15,お師匠様と一緒におでかけの時間ですよ。これってやっぱりデートですよね!
ホワイトデーに、上げるはずやった……(白目
「防御力UPからのぉ攻撃力UP! ついでに私にも、防御力UPと一応攻撃力UP!」
あれから何度も、お師匠様の後をついてクエストに出かけた。
今日もこうして教会からの依頼でゴールデン・アンゼリカていう花の蕾の採取依頼を受けている最中だ。
まぁ、その花が生えている場所が問題なんだけど。
「地龍の息に気を付けろよ」
そう私に声をかけると、お師匠様は目の前の地龍に向かって突進していった。
それは、地龍の背中で100年に一度、たった一週間しか咲かない花の蕾なんだってさ。
アンゼリカって、あっちの世界でもエリクサーの材料って言われるほど、効果の高い薬草だったと思うんだけど、こっちの世界でもそうなのかな。
しかも、名前に”ゴールデン”って付いているし、生えている場所が場所だし。
きっとすっごい薬の材料だったりするのかも。
「花には絶対に傷をつけるな」「開いてしまったら意味がない」「摘んだら三日以内に製薬せねばならん(その日のうちに持って帰れ」「この機を逃すと次はまた100年後だ。持った帰れるだけ、大量に持ち帰れ」
依頼者である教会の薬師からは、好き勝手にいろいろな制約を伝えられてるってお師匠様は言ってたけどさ。
でもこれ、無理ゲーでしょ。
「どうやったらこんなに暴れる龍の背中から花の蕾を傷つけずに大量採取できるっていうのよぉぉぉ」
叫びながら地龍の尻尾の攻撃を避けた。
息は、戦闘が始まる前に何度もお師匠様から聞かされていたように、吐き出す前に大きく吸い込む動作があるのと吐き切った後は、地龍の動きにノックバックが出るのでこの時に攻撃に出るのだそうだ。
まぁ私は基本、攻撃には参加せずに死なないことに重点をおいて逃げ惑うことがお仕事になっているんだけど。
そうして自分が傷を負わないでいつつ、お師匠様へ掛ける支援魔法が切れないよう気を付けること・もしお師匠様がダメージを受けたら薬を用意することになっている。
つまりは、轟雷団にいる時とやることは一緒だ。
まぁ戦う相手の強さのレベルが段違いなんだけど。ひえぇ。
今も予備動作なしに襲い掛かってくる尻尾の攻撃を寸でで避けたところだ。
視界の端で、先ほどまで私が隠れていた岩が一撃で粉々にされて吹っ飛ばされていく。
破片と土埃が飛び散り、視界が悪くなった。
ここは西の大渓谷と呼ばれる荒地の最奥だ。
そこを住処としている地龍が、現在、お師匠様と私が戦闘している相手だ。ちなみに小さな山ほどのサイズである。
「ゲホッゲホッ。くっそムカつく大蜥蜴だこと」
地龍はゲームに出てくるような胴の太い西洋風ドラゴンとも東洋風の蛇っぽいものでもなく、手足の長い大イグアナそっくりの巨獣だった。ちなみに色だけは地属性らしく土色でゴツゴツしてて岩でできているようだった。
そんで、イグアナだったらあのたてがみっぽいトゲトゲの根元に、ゴールデン・アンゼリカは生えているそうだ。
でも下から視認することはできない。つか私にはなんか埃っぽいようにしか見えん。
そんなある意味不遜なことを考えていたからだろうか。
お師匠様ばかり見ていた地龍が、その金色の瞳を私に向けた。
ギロリ。そんな擬音が聞こえるような気さえする、その強い瞳に射貫かれて、私は全身に震えが走った。
「ぎゃぁぁぁぁ」
モチロン、全力で走りもした。
お師匠様が「馬鹿、前に出てくるな」とかなにか叫んでいる気もするけれど、本能が逃げたがっているんだ。足を止めて隠れるなんて、ムリッ。絶対!
ぎゃーぎゃー叫びながら地龍の息攻撃を間一髪で躱す。
嘘。ちょっと掠った。
でもドラゴン装備の鎧はさすがだった。跳ね返してた。スゲー。
ただ衝撃で息が止まり、さらに言うと、走っている方向からずれた向きへ足が滑っていく。ヤバい。このままいくと岩肌に激突する。
「爆炎」
お師匠様の声と同時に起きた、激しい爆発が地龍の左目を焼いた。
!!!!!!!
さすがに全身巌のような地龍も、眼球はフツーに柔らかな水晶体のようだ。
ゼラチン質のそれが、青い血と一緒に辺りに一面に飛び散った。
グロいグロいグロいグロいグロいグロいグロい
泣きそうになりながら頬にこびりついたそれを手で払いのける。
ううう。そうだ。轟雷団ではいつも皆に守られているばかりだったけど、いまはお師匠様と2人きりのパーティなのだ。
私だってやらなくて、どうする。
ヒントは貰った。
岩のような鱗で覆われた体躯には歯が立たなくとも、柔らかいそこになら、魔法は通用するのだと。
「水刃!」
痛みに開いたままになった口の中へ、それを全力で放出した。
「おい、希少なゴールデン・アンゼリカを育むことができる地龍を殺そうとするなよ」
ううう。だって、まさか怪我まではOKでも殺しちゃいけないなんて知らなかったんだもん。
教会から渡されていたという万能薬で一命を取り留めた地龍が立ち去っていくのを見送ると、苦笑混じりにお師匠様からお叱りを受けた。
私の一撃は、前回のあの時みたいに魔石のど真ん中を貫くことはできなかったけれど、魔石と地龍を繋ぐ特別な場所を撃ち抜いていたようだ。
外見的にはほとんど傷を残さないまま、その場にいきなり倒れこんだ地龍に、お師匠様は大いに焦り、慌ててフツーの回復薬を使いまくり完全ではないものの治療を施したうえでいきなり暴れられては困ると捕獲用の拘束をした。
そうしておいてから、取り出したエリクシルを使い「これが効かなかったら、どこか遠いところまで逃げるしかない」などと遠い目をしていた。
ちゃんと効いた。よかった。今は衰弱したのか寝ている。いきなり暴れられなくて良かったとホッとしているトコロだ。
お師匠様が地龍を治療している間に、私が採取したゴールデン・アンゼリカの納品期限のこともあるし早く帰らなくちゃいけないのは分かっていても、地龍が起き上がって立ち去るまではお師匠様は気が気ではなかったらしい。
本当は、口の中に麻酔薬入りの肉を放り入れて、眠らせてから拘束し、ゴールデン・アンゼリカを採取した後は拘束を解き放つ、というのが正しい手順だったそうだ。
なのに、私は地龍を興奮させまくった挙句に、口から攻撃を加えてしまった。
完全にダメダメである。
「捕獲の手順について説明しなかった俺が悪いんだがな。まさかお前に地龍を倒せるとは思ってもみなかった。すまない。お前の実力を見縊っていた」
まさかお師匠様から頭を下げられるとは思わなかったので慌てて両手を振って否定した。
「い、いえ! ちゃんと、『支援魔法を掛けた後は隠れてみているように』と言われていたのに、見つけられて慌てた私がいけないんです。それに、私もまさか倒せちゃうとは思わなくって。大蛸の時はまぐれだったし。今回も、その、まぐれです」
「大蛸? おまえがAランクに上がったダンジョンボスか。あれは、おまえが?」
お師匠様の顔に驚愕って書いてあるみたいだった。
まぐれでしかないから恥ずかしかったけど、ちょっと自慢したい気持ちもあったからあの時のことについて説明してみた。
「地獄の大蛸を、さっきの水刃で一撃、ね」
私が説明をし終えると、お師匠様が何か悩むように顎に手をやったまま動かなくなった。
ううう。如何にもまぐれ過ぎて褒めようがないとか。お叱りポイントだらけで呆れているのとどっちだろう。
そのどちらでもなく、お師匠様は私に向かってこう聞いた。
「お前、その魔法は継続して使えるのか?」
ん? そんなの、やったことないなぁ。
首を振って「わかんないです」と伝えると、非常に残念なものを見るような目で見返される。ううう。
「まぁやってみればいいか。あそこに向かって試してみろ」
そう言われるまま3m位離れたところにある岩をめがけて継続するように考えながら魔法を放つ。
「水刃!!」
おお~! できるもんだ。
私の指先から10cm位離れたところから生み出された水流は、出っぱなしになった水が当たった場所の岩に穴があく。
うむ。いつも通りの小さい穴だ。ホント、しょぼい。
「そのまま指を線を描くように動かしてみろ」
「はーい」
お師匠様の指導の下、ゆっくりと指というか手を動かしていく。
すると。
動かした線の通りに、水が当たった場所の岩が切れていき、ついにえぐり取られたように、そこが地に落ちた。
ずずんっ。
大きなその塊が落ちた衝撃が足元にきて、我に返った。
なめらかというか、あまりにツルツルの切り口に、目を奪われる。ナニコレ、すごい。
「お、お師匠様、これって……?」
「やっぱりか」
震えながら振り向けば、したり顔のお師匠様が、ため息と共に頷いていた。
なんで?!
「ブレイドって叫んでいるのに、なんで斬ろうとしないのか不思議だった」
なんと!
「……全然、思いつきませんでした」
つか、取り扱い説明書どこよ?! やっぱりここ、なにかのゲームの中なんでしょ!? もしくはラノベ! どこよ? どのお話なのよ、教えなさいよーーー!!
攻略サイトにアクセスさせろってんだ! うきーーーー!!!
冒険者たるもの、お出掛けデートといえばクエスト ←普通の更新やん




