉苗で整えて貰った霊力だが、仙力の乱れで、再崩壊していたようだ。付け焼き刃でムリに調整すると稀に起きるらしい。心地よいなにかに包まれた感覚がして、少しすると師匠の手が離れた。ボーっとした脳が覚醒すると、

「【鑑定】が出来ますね?私を調べて下さいな。」

指示通りに【鑑定】すると、今までは魔力と一括りに見えていたチカラが、魔力、仙力、霊力に分別して認識出来るようになっていた。自分も調べると、仙力も霊力もそれなりに持っているのが解った。


 翌日は式神使いを習った。生徒は私を入れて6人。他の子は霊力が弱いので、参加出来ないらしい。

「では、皆さん前回成功していますから、同じように試して下さい。」

佳乃さんは紙を配りながら指示を出した。1枚受け取ったが何に使うのか解らない。他の子達は各々切ったり書いたり工作の時間のようだ。

 トランプくらいの札にして、何か書き込む子、女子トイレのマークのような人型に切る子など様々。真剣に呪文を唱え、自分のコピーを作り出した。数分で紙に戻っていた。

「ひかりさん、この術はご存知?」

「紙を使う方法は解りませんが式神は出せますよ。」

人差し指と親指を擦って、式神を出した。

「おっ!1人だけ出すのに初成功!いつも2、3人出ちゃうんです。消えると紙になるので、同じ系統の術かも知れませんね。」

佳乃さんは、何故か溜息。

「初心者は、なるべく人型に切って、呪文を書き込むんです。そして慣れてきたら、簡素化していき、四角い札で済むようになるの。書き込む呪文も慣れてきたら、冒頭だけだったり、記号だけで発動出来るようになるわ。紙を使わなくなるは更に高度な術よ!」

佳乃は、四角い紙に指で『人』の文字をなぞって発動。コピーが1人現れた。

「これでも驚かれるレベルなのよ!あと、何人も出せるのは霊力が強い事ですからね、やっと出せる子には嫌味ですよ。まぁ、貴女なら、そう思われないと思うけど。」

午後は、霊力の鍛え方や病んだ時の回復方法を習った。正直、昨日までの稽古って必要?って感じだけど、霊力を整えるには必要だったのだろう。そう自分を納得させて、体験入門を終了した。

 もう一泊ゆっくりしていくよう勧められだが、朝一で北に向かう荷馬車を探したいので、夕食の前に道場を去る。皆んなに挨拶をすると、ほぼ全員が号泣。一人ひとりとハグをして、道場を後にした。

 来た時の着物でギルドに向かう。足袋と草履も馴染んだので、痛いところもなくスムーズに歩けた。

 ギルドで依頼を請ける事は出来ないので、護衛を欲しがっていそうな馬車をヒッチハイクする感じで探す事になる。そう簡単には見付からないと諦めかけた時、

「おや?この前の姉ちゃんだよな?俺、青林まで北道に送る荷を運ぶんだ、仲間も居るから、護衛料は色付けるぜ!」

大型馬車3台連ねて、北道への輸出品を運ぶそうだ。上手くいけば船を降りた後に護衛の仕事が貰えるかも知れないので、即決で請けた。

 明日の朝、6時の待ち合わせをして、宿を決めて、お土産を物色した。店は殆ど閉まっていたので、地酒を数本とおつまみやお菓子。まぁお土産の定番は確保出来た。

 変身を解くのは、北道に戻ってからにすことにした。入出国で面倒を起こさない為と、ヒッチハイクの効率を考えての選択だ。決して分体達とスキンシップを楽しむ為では無い。でも折角なので、ひかりでいるうちは、しっかり楽しんでおこうと、宿に着いて直ぐ分体を出して光樹(・・)を作った。青林まで護衛に付くのでチャンスは今夜だけ。しっかり幸せを堪能して眠りについた。


 青林までは4泊5日、魔物はちょくちょく出るが、それ程危険なモノには会わずに済んだ。宿泊はキャンプ場で、毎晩ポーチから簡易キッチンを出して、途中で狩った魔物を捌いたりして振る舞った。

「護衛料だけじゃ足んねえな。こんなご馳走が当たる出張なんてまずねぇからな。」

「いえ、乗せて貰っただけで充分ですよ。」

「大金じゃねぇけど、俺達の気が済まねぇから貰ってくれよ。」

 護衛と食事代にはちょっと高い位の札が封筒に入っていた。有り難く頂戴して、お土産代に充てた。港にも珍しい物が色々あり、泡銭なので買い漁った。

 出国の手続きに行くと、次の出港が3日後の月曜なので役場の出張所は貼り紙だけだった。

 仕方がないので宿を探す。いや、その前に両替だ。直ぐにでも出る雰囲気で船のチケットは売っていたので購入済み、残った大明のお金はほぼ使い切っていた。宿で相談したが、北道の円では受け付けてくれなかった。土日は両替できないので、テント泊になってしまう。

 港から少し離れた海岸に、テントを張れるスペースを見つけそこで2泊。食料はポーチにまだまだ沢山あるので、それ程困らない。二晩ひかりとして楽しむと割り切って、分体を出して光樹(・・)を付けた。

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