表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
27/347

襲撃

レオナのもう一人の仲間を待つため、その日はこの廃村で一夜を明かす事となった。

騎士たちにはテントと寝袋を提供しておいたので、バスコンの上に作った架台で勝手に寛いだり見張りをしていることだろう。


私の抗議の後のことだが、すぐに二人の騎士はシグラに謝ってくれたので、不問とした。

シグラの結界は害意ある者は弾くので、その謝罪が表面上だけのものならカーヤは弾かれているだろうけど。


一方、私達はバスコンの中でいつもと変わらない団欒中だった。


私がアウトドアチェアに座ってしゃりしゃりとジャガイモの皮を剥いていくのを、キララとシグラはじっと見つめている。

「姉、今日の晩ご飯何だ?」

「ジャガイモのオムレツとスープパスタだよ」

「おむれつ」


アウロとロナはDVDを見ていて、今日は野獣と美女の恋愛アニメを流している。

ロナは言葉は分からないが、可愛いお姫様が野獣とダンスをするのを見て喜んでいるようだ。

「ふっ…ロナは子供だな」

「なーに言ってんの」

キララだって去年まではハロウィンでこのアニメのお姫様の格好するくらい大好きだったくせに。

「今のトレンドは深夜アニメだ」

「夜更かしできないくせに」


支度を終え配膳まで済ませると、紙皿に乗せたオムレツとクッキー、そしてスープパスタの残りが入った鍋をお盆に乗せてアウロに渡した。

「よろしければお召し上がりくださいと、彼女たちに」

「わかりました」


騎士たちに差し入れを持って行ったアウロは、すぐに戻って来た。どうやら差し入れはすんなりと受け取ってもらえたようだ。

「味のある、まともな食事は久しぶりです、ありがとうございます、とのことです」

「喜んでもらえたなら良かったです。じゃあ、私達も食べましょうか」


ちなみにやっぱりカーヤは結界の外に居たようだ。モンスターや襲撃者に襲われないといいけど。


パスタをフォークに巻きつけ、口に入れる。それをじっと見ていたシグラが、真似をしてくるくるとフォークを回す。

「熱いから、気を付けてねシグラ」

「うん」


カチャカチャと食器の音。

そして点けっぱなしにしているDVDの音。

時々ロナが「しゃおう」と父親に話しかけている。

「姉、胡椒くれ」

「はい、どうぞ」

ぺぺっと胡椒の瓶を振って、キララは好みの味に調えて行く。


食事を終えて食器を片すとクッキーを並べた皿をテーブルに置いた。

「メイン料理がジャガイモのオムレツだったから、物足りない人が居たら食べてね」

すぐに手を伸ばすのはロナだ。キララも食後のデザートにと手を伸ばす。

口いっぱいにクッキーを頬張って「しゃう、しゃう」とご機嫌な声を出すロナに、アウロは「良かったねえ」と笑いかけた。


何事もなく過ぎていく夜。


シャワーの後、子供たちには寝間着を着せるが、私は念のためにTシャツにパーカーを羽織り、ジーンズを穿いた。

シグラもアウロも昼間の服を着ている。

室内灯を切り、カーテンを開けて窓の外を見るも、特に人影があるわけでもない。だがシグラはアウロに何事か話しかけていた。私には見えない何かがシグラには見えているのだろう。


「囲まれているそうです」

「っ、そうですか」

アウロの冷静な声が余計に恐ろしくて、思わずシグラの袖を握る。

「うらら、だいじょうぶ、ねてて」

「シグラは外に出るんでしょう?寝れない」

「だいじょうぶ。ここ、けっかい、いっぱいはってく」

「私の心配じゃなくて……きちんと自分にも結界を張ってね。どんなに強くても、どんなに早く治ろうとも、怪我をした瞬間は痛いんだから」

カーヤに攻撃をされた時、彼の刃はシグラに触れることができた。つまり、シグラは自分には結界を張っていないのだ。

アウロから私の言葉を聞いたシグラは不思議そうな顔をしたけど、すぐに「わかった」と笑顔になる。

「うららが、のぞむなら」


シグラはアウロを連れて行こうとするので「えっ、」と思わず大きな声を出してしまった。

「アウロさんも行くんですか?」

アウロは苦笑する。

「自分が居ない間に貴女の傍に他の雄が居るのは許容できないそうで」


嬉しくて綻びそうになった唇を噛む。ここで嬉しそうな顔になるのは不謹慎だ。


「アウロさんもお気を付けて」

「大丈夫ですよ。シグラさんがいますからね」


アウロはひらひらと手を振って、シグラと共にエントランスドアを潜って行った。


「……」


シグラが防音の結界を張っているのか、外の音は全くしない。

ただ、子供たちの寝息だけが聞こえる車内。

窓の外も、今は何も見えない。これもシグラが何かの結界を施したのだろう。現象からして防視の結界かな?


落ち着きたくて、紅茶を淹れる。

初めて飲む異世界の紅茶は、ダージリン・ティーに似ていた。


「パルちゃん、シグラもアウロさんも怪我してない?」

『していません』

にゅるんっと紅茶のカップから出てくる。

「時間掛かりそう?」

『襲撃者が散らばっているので捕縛に時間が掛かるかもしれませんね』

「捕縛してるの?」

『聖騎士達は相手に止めをさしていますが、シグラさんとアウロさんは可能な限り捕縛をしています』

私がそういうのが苦手だから、二人は気を使ってくれているのだろう。

命がけの場所なんだから、そんなこと気にしなくてもいいって伝えておかないと…。



評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ