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弱体化した二人

「・・・ボクが来たからにはもう安心、だったか?」


 オーソンが思わず呟いたその台詞に、ネロとプティの二人は顔を背けていた。

 彼女達がその台詞にそんな気まずい様子を見せていたのは、彼らの目の前の状況にその理由があった。


「おい、こいつら思ったほどじゃないぞ」

「あぁ。最初は面食らったが・・・慎重に対応すれば問題ない!全員で追い詰めるぞ!」


 彼らの視線の先には、今だに健在な黒葬騎士団の面々の姿が。

 意気を上げる彼らに対して、オーソン達は壁際に追い込まれ息も絶え絶えといった様子だ。


「なぁ、一つ聞いてもいいか?」


 その状況を作り出した原因は、はっきりしている。

 オーソンはそれを尋ねようと、傍らのネロとプティへと視線を向ける。


「な、なんだよ!女の子には、秘密が一杯なんだぞ!」

「そ、そうだよ!エッチなのはいけないと思うな!」


 その言葉にネロとプティの二人は、ビクッと肩を跳ねさせると激しく動揺する。

 彼女達はまるで何かを誤魔化すように、オーソンに対して激しく食い掛っていた。


「違ぇよ!・・・んんっ!お前らよぉ、何か前より弱くなってねぇか?」


 彼女達が口走る物騒な言葉を慌てて否定したオーソンは、一つ咳ばらいを挟むとその核心を尋ねる。

 つまり、彼女達が以前彼と戦った時よりも弱くなったのではないかという疑問を。


「っ!?・・・し、仕方ないじゃん!おとーさん、皆を助けるためにあのしょじょうを使いきっちゃったんだから!ボク達の分は残ってなかったの!!」

「だ、駄目だよネロ!それはきぎょーひみつだから言っちゃ駄目って、おとーさんが!」

「え、そうだったっけ?じゃあさっきのはなし!!嘘だから、嘘!」


 オーソンの言葉に追いつめられ、壁際に追いやられてはダラダラと汗を流す二人は、やがて吹っ切れたように叫びだす。

 その内容は、彼女達が十分に強化されていない内情を暴露していた。


「おとーさんって、ユーリの事か?あいつの何が、お前らが弱くなった事と関係があるんだ?」


 秘密にしないとと口にして、それを必死に誤魔化すことでよりその秘密の暴露を強固にしているネロとプティ。

 しかしその荒唐無稽な内容に、オーソンは首を捻るばかりでさっぱり理解出来ないという様子を見せていた。


「ほっ・・・な、何とか誤魔化せたみたい」

「はー・・・オーソンが馬鹿で助かったなー」

「だ、駄目だよネロ、そんな事いっちゃ!オーソンさんは、その・・・少し頭に筋肉がいっちゃってるだけなんだよ!」

「・・・ねぇプティ、それってボクより酷いこと言ってない?」


 オーソンの様子に、ほっと胸を撫で下ろす二人。

 彼女達は顔を見合わせながら、子供らしい無邪気さでオーソンの事をボロカスに貶めていた。


「あぁ?お前ら、こっちが黙ってりゃいい気になりやがって・・・大人を舐めんなよ!!」

「「きゃー!!」」


 額を合わせて囁き合う二人の言葉を、オーソンも聞き逃しはしない。

 彼はこぶしを振り上げては彼女達に迫り、それに彼女達は悲鳴を上げて逃げ惑う。


「こいつら・・・ふざけているのか、戦闘中だぞ?」

「構う事はない、やってしまえ!!」

「おぉ!」


 しかし今は、戦闘の真っ最中なのだ。

 彼らが見せる、そんな隙だらけの姿を敵が見逃してくれる訳もない。

 案の定、敵である黒葬騎士団の面々が彼らを狙って牙を剥く。


「『そこで止まれ』!オーソン、何やってるの!戦闘中なのよ!?」

「お、おぉ・・・悪い」


 迫る敵の刃を、レジーの鋭い声が止める。

 彼女に叱られたオーソンは、申し訳なさそうに頭を掻きながら戦闘へと復帰していく。


「ぷぷぷ、怒られてやんのー」

「ふ、ふふふっ・・・だ、駄目だよネロ、笑っちゃ」


 そんな彼の姿に、ネロとプティの二人は口元を押さえては笑い声を漏らしていた。


「二人もよ!!貴方達も遊んでないで、もっと真面目に戦いなさい!!」

「うっ!?わ、分かったよ!ちゃんとやればいいんでしょ、やればー」

「はわわっ!?ご、ごめんなさいレジーさん!」


 しかしレジーの怒りは、オーソンを叱っただけでは収まらない。

 自分達へと向いたその矛先に、ネロとプティはそれぞれに反省を示すと、慌てた様子で戦線へと復帰していく。


「・・・目障りだな」


 そしてその一連のやり取りは、ある男にしっかりと見られていた。


「『動くな』!オーソン、右手から来てる注意して!ネロは前方の警戒!プティはもっとちゃんと狙いを絞って!!」


 その男、マルコムの視線の先には的確に指示を出し、戦線を支えているレジーの姿があった。


「やはり、初めに潰すならここだな」


 マルコムは一人、戦線からそっと離れると死角を回り、レジーの背後へと迫る。

 元々押されている戦況に、それぞれの相手に手一杯なオーソン達はそれに気付かない。

 そんな彼らを支えるのに必死なレジーもまた、それを気付くことはなかった。


「これで、チェックメイトだ」


 その声は、レジーからすれば陰から湧いて出たように突然響いた。


「―――えっ?」


 それに振り返った彼女が目にしたのは、残酷な表情で得意げに笑うマルコムと、自らに迫る刃の姿だった。

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