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第12話 鮫の次は幽霊船……というかこいつが本命だったな

「いっきまーす!」


 船員たちにロープで吊るされたエクセレンが、ぴょいーんとアンデッドシャーク目掛けて飛んでいく。

 マジックミサイルを撃って軌道修正して、鼻っ面を棍棒でぶん殴った。


『ウグワー!』


 アンデッドシャークがのけぞった。

 ロープで振り回された遠心力が掛かっているから、エクセレンの腕力や体重以上の威力があるな。


 船員たちに引き戻されるエクセレンに、怒りを燃やして襲いかかるアンデッドシャーク。


「お前の相手は俺だあっ!!」


 俺が吠えると、アンデッドシャークはギョッとしてこちらに向き直り、攻撃を仕掛けてきた。

 こいつを盾で弾く。


「近づいてきた! えいっ!!」


 俺の横からエクセレンが顔を出して、棍棒でアンデッドシャークを殴る。

 めちゃくちゃに殴る。


 鮫はエクセレンをどうにかしたいのだろうが、残念、お前の目の前には俺がいるのだ。

 俺と相対している時によそ見は許さんぞ!

 それがタンクの技というものだ。


 何回か棍棒で殴っていたら、アンデッドシャークは『ウグワーッ!』と発して水中に沈んでいった。


「やりました!」


「累積ダメージかな? 鮫は攻撃が効いてるんだか効いてないんだかわからないな」


「神様が言うには、ボクの攻撃は当たればダメージが通るそうです。勇者補正とか」


「俺の天敵じゃないか! 凄いなあ!」


 この要領で、船主に指示を出してもらい、襲われている船の前にスイーッとシーモンキー号を割り込ませてもらう。

 小型の船なので小回りが利くのはいいな。


 そしてアンデッドシャークを俺の盾に引き寄せ、これをエクセレンが、今度はロープつきトマホークを投げては回収し、投げては回収して仕留めた。


「見ろよあの女! なんて凄まじい野蛮な戦い方をするんだ!」


「この世のものとは思えねえぜ……!!」


 これは勇者に対する批評ではなくない?

 まあいいか。

 勝てばいいのだ。


「っていうか、なんであの小さい船が沈まねえんだ!?」


「何回も鮫の突撃を食らってるのに揺らぎもしねえ……」


「あいつだ! あのタンクが全部止めて、あいつが鮫を受け止めると、船が揺れないんだ……」


「まだタンクなんていたのかよ……」


「いや、あれが本物のタンクなのか……!?」


 エクセレンが、周囲の船から聞こえてくる声を耳にした後、嬉しそうな顔を俺に向けた。

 むふーっと鼻息を吹き出す。

 なんだなんだ。


「マイティも凄いんです! みんなやっと正当な評価をするようになりましたね!」


「そうかねえ? だが、お前さんが喜んでいるなら何よりだぜ! ほら来た!」


 海から飛び上がったアンデッドシャークが、俺の盾に向かって全身で体当たりをかましてくる。


「捨て身か! いいぞ! だがな、どんな攻撃だろうと受け止めて、後ろにはちょっぴりの被害も出さない。そいつがタンクだ! だからこいつは!」


 自ら甲板ギリギリまで進み、ぶち当たってくるアンデッドシャークを弾き返す。

 反動は足腰で吸収して、平らにしながら足元へ流す。

 だから、こんな小舟だって小揺るぎもしない。


「ダメージは、ゼロなんだ。俺も、船もな!」


「ほりゃーっ!!」


 そんな俺の肩を蹴って飛び上がったエクセレンが、ロープに結んだミノタウロスアックスを振り回す。

 回転した刃が、アンデッドシャークの頭に突き刺さり、そのまま前半身を斜めに叩き切って通過した。


『シャアアアアアク!!』


 断末魔を上げながら、水面に没するアンデッドシャーク。

 俺とエクセレンでハイタッチだ。


 だが、だが、状況はもちろんこれで終わりじゃなかった。

 というかむしろ、アンデッドシャークは尖兵に過ぎなかったのだ。


 空が急にかき曇り、しとしとと雨が降り出した。

 稲光が降り注ぎ、雷鳴が轟く。


「来たぞ」


 誰ともなく呟いた。

 何が来たのか、理解していない者はこの場に誰もいない。


 昼だというのに、空は真っ暗だ。

 雨が降り注ぎ、風が吹き、嵐の只中にあるような状況になっている。


「来るぞ来るぞ来るぞ! やばいやばいやばい! おい、帆を下ろせ! 体を固定しろ!」


 船主が叫んだ。

 水夫たちは練習をしてたようで、テキパキと動いて帆を畳む。


「お、おいあんたら! 幽霊船は船を吸い込んで食っちまうそうだぞ! 体を固定しろ! 海に投げ出されるぞ! あんたらは金属鎧なんか着てるんだから、海に落ちたら死ぬぞ!」


「いや、問題ない」


 俺はどっかりと、大盾を甲板に下ろした。

 盾と船の揺れを同化させるイメージ。

 よし、なんとなくイメージを掴んだ。


 俺にとって初挑戦ではあるが、なぜかやれると実感できる。

 盾を通じて一体となったこの船を、まるごと盾とみなして……船を吸い込む? その力をガードできるんじゃないか。

 そんな気がする。


「来たあああああ!!」


 誰かが叫んだ。

 幾本もの稲妻が海の一点に降り注ぎ、周囲を真っ白に照らし出す。

 それが止んだ瞬間、巨大な黒いシルエットがそこに存在していた。


『やあやあ諸君! 吾輩だ! 吾輩が来たぞ! そう、ガイスト船長だ! 世界の海を股にかけ、今や偉大なる魔王様のご加護を得て海の支配者となった、キャプテン・ガイストが帰ってきたぞ! 讃えよ! 拍手喝采を!』


 舳先に立つ男が、両手を振り上げる。

 

 そこに稲光が一条閃き、ガイストと名乗った男とその足場になったモノを照らし出した。

 なるほど、こいつは……バカでかい幽霊船だ。


「ガイスト船長だと……!? 冗談きついぜ……!」


 船主が呟いている。


「知っているのか?」


「知ってるも何も……。海に暮らす人間なら知らない奴はいないさ……! ついこの間まで暴れまわっていた、史上最悪の海賊だよ……!! 捕まって縛り首になるまでの間、十年で二百隻の船を沈め、世界中の港町に火を放って略奪をした、とんでもない大悪党だ……!! 確か、処刑の時に死体が消えたと聞いたが……」


「悪い奴ですね!! やっつけましょう!!」


 おお、エクセレンが燃えている。

 俺も同じ気持ちだけどな!


パーティー名『エクセレントマイティ』

ランク:C

構成員:二名


名前:エクセレン

職業:エクセレントファイター

Lv:14→15

HP:145→156

MP:88→97

技 :魔技ミサイルスピン クイックドロー バックスタブ パイルバンカーブロウ

エンタングルブロウ

魔法:マジックミサイル(中級):派生ドリルマジックミサイル(下級) ヒール(下級) ライト(下級)

覚醒:シャイニング棍棒

武器:鉄のナイフ 鉄のトマホーク トゲ付き棍棒(覚醒) ミノタウロスアックス

防具:チェインメイル



名前:マイティ

職業:タンク

Lv:86

HP:1200

MP:0

技 :ガード強化(特級) カバーガード(特級) エリアガード(特級)

   マジックガード(特級) マインドガード(特級) パリィ(特級)

   ガードムーブ(特級) ヘイトコントロール(特級) 【NEW!】マッチング(初級)

魔法:なし

覚醒:なし

武器:なし

防具:熟練のプレートアーマー、熟練のビッグシールド


幽霊船出現。

本番であります


お楽しみいただけましたなら、下の方の星をスルッと増やしていただけますと幸いです!

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― 新着の感想 ―
[良い点] 面白い。これに尽きる。 常にポジティブな思考で、行動していくのに爽快感を感じます。
[良い点] 舟にタンク……つまりタンカーか(違います
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