はじまりは死臭とともに
初投稿です。
戦場の死神と呼ばれる男がいる、奴はフリーの傭兵であり数多の戦場において屍山血河を築き上げたという恐ろしい男だ。
この物語はその男、マカリウス・K(knell)・フギンの苦難と抗いを記したものである。
死臭、今は嗅ぎなれたその臭いがフギンの鼻を突き抜ける、今しがた頭を打ち抜いたばかりの男が、恐怖の表情のまま倒れ伏す。
周囲には敵勢多数、しかしながらその兵士たちは足が震え、まともに銃を構えられてすらいない、素人なのかとすら思うほどの醜態だが彼らはさる国の正規軍であり、その練度は相当のものであったはずだ。
しかしながら彼らは硬直したまま動かない、あの男、戦場の死神たるマカリウス・K・フギンによる蹂躙を目にしたならばそれは当然と言える。
彼による射撃は一切の無駄なく、殺意すらもなく、ただ淡々と目の前の命を刈り取るのだから、その様はおよそ人間らしいものとは言えず、一種の狂気すらも漂わせていた。
彼らが優秀な軍人であったとしても、いや…優秀な軍人であるからこそ、自らが戦場の死神に対抗することなどできないと、そう理解してしまったのであろう、だからこそ彼らは動くことはなく、戦場には不可思議な静寂が訪れていた。
静寂が破られる、戦場の死神が動く、もはやこの戦場に用はないと告げるように、つまらないと嘲るように、彼は戦場を立ち去った。
緊張の糸が切れたのか、軍人たちはフギンから敵意が消えると同時に地に伏す、撃たれたわけではない、ただ圧倒的な強者が去ったことによって彼らの本能が肉体の制御権を投げ捨てたのだ、しかし彼らの表情はまるで重圧から解き放たれたかのように安らかなものであった。
死神は戦場より帰還し、依頼主と思わしき人物と対話する。
何か気に食わない事でもあったのだろうか、依頼主と思わしき男が死神に対し、罵声を放つ、しかしながら死神はそれを気にも留めず。
「依頼は完遂した、不満点があるならまた依頼するか別の傭兵を雇うんだな、それでは、もう二度と会わないことを祈っている。」
とだけ言い残し、その場から消え去った。
時刻は深夜、すでに辺りは暗く、周囲には人影はない。
「はぁ…いつまでこんなことを続ければいいのやら。」
戦場の死神であった男は表情を暗く落とし、自嘲するようにそう言った、それは強く、しかし脆弱であり、今の彼が死神と恐れられる男であるなどと、誰も信じはしないだろう。
その青年は肩を落とし、自らの城へと帰還するのであった。
~実際のところ、人の本性というものは本人にさえも判らない~
多分エタりません