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下校中に

 ひかりが旅立って、分体も居なくなり少し寂しくなった四元家。子供達は平静を装っていたが、

「夏ねえ、お泊り行ってもいい?」

ネージュが夏果に甘えると、エールも春菜に貼りついた。

「リュンは冬ねえ!」

お呼びの掛からなかった秋穂に気を使ったのかディアンが秋穂に寄りかった。

「泊めてあげてもいいわ。」

うまく?ペアリングが出来てそれぞれの部屋に帰っていった。


 翌日から普通に学校に通う。一応2年生なので、近所の高学年のお姉さんが迎えに来る。10人程で集団登校。ディアンは中3に当たる魔法学校の9年生だった事もあるし、御猫様の山では子育ても経験しているので、今更2年生って感じかと思うが、本人はすっかり馴染んでいる。普通に成長していれば、まだまだ子供なので、その方が当たり前なのかも知れない。


 登校するとクラスメイトが集まってくる。

黒曜(こくよう)ちゃん、おはよ!」

 黒髪琥珀眼、お姉さんキャラのディアンはクラスのリーダー的存在で学校に着くとクラスメイトが群がってくる。ディアンでも、オブシディアンでも浮いちゃうので、実母の名前『黒曜』を名乗っている。

 金髪、翠眼のリュンヌは『(おぼろ)』月の意味のリュンヌ、と本来は龍なのでそう名乗っているが、エールがついリュンヌと呼んでしまい、リュンをいうニックネームで呼ばれている。彼女も物知りで一目置かれている。

 赤銅髪で赤眼のエールは、天然キャラと抜群の歌声でアイドル的な立ち位置、『(つばさ)』と名乗っている。男の子人気は断トツで8割位、そのかわり女の子からはあまり好かれていない。

 銀髪碧眼のネージュは『小雪(こゆき)』甘えん坊の妹キャラとスポーツ万能のギャップでクラスの皆んなから可愛がられている。因みに、黒曜以外はリュンヌが命名。


 普段はあまり心配は無いが体育や魔法の授業の時、周りの子に危害を及ぼす事の無いようチカラ加減を注意していた。

 ただ咄嗟の時まではコントロール出来ず、スカート捲りを企てたやんちゃ坊主が殺気に当てられて失神してしまった。保護者からのクレームは必須というシーンだが、先生が丸く収めてくれたようだ。


 下校時間、高学年の子はまだ授業があるので、1、2年生で集団下校。怪しい馬車が後をつけていた。小雪が気付いて念話で皆んなに知らせ、他の子達全員を玄関まで送ってから、街から離れる方向に進んだ。

 人通りが無くなると、馬車は一気に間を詰めて、男が2人降りて来ると、催眠魔法を掛け、崩れるように眠った4人を両脇に抱え、荷台に飛び乗った。

 誘拐犯の詠唱で催眠魔法と気付いていたのであっさり掛かったフリをしていた。後ろ手にロープ縛られていて、目隠しをされてアジトらしい建物に入った。階段を降りる感覚がしたので、地下の隠し部屋とかだろうか。

「よし、そのへんに置いておけ、傷付けんな、特に顔は注意するんだぞ!」

 ソファーの様な感触の所に寝かされ、階段を昇る足音が離れて行き、ガチャリ、ガチャリと扉の音と鍵の音がして静けさが空間を満たした。耳を澄ますと、啜り泣く声がした。ロープを、紙縒り(こより)の様に引き千切って、目隠しを外して、照明魔法で部屋を照らした。

 鳴き声の主は、拐われた女の子で首輪が付けられ、鎖で繋がれていた。他に大人の女性が2人、同じ様な首輪で繋がれぐったりと地べたに座っていた。

「ひかりちゃんなら、便利なスキルがあるのよね。」

ひかりと一緒に同じシチュエーションを体験した黒曜は、首輪と鎖を調べていた。首輪には簡単に外れない魔法が掛かっていて無理に外すのは危険だったので、単純に繋いでいるだけの鎖をそっと切ろうとした。

「遮音結界を張ってあるから、大丈夫よ!」

こゆきが親指を立てると、バキバキバキと鎖が千切れる音が3回。お姉さん達は、空腹と寝不足らしい。真っ暗で時間経過が解らないが、昨夜に拐われ、それから何も口にしていないそうだ。翼はポケットから飴玉を出して3人に配っていた。

「ひかりちゃん達なら、いっぱいご馳走が出せるんだけどな。」

他に捕まっている人が居ないことを確かめ、そっと階段を昇った。ドアノブを炎魔法で溶かす。蹴破るより音がしないので1階の様子を覗いながら作業が出来た。部屋に居るのは2人、手綱をとっていた男と、抱えて来た男のどちらか。もう一人は、首輪を調達に出ているらしい。多分、家畜用の首輪だが、魔法を付加しているので、闇改造か何かだろう。催眠魔法で安心して、呑気に買出し?計画性のない犯行のようだ。ドアが開いて全く警戒心の無い2人を雷魔法で眠らせた。腰の鍵束を拝借、3人の首輪を外し、買出しの男を待っていた。

 5分程で、

「戻りやしたぁ!頼んでいた手錠もウッ!!」

雷で痺れて貰い、早速首輪と手錠を装着して貰った。

 翼は、鳩に変身して自宅に飛んで留守番をしていた秋穂を呼んだ。待っているうちに、ボスらしい男が帰ってきて、さっきのリピートの様に感電してもらった。

 秋穂はギルドに報告してから駆け付けた。さて拷問かとアジトに入ると、首輪と手錠の誘拐犯達はげっそり、遠い目をしていた。

「秋ねえ、他に2つアジトがあって3人ずつ居るんだって。あとね、拐った人は奴隷オークションで売るって言ってたよ。次のオークションは明日の夜12時から、ココだって!」

3箇所マークが付いた地図を見た秋穂は、

「あら、素直に教えてくれたの?」

朧はニッコリ笑い、

「初めはね、あんまりお話ししてくなかったんだけどね、剣とか盾で遊んでたら、急に親切に教えてくれたよ!」

辺りには、折れたり曲がったりした剣や半分溶けた盾、爪で引き裂いた鎧等が散乱していた。

「臭うわね。」

失禁した男を浄化し、騎士隊の到着を待った。

「お姉ちゃん、今度殺したら流石に叱られるから、程々にしようね!」

朧がニッコリ、曲がった剣を真っ直ぐに戻した。誘拐犯達は、我先にと奴隷オークションや人身売買の闇ルートの事を話出した。

「他に言い残す事は無くって?」

既に洗いざらい吐いていたらしく、苦し紛れに商店街の特売情報や自己紹介をしていると騎士隊の馬車が到着。騎士に縋るように立上り、護送用の鉄格子馬車に一目散に乗り込んでいた。

 冒険者登録の無い子供が活躍しても一銭にもならないので、4人が誘拐されて、秋穂が助けて一緒にいた3人も救出ってシナリオで木綿子が処理してくれていた。かなり治安が良くなって安心していたが、すこし前までは家の手伝いで、拐われる暇も無かった子供達が狙われるようになった、新しい生活に合わせた治安維持が必要なのかも知れない。

 他のアジトは騎士隊が制圧したが、オークションは主催者が危険を察知したようで開催されなかった。ただ、中止を知らずにやって来た買い手の尾行に成功し、そこから辿ると、黒幕は殆ど居なくなったと思っていた旧制度の甲階級冒険者の生き残りだったようだ。今度こそ打留めであって欲しいと願うが、また何処かから湧き出る方を予想する方が賢明だろう。

 今回の報奨金は、子供達のリクエストで、学校の図書館に寄付することにして一件落着にした。


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