第七話 暗雲にさす希望の銀弾
バリケードが決壊し、少なくはない数のREM達が屋上へと雪崩れ込み今スピネルはまさに絶体絶命といえる状況にあった。
しかし彼女は諦めず、REM達に対して発砲を繰り返す。
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およそ30分ほど戦い続けただろうか、残弾も尽きかけ、本当に終わりが近づいてきて来た。
周囲には大量のREM、生き延びていた彼らもまた、今は異形へと堕ち果てた。
「そろそろ限界かしらね。」
と、弱音を漏らす程度には彼女も疲弊し、コツ…コツ…と死神の足音が聞こえるようだった。
いや、聞こえる、粘着質な奴らのものではない、軽く乾いたそれは、まさに彼女にとっての希望の足音と言えるだろう。
そして引き金は引かれ、連続する複数の銃声が響き渡った。
「早くこっちにこい!」
と、声が響くまごうことなき人の声、異形を打ち抜き屋上からの脱出口を作り上げた彼は、今この瞬間も異形を倒し続け、時間を稼いでいる。
何を迷うことがあろうか、スピネルは、疲れのたまった足を無理やりに動かし、彼の方へと駆け出していく。
一歩、二歩…三歩、踏み出すたびに速度を増し、彼女は駆ける、生き延びるために。
そうして彼女はたどり着いた。
「ハァ…ハァ…何とか、間に合ったわ。」
疲れを露わにして彼女は溢す。
「休む暇はないぞ、此処までに見つけたREMは全部倒してきたが、それですべてとは思えねぇ、それにここから出なくちゃあなんねぇ、あと少し、行けそうか?」
そうフギンは問いかけながらも、スピネルの腕を取り、階下へと向かって移動を始めた。
「戦闘は難しいけど、歩くくらいならできるわ。」
と、スピネルは答えるが、その声音に覇気はなく明らかに弱っているのが見て取れた。
(この様子じゃあ確かに戦闘は無理だろうし、走るのも無理か…仕方ない)
そう考えたフギンは左手に持っていた銃をしまい、スピネルの腰に手をまわし米俵を持つような形で肩に担いだ。
「ちょ、フギンさん!何を!?」
「今のお前の状態だと走ることもできないだろ?じゃあこうした方が早いし安全だ、心配すんな、こんくらいなら速度に影響は出ない、そろそろ行くぞ、舌噛むなよ!」
と、フギンは言うと、スピネルが何かを言う前に凄まじい速度で駆け出した。
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フギンが走り始めて数分後、行きにかかった時間と比べてもとても早く、すでに出口の光が見え始めていた。
希望のままに、彼は走る速度をさらに上昇させ、そして脱出に成功した。