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魔法陣:(前半:??視点、後半:シグラ視点)

カチュア……ブネルラのエルフ。遺跡調査専門の冒険者パーティーに所属している。

カシャカシャ、と聞いたことのない不思議な音がする。

『何の音かね?』

辺りを見回しながら尋ねると、騎士が『恐らくこれでしょう』と黒髪のお嬢さんの首にかけられた紐を摘まんだ。その紐には四角い革張りの箱がついていた。

『魔道具か何かだとおもうのですが、彼女が気を失って倒れた拍子に壊れたようです』

『ふうん?故障音か』

見たことが無い魔道具だが、どのような用途の魔道具なのだろう?

好奇心からそれを覗き見ていると、『あの……』と声をかけられ、目線をずらした。

『アイファ殿を見捨ててもよろしかったのですか?』

黒髪のお嬢さんを背に負ぶった騎士が、不安そうな顔をしている。それにつられるようにして、お嬢さんの魔道具を摘まんでいた方の騎士も不安そうな顔になった。彼らはアイファという未来人の護衛兼見張り役として付けられていたので、任務を放棄するような心地なのかもしれない。


『見捨ててはおらぬ、ただ優先順位がその黒髪の娘の方が上だということ。その娘を我が主の元へ送り届ける手筈が整えば、アイファ嬢の救出に向かえば良い』


そう私が言っても、依然として騎士達は納得がいっていないような顔をしている。

まあ、仕方がない。この騎士たちの主と私の主は別人物なので、私の言葉に従うのに躊躇してしまうのだろう。


『ん?』


空を見上げると紅竜が飛んでいるのが見えたので、念の為に防音の魔道具も作動させる。探知妨害の魔道具は予め作動させているので、これで気配や音で此方を見つけてくることは無い筈だ。


『アイファ殿はブネの教会に行ったきり、音沙汰がないのです。早く手を打たねば手遅れになる』

『大丈夫だ、アイファ嬢が捕まる理由が無い』

私は丸薬を騎士の手のひらに転がした。

『……?これは?』

『アイファ嬢がブネの番に使おうとしていた丸薬だ』

護衛騎士たちは『なっ……!』と目を見開いた。

『何故貴殿が持っているのです!?』

『小麦粉と香木の粉を混ぜて丸めた物とすり替えさせて貰ったのだよ。だがこれでわかっただろう?毒薬を所持していないアイファ嬢を怪しむ者などいないし、捕まる理由もない』

騎士は丸薬を握りしめ、私を睨んだ。

『要となる丸薬をすり替えるなど、貴殿は何故アイファ殿の邪魔をされたのです?今も、アイファ殿を放置し、この黒髪の女性を拉致するなど……何が目的なのですか!』


ああ、駄目だ。この騎士たちはアイファ嬢の素性や目的を詳しくは聞かされていないのだろうな。

まあ、私も私自身の能力のおかげでアイファ嬢の狙いに気が付けたわけだが。


―――アイファ嬢はプルソンと手を組み、我が主、キャリオーザ王女を出し抜くつもりだった


『その黒髪のお嬢さんはブネの番の妹だ』

『『!』』

騎士たちが目を見開き、そして黒髪のお嬢さんの方に目を向けた。

『そのお嬢さんを優先させる理由を理解したかな?』

私の言葉に、騎士たちは難しい顔をしつつ頷いた。


『しかし、貴殿の主の元へ送り届ける手筈とは……』


騎士の言葉を遮るように、突如、地面が揺れた。


何が起こったのかと辺りを見回すと、大きなドラゴンの足があった。図体が木々よりも大きいため、顔は木の葉が邪魔をして見えないが、アレはブネだ!


何故だ!?

咄嗟に探知妨害と防音の結界を張る魔道具を見たが、正常に機能していた。ならば、何故我々の位置がわかったのだ!?

……いや、すぐに此方に攻撃をしてこないという事は、ブネは此方を捕捉していないのか?


『走れ!準備しておいた魔法陣はすぐそこだ!』



■■■



「キララ!」


真っ先にその存在に気が付いたのはウララだった。

「シグラ、男の人がキララを連れて行ってる!」

やはり何らかの手段で気配を消しているようで、相変わらずキララの気配は感じられない。木が邪魔で目視でもうまく捉えられないが、魂を視れば4つの魂が前方にいるのは確認できた。あれがキララとキララを連れている者どもだろう。


どうやらキララは誘拐されかけていたようだ。

リュックの中にトランシーバーが入っている事にウララが気付いてくれて良かった。このおかげで悠長にアガレスの元へ戻らなくてもアガレスと連絡を取ることが出来たのだ。


だが、敵も我々に気が付いて防音の結界を張ったらしく、アガレスからの細かい誘導は出来なくなった。


しかし木が邪魔だな、ブレスで薙ぎ払おうか。

……いや、駄目だ。

ブレスからキララを守るために檻の結界を張る必要があるが、目視出来ないので適当な大きさの結界しか張れず、4人まとめて一つの結界に入れるしかない。

逃げ場のない檻の結界に閉じ込められたら、犯人が逆上する可能性がある。そうなるとキララの身が危ない。


ブレスではなく、魔法で焼き払おう。それなら檻の結界ではなく、魔法反射の結界で事足りる。


4つの魂がある周辺に魔法反射の結界を張り、炎の魔法で辺りを焼き払う。木々が焼け落ちて漸く視界が開け―――……


「!!」


視界が開けてキララ達の姿を漸く視界に入れた瞬間、キララは彼女を担いだ雄どもと一緒に姿を消してしまった。

何が起こったのだ?!


キララと雄どもが消えた地点に降りる。

するとその地面には意味がありげな落書きが光で描かれていた。

「まほうじん……?」

魔法陣はいくつか知っているが、私が知るものは大抵が人間どもが魔獣を召喚する際に用いるものだ。しかし、この魔法陣には見覚えがない。

「な、何が起こったの?キララは?」

「先輩、落ち着いて」

ウララが取り乱している。何とか彼女に安心して欲しくて、「だいじょうぶだよ、うらら」と声を掛けた。

「いっしゅんだったから、おりのけっかいは、まにあわなかったけど、それいがいのけっかいなら、はれたから」

「それ以外の、結界?物理反射とか?キララに張ってくれたの?シグラ」

「うん」

キララが雄どもに抱えられていたので、私は咄嗟に改めて魔法反射と物理反射と害意を弾く結界を張った。だからそれなりに守られた状態ではあると思う。

「けっかいがさどうしたら、しぐらにつたわるよ。いまのところ、さどうしたようすはないから、あんしんして」

「……うん。ありがとう、シグラ」

良かった、ウララが少しだけ安心してくれたようだ。


「あ、魔法陣が消えちゃう!」

レンの声で、私達の視線が再び魔法陣に向く。

魔法陣を現していた光がすー……っと薄くなっていっている。このままだとすぐに消えるだろう。

「ね、ねえ。魔法陣の図形とか、描き写した方が良いんじゃないかな」

「大丈夫です、先輩。魔法陣の写真はもう撮りましたから」

「え?」

ライが腕時計をした方の腕をウララに見せた。

「この時計、カメラ機能がついているんですよ。それで撮りました」

そう言えばライは賢者やリュカの為にと時折写真を撮っていたな。


「はやく、まほうじんをしらべよう。きっと、きららがどこにいったか、わかるはずだよ」

「そう、なの?」


魔法陣に描かれている言葉や図形は全てに意味がある。つまり解読さえできれば、キララの身に起こった現象がわかるのだ。


「魔法陣のことなら、確かカチュアさんが調べてたよね……?」


そうだ。カチュアはリュカが閉じ込められていた鳥籠に記されていた魔法陣を研究する為に、我々と共にブネルラに帰還したのだ。元々魔法陣に関しては詳しい様子だったし、彼女に訊けば何かわかるかもしれない。

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