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農協と運送会社

 夕食の時、秋穂は不思議そうに、

「ディアン、見えてたの?」

「うん、なんとなく。」

「前から?」

「ううん、大人に変身出来なくなって、ひかりちゃんのおっぱい飲んでからだと思うよ。」

 もしかしたら、母乳で能力が伝わったのかも知れない。授乳魔法はマスター済みだったので、各自自分に掛けて、お互いに吸いあった。

 春菜を吸った夏果が、浴室で水魔法を試してみた。コントロールは上手く出来ないが、適正が無いはずの水魔法に成功。組合せをかえて全員が水魔法を取得、他は屋内で試すのは危険なので、翌日試す事にしてそれぞれの部屋に帰っていった。


 河川敷で、魔法の実験。全員が、3系統を増やし、計6系統をマスターすることが出来た。急いで家に帰り、今まで成功したことのない魔法にトライ。ひかりが書き写した呪文を確かめてから、スカートの中を脱いでその中に魔法を掛けてみた。が、発動しなかった。光樹(・・)を付ける魔法は、どの属性にも含まれ無いため、6系統をコンプリートしたひかりだけが使えると想定していた。晴れて6系コンプを果たし、チャレンジしてみたが失敗に終わった。

「成功したって、ひかるが居ないと使い道無いから必要ありませんわ!」

秋穂は、涼しい顔で予定していた、農協(的なもの)の視察に出かけた。


 農家さん同士の助け合いって感じの組織で、アッチの世界の農協をイメージしているが、運営のスタイルとかが良く解らないので、コッチのギルドを模して、農業ギルドをスタートさせていた。

 伏丘での発足時は秋穂がリードしていたが、王都に移ってからは殆どタッチしていない。順風満帆とは行かないまでも、農家さんの役に立っているようだ。

 作物によって、労働のピークがズレるので、援農の取り次ぎをしたり、共同の倉庫や大型の馬車で各家での負担を軽くするなどしているそうだ。

「畑も増えて、作物がダブつく心配もしてたんですけどね。」

ギルドマスターは嬉しそうに、

「人口がそれ以上増えていますから、増産してやっとって感じなんです!」

ギルド内で、ノウハウを共有して収穫もグッと増えていた。

「最近は新しい農機具を買いたいと借金の相談が増えてるんですが、無い袖は振れないんでお断りしているんです。」

 ギルドの会費や手数料では、運営費でちょんちょんなので仕方がない。

「会員からお金を預かって、必要な所に、貸付けては如何?」

ギルドとの取り引きや農家さん同志での取り引きもその口座で済ませる事にすれば、カネ目当ての空き巣も入らなくなるだろう。収穫期に纏まった金を手にして、1年で使うってサイクルなので、そういった被害はなかなか無くなっていない。1年間の生活費と来年の苗や種、肥料なんかの必要経費なので、奪われれば死活問題だ。ギルマスをはじめ、職員さん達か喰い付いたので、具体的なルールとかを説明して、実行に移すかどうかは、お任せすることにした。


 倉庫を見に行くと、しっかり管理され、結界で虫や鼠をシャットアウト。各自、家で保管していた頃とは比べ物にならないだろう。結界も上手く張れていて、少ない魔力で済んでいた。パーフェクトな倉庫と言っても過言では無いだろう。

 丁度、音広(おとひろ)から馬車が着いた。大量の作物をどんどん降ろし、あっという間に出ていった。

「街道が整備されて、あんな大きな馬車が走れるようになったんです!」

 少しすると、空の馬車が来て、荷物を積み込んだ。

「あれは、音広に運ぶんです。」

積み込みか終わると、直ぐに出て行った。その後も、大型の馬車が出入りしていた。

「音広の馬車を空で帰さないで、コッチの荷物を積んでは如何です?」

「出荷するギルドが運搬まで責任を持つんです。でもソレがオッケーなら、馬車半分で済みますね!」

色々と調整は必要だが、無理な事では無いだろう。取り敢えず、宿題にして畑を見回った。


 現場の農家さんの声を聞くと、自分達で市場に持ち込んでいた頃と比べ、ギルドが回収するようになって、ラクになったし、荷馬車が必要無くなって経費も減ったそうだ。ギルドの預金の事を話すと、かなり乗り気だった。秋から冬の間、自分達にとっては大金と思える現金を手元に置くのはやはり不安とのこと。

 数件回って、大体同じ感じだった。他には、広くなった分、人手が足りていない家も多かった。住宅街に近い狭い畑と郊外の広い土地と交換して、大体3倍の面積になっているので当たり前かも知れない。植え付け前に耕す作業が先ずは大変らしい、雪が解けたら一斉に始めるので助け合いも難しいそうだ。これも宿題にして、ギルドに顔を出してから家に帰った。


 夕食を食べながら報告して、色々意見を、出し合った。

 大型馬車の片道空っぽ問題に関しては、各農業ギルドの輸送機能を独立させ、一纏めにして、運送会社的な物を作るのがベスト案かな?現実味も充分なので、詳細を纏めてギルドに提案する。

 農家さんの人手不足対策には、現在殆どが木製の馬鋤を使っているが鉄製にするのと、荷馬車が要らなくなった事で余っている馬も活用すればかなりの戦力だろう。鉄は再開発で出た瓦礫から分別したものが多すぎて引き取って貰えなかった物が大量にあるので、材料は問題無い。何時もお世話になっている鍛冶屋は、武器と防具専門なので、農機具を扱う所を紹介して貰う。

 一応宿題は片付いたが、

「もし、金融業務を始めるのなら、しっかりした金庫が必要ね!」

春菜は次の段階の作戦を考えていた。


 数日後、再び農業ギルドを訪れると、金融業務を始める事が決定していて、本部の地下に金庫室を作る相談をしてきた。物理的にも魔法的にも堅牢な壁に結界を連動させる案を既に用意していたので早速提案した。参考にして貰う事にして、輸送機能を独立させる案と、鉄製の馬鋤を提案すると、即採用。少し話を詰めて、運送ギルドを設立する方向に進み、鉄製の馬鋤は、材料があれば馴染みの鍛冶屋で作れるそうなので、材料を供給する事になり、早速運び込んだ。

 ひかりが金属加工のスキルを試す為に、全てキレイなインゴットにしてあるので、直ぐに加工出来るそうだ。


 方向性が固まったので、後はお任せ。ギルドの皆さんが、恵比寿顔で見送ってくれるので、上手く行きそうな目処がたって居るのだろう、秋穂も安心して農業ギルドを後にした。

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