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20,ヒーローは、強くて正義感に溢れてて優しくておっぱいの大きい美人さんでした

 


 って。ちゃんと注意してたハズなのに!


 冒険者ギルドの建物に入る前から、絡まれちゃうってどういうことなんですかね?


「おじょうちゃん、冒険者ギルドに依頼があるなら俺が聞いてやるよ。だから、なぁ? ちょっとそこの酒場で、俺の膝の上で話をしようじゃねぇか」


 冒険者ギルドの周囲には当然だけど冒険者たちがたむろっている。

 それはリーダーが次に受ける依頼を探しにいっている間、外で待っているパテメンだったり、依頼を完了して報告&納品をリーダーがしてくるのを待っているパテメンだったりする。


『冒険者ギルドの建物に一度に入れるのは各パーティ2名まで』これが、王都の冒険者ギルド本部の不文律なんだそうだ。


 そうでもしないと、身体が大きくて扱う武器も大きな冒険者でギルドがいつもすし詰め状態になって身体が当たっただの押されただのと喧嘩になることが多いからなんだそうな。

 ヘンドの街の冒険者ギルドよりずっと登録者の数が多いからこそなんだろうなー。


 という訳で、ギルド本部の周りには、そんな建物内に入れない冒険者たち目当ての酒場や食事処が昼夜を問わず営業している。そして大抵がギルド本部で手続きを終えたリーダーが見えるようにオープンテラスで道にテーブルがあったりする。

 ……うん、ごめん。ちょっと嘘ついた。

 オープンテラスなんてオシャレ度はゼロだ。古ぼけて傷だらけの木のテーブルと椅子が道に置かれている。

 そこへ、どこの店から買ってきたのか分からない酒やツマミを持ち寄って時間を潰しているのだ。


 私は今、そんなオシャレ度ゼロ、清潔感ゼロのオッサンに

 そう下品な笑いを上げながら私に声を掛けてきた大男に見覚えはない。

 朝っぱらから、何を言っているんだろう。

 寝言は寝て言え! とは正に今使うべき言葉だな。うん。


 頭の悪そうなトゲトゲだらけの肩当てや、安っぽくてまだ硬そうな革の鎧を見る限り、私より冒険者歴が長いってことはなさそうだ。

 とりあえずある程度長く冒険者家業を続けているAランク以上ではないと思う。その位のランクになると、さすがにOFFの時でも動きが違うし見分けがつく。

 とはいっても、私もこの王都のギルドでお世話になり始めてまだひと月足らずだし、Aランク以上の人の顔を全部把握できてるってことはない。

 最初に王都への移動の手続きとお師匠様とパーティを組むって申請をした時以外は、ずっと図書室で、お師匠様が用事を済ませるまで資料読んで過ごしていたしね。


 Sランク冒険者ゼンがパーティを組んだという話は聞いたことがあっても、それが誰となのか知らない人は多いんだろう。

 それか、Aランク冒険者ミミミという名前までは知ってても、それが私だと分かんない可能性だってある。


 多分、この人はBランクでもないだろう。初心者から、あっという間にそこまで行ける人もいるけれど、そういう人は実績を稼ぐために忙しくしてて、こんな場所で昼間っからお酒飲んで女の子に絡んだりしていない。

 DかFあたりかな。Eでこんなに態度デカかったらそれはそれで大物っぽい。


 どう対応するべきか、うんうんと悩んでいると大男が近づいてきて私にむけて無遠慮にその手を伸ばしてきた。

「おい、女。話を聞いてやるって言ってるんだ。早くこっちに来い!」

 いや。触んないでよ。 

 思わず身体が半歩動いて避けると、自分が目測を誤ったとでも思ったのか不思議そうに空振った手を見ていたが、後ろから仲間の笑い声に揶揄されて「うるせぇ!」とか返していた。うむ、まごうことなきゴロツキ共だ。


 だいたい、この人って絶対に膝の上に乗るだけじゃ済ませるつもりないよね。いや、乗りたい訳ないし、絶対に乗ったりしないけど。これがお師匠様なら……アリだな! あの綺麗な顔が間近にあるとかかなりオイシイんじゃなかろうか。

 残念ながら、お師匠様は絶対に言ったりしないだろうけど。


 というか私はギルドに依頼に来た訳じゃ……あれ? 今日のパテメン募集っていうのは依頼に入るのかな。


 まぁいいや。どちらにしろこの人に相談するつもりないんだしとか考えながら、私はギルド本部の扉に手を掛けた。


「おい、女! 俺を無視するなって言ってるんだ!! 耳が聞こえないのか」

 大男が息まいて手を振り翳してきたのが視界に入る。

 ギルド本部に入っちゃえば安全だしって思ったスルーしてたんだけど、さすがにこのまま本部内までついて入ってこられても困る。

 これから、お師匠様FANクラブのメ……、もといパテメンを募集しようっていうのに、お師匠様の評判が落ちたらどうしてくれるんだ。一番弟子としては不快不本意としか言いようがない。

 仕方がないから、ちょっと相手するかと振り向く。


 そこに、ゴウッと強烈な風が渦巻く。


「うぎゃあっ。俺の拳がぁぁ」

 私を殴りつけるつもりだったその拳は無数の切り傷が刻み込まれ、そこから真っ赤な血が噴出していた。

 飛び散った鮮血が、石畳に小さな赤い水溜まりを増やしていく。ひえぇぇ。すぷらったー、スプラッターな光景だ。


「こんなに可愛らしい女性を力づくで言うことを聞かせようとするなんて。無粋すぎではありませんか?」


 シン、と静まり返ったその場に不似合いな愛らしい声が、私と大男の間へと割って入る。 

 いっそ白といってもいいんじゃないかと思う淡いグレイの髪は少し高い位置で編みこまれハーフアップにされていて、緩やかなカーブを描きながらその形のいい顔の横で片側に束ねて編まれている。

 ふんわりとした黒のベアトップから続く、艶やかな褐色の背中とおへそは丸出しで、その脇のラインからはみ出す暴力的なバスト横のとこのラインは破壊力バツグンだ。全人類憧れの痩せ巨乳か。

 ふわふわしたスカートは、アラーニェの衣に似てるけれど、真珠色ではなく光沢のある黒。真っ黒じゃなくて、光の加減でダークシルバーに見える黒いスカートの上に、金色のサッシュが腰に巻かれている。

 ん? 動いた拍子に艶めかしい白い何かがちらちら見える。

 スリット入り!? というより、長い布を巻いているだけなのかも。少しだけベルお姉さまの服を思い出す。あっちはもっとカラフルだし薄地で軽やかだったけど。

 一つだけ言えることは、どっちの服装もエロいということだ。拝んどこ。


「大丈夫でしたか?」


 振り返った女性の顔は目元に泣きぼくろまであって赤いぷっくりとした唇も艶々で、もっとずっとエロかった。いや、エロ可愛かった。

 うわーうわー! エキゾチックな独特の雰囲気がたまらんっ。

 顔ちっちゃい、髪の色より少しだけ濃いグレイの瞳はめっちゃ大きい。いや、大きいのはその真っ白く盛り上がった双丘ですね。

 日本でアイドルやってる女の子よりずっとずっとハイスぺ可愛いんじゃなかろうか。


 掛けて貰った声まで可愛くて思わず見とれた。やばいやばい。凝視するとか、女子というより人としてどうなの、私。


「助けてくれてありがとう。助かりました」

 まぁ自分でなんとか出来はしたと思うけど、助けてくれたのには間違いないもんね。あんな大男が拳を振り上げている前に出てきてくれるなんて、優しくて勇気のある正義の人なんだなぁ。しかもエロ可愛いときたもんだ。天使かな?


「うふふ。何事もなくて良かったです。ギルドに向かわれるなら私も向かうところでしたし、ご一緒しましょう?」

 おう。さらにエスコートまでしてくれちゃうのか。

 くぅ。女性冒険者として、エロ可愛いアイドル冒険者として、なんというパーフェクトさか。 


 私はにっこにこ笑顔になって、差し出されたほっそりとした手に、自分の手を重ねた。




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