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託児所

 時は少しだけ遡り、ひかりが発ってすぐの頃。


 夏果の携わってきた医療関係は、それぞれの領主に引き継がれ、安定した医療を提供出来るようになっていたが、治療費が高額で一般の人には高嶺の花。公立なので、かなり抑えての金額だがそれでも普通は我慢を選択するだろう。

 そこで、夏果は『健康保険』を提案している。国王は採用するつもりなので具体的に準備に取り掛かっている。国民一律で進めようと思ったが、危険と隣合わせの冒険者と、街暮らしの商人では条件が違いすぎるので、各ギルド毎で組合を作り、保険料の徴収や、医療機関への支払いを担う事になった。

 冒険者ギルドは、報酬が高額だったりすることもあるので、口座管理は当たり前だったが、他のギルドにも適用する方向で進めている。


 騎士や役人を除いて全員が何処かのギルドに所属して、健康保険は各ギルドが運営することになった。丁度、農業ギルドが、金融業務を始める事になったので、他のギルドも右ならえで始める事になった。凶悪な犯罪は激減しているが、代わりにコソ泥が増加傾向なので、家に現金を置きたくない人が多く、あっという間に定着していった。


 屋根のある住処が出来て、仕事もあって、安定した生活は、新婚さんを増やし、妊婦さんを増やした。運動会の応援を見ても、小さい子を抱いたお母さんが、また大きなお腹だったりするのが珍しく無いので子供達の数は右肩上がりが続くだろう。気軽に病院に診て貰えるようになったら更に増えるかもしれない。

「かなり出遅れちゃった!」

冬実が頭を抱える。

 もう少し先の問題かと思っていた託児所の問題が切羽詰まってきた。全くの未着手ではないが、何処が責任を持つのかから決まっていない。学校は王が公立にしたので、その延長で公立が良いのか、ギルドが福利厚生的に、面倒を見るのが良いのかで計画は座礁していた。

 更には、子守りをするちょっと年上のお兄さんお姉さんが、学校に通うようになったのも、かなりの影響らしい。折角学校に通う習慣が定着しつつあるのに、子供達の労働力をアテにする環境にはしたくない。

 各ギルドが、金庫室を用意するために、引っ越しや改築等が必要になったので、託児室を設置する事を義務化、保育士は、子育てが済んだ専業主婦に白羽の矢を立てた。結構な希望者が集まったので、生活支援ギルドの所属にして、各ギルドに派遣。交代で休める様にパートのような仕組みで働いてもらう。


 それでもキャパが足りないので、小学校に入る前の1年、アッチの世界で言えば幼稚園の年長さんを、国に面倒見て貰う方向で準備を進めた。将来的には3年保育にして、それより小さい子をギルドで面倒を見る様にする予定。ただ、数年は掛かりそうなので、今の子供達が学校に入っちゃっても、まだ完成しないだろう。まぁ少しずつでも整備していけば良いだろう。


 四元塾でも、託児所関係は気になっていたようで、城下の再開発で空いた土地と、開拓した住宅街の予備スペースに幼稚園のようなモノを計画していたそうだ。対象年齢をどうするかと、保育士?先生?人材の件で苦戦中とのこと。

 ギルドで話し合った内容を提案すると、その方向で進める様にアッサリ決まってしまった。4、5歳の1年間であればキャパ的に問題ないし、もっと小さい子が対象の場合だと、面倒を見るスタッフの負担も大きいがその年齢なら、学校のノウハウを応用で何とかなると見越している。


 細々とした調整なんかで飛び回ったり、道場に通ったりと忙しい毎日を過ごしていた。

「短刀が出来上がる日ね!」

春菜に誘われ全員で鍛冶屋に向かった。オーダーの内容は、道場で借りていた一般的な物のサイズで、魔力を込めた時の耐久性が高い物と言うだけであとはお任せなので、どんな仕上がりか楽しみだった。


 鍛冶屋に着くと、親方と薫が迎えてくれた。

 満面の笑みの二人から、出来上がりは想像が出来た。カウンターに出された大きなトレイには白い布が掛かっていた。親方と視線で最終確認をした薫がその布を外した。

 鞘に納めた状態で、全体がツヤ消しの黒で、所々アクセントで黒光りしていた。鞘を払うと、刀身はガンメタリック。中身も黒かった。オシャレなデザインで、元々サイズも小振りなので、カジュアルな普段着でも悪目立ちせずに、ナンパ避けにちょうど良さそうだった。メインの武器はポーチに入れたまま、程々の戦力をアピールしつつ、街中で浮かずに済みそうだ。

「デザインだけじゃなく、機能も確かめて下さい!」

薫は、同じデザインの鞘を床に並べた煉瓦に渡し、

「結界お願いしますね!」

ハンマーで叩き折・・・れない。煉瓦の方が割れてしまった。

 刀は勿論、切れ味鋭く、試し斬り用の藁束は、良く味の染みたオデンの大根くらいの手応えで斬れてしまった。

 今回も持ち込み素材の買い取り分で賄ってくれて新たな支払いは無し。


 早速ダンジョンで使い勝手を確かめようと思ったが、道場の修行がきっかけで誂えた事を思い出して、元の予定通り道場に通う事になった。


 新たに覚えた系統の練習も兼ねて、子供達が学校に行っている間は道場に通った。魔力はメーターを振り切る強さだし、いつもの武器では魔法を絡めた攻撃も慣れているので、短刀の扱いも直ぐにマスター出来た。短刀使いの先生は、

「見事な刀ですね!魔法無しの刃も、これ以上のモノは王都にも何振りも無いと思いますよ。」

「試してみます?」

春菜が鞘ごと手渡すと、先生はフラフラ

蹌踉めいた。

「どうやら、使用者制限が掛かっているようですね。どれっ!」

真っ赤になって力を込めても刀は抜けなかった。

 鍛冶屋のリクエストで集めた素材の話題になると、

「それを、たったの2日で集めたんですか?」

「ええ、一泊2日ですね。新しい刀でまた挑戦しようと思ってるんですよ!」

「今度は何を作るんですか?」

冬実がニッコリ、

「浅い所で、結構な魔物に会えるんです。深く潜ると、帰り、登らなきゃならないのよね。レアは素材は鍛冶屋さん喜んでくれるから試し斬りには丁度良いと思うんです。」

先生はちょっと困った顔で、

「普通は決死の覚悟で取りに行く素材ですから、そんな片手間っぽく言わない方が良いですよ、人によっては、一生掛けても集まりそうもない素材ですからね!」

お喋りをしながら、短刀に適した魔法の乗せ方を教わって、一日で卒業を言い渡された。

 春菜が通い始めた頃に提案したリハビリ施設が完成、ヒールを教えてている先生が教えながら治療もしてくれるそうだ。単に治すだけより、継続して体調をキープ出来る事を目指すのだろう。ほかも合わせ、道場の関係は順調と言えるだろう。

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