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話し合い

「え…?」


アウロに彼女をバスコンに入れるのは反対された。


「私達父子はウララさんのその優しさに助けられたので、強くは言えないんですが…。ウララさんの世界にいる聖騎士がどういったものか存じませんが、この世界の聖騎士にはあまり関わらない方が良いでしょう」


地球に聖騎士なんていないのですが、と言うと教会に所属する精霊付きの騎士の事だと言われた。宗教系の騎士ということは、騎士修道会とか日本の僧兵みたいなものかな。


アウロ曰く、聖騎士は自分が仕える精霊の為なら何でもする、という側面があるらしい。あと傲慢だとか。

まあ宗教だし多少はね?と軽く考えていたけど、彼らは融通が利かず躊躇なく人すら殺します、と聞いた時点で考えを改めないといけないと思った。


「でも放っておくわけにはいかないでしょう。この田舎では教会と連絡すらまともに取れないでしょうし。それにこのレオナさんは悪い人には見えませんし」

「悪い人に見えずとも、教会の人間です。正直言えば放っておくのも手ですよ。下手に教会と縁を持っても煩わしいだけです」

アウロが個人的に教会が嫌いなのかな。それともこの世界の教会は評判が悪いのかな?そう思っていたのがバレたのか、アウロに苦笑された。

「私はエルフですから、少々偏見があるかもしれませんね」

しかし、と言葉をつづける。

「こんな便利な乗り物とドラゴンの結界を自由に使えると知られれば、教会は貴女を放っておかないでしょう。十中八九、利用されて使い潰されて終わります。協力しないなら手先の聖騎士に延々と付き纏われるかと」

「………。すみません、私の考えが浅かったです」

偏見があるアウロの意見で決めつけるのは良くないかもしれないけど、教会と縁を結ぶと面倒なことになるのは理解した。これは申し訳ないけどレオナさんの要請は断ったほうが良いだろう。


「別に助けても良いと思うぞ、私は」


「キララ?」

「車に入らずとも、移動はリアラダーにしがみ付いてもらえば良いだろ」

リアラダーとは車体の後ろに付いている梯子だ。

「キララさん、彼女に知られた事は全て教会が知ることなります。例え車内に入れずともこのバスコンのことを知られる事すら危険です」


「私達には歴代勇者を葬り去り、時空の概念にすら手を焼かせた特異点シグラがついているんだぞ。早々危険なことなんかない」


妹は過信していると思う。それに…

私達の会話にまだ入れないシグラは、ぽやんとした顔で私の事を見ている。目が合うと微笑まれた。


「キララ、シグラばかりに負担を掛けては駄目。彼は道具じゃないの」

「でも姉、」

「キララだって『何でも出来るから』って低学年の子に何でもかんでも頼られたら嫌でしょ?少しは自分でやって欲しいなって思うでしょ」

キララはうっと言葉に詰まる。

「私達が気軽に引き受けていいのは、私達の力だけで解決できる事だけにしよう?」

「……わかった。じゃあ、シグラに提案してみる。シグラが了承したら良いだろ?……シグラは姉が言ったら絶対に了承するだろうから、私が言うから」

私とアウロはキララの言葉に首を傾げた。

「どうしてキララはそんなにレオナさんを助けてあげたいの?」

「そりゃ、王都に行くための布石に決まってるだろ」


私達は『20歳の小学生』回避の為、ドラゴンの血のことを知りたくて、王都の宮廷にいる高名な錬金術師に会う事を目標に定めている。

王都に入るには全員分の身分証が必要となるし、そもそも王都に行ったところで宮廷に籍を置く錬金術師と簡単に会えはしないだろう。だからその為のコネを教会に求めてみるのだとキララは言う。

確かにアウロから話を聞く限り、教会はそれなりの力をもっていそうだ。


「ただ諸刃の刃だよ、キララ。ここで悪目立ちして教会に狙われるのも嫌だし、パルちゃんは否定したけど召喚儀式の噂もある。もしかしたら私達は監禁されるかもしれないよ」

「だから全てひっくるめてシグラに守ってもらって……と思ったんだ。危険な橋を渡らないと先に進めない状態だし…さ」

シグラばかりに負担を掛けるな、という言葉が響いたのか、キララは唇を尖らせて下を俯いた。


「キララが一生懸命に考えてくれてるのは、凄く嬉しいし助かるよ」

お姉ちゃんに任せとけ!と言えないのが情けないところ。確かにキララの言う通り、『コネ』を作るにはどれだけ慎重に行ったところで、多少の危険な橋を渡らないといけない。


「……じゃあちょっと私はシグラと交渉してみる。パル、協力してくれ」


パルを通訳係にしてキララが真剣に話しかけてきたので、シグラはきょとんとした様子だった。

そして始まった交渉。―――――30秒後


「OKだって」

「シグラ、だからもうちょっとご自愛下さいだよ!」

相変わらず彼はノリが軽かった。


アウロも『はあ』と仕方ないなと溜息をついてる。

「ではレオナさんに手助けをする旨を伝えてきます」

アウロの背中を横目に、私はシグラの腕に触れた。

「引き受けてくれてありがとう。でも負担ばかりかけてごめんなさい、疲れたら遠慮なく言ってね。他の…もっと穏便な策だってきっとあると思うから」

パルが通訳してくれるのを、シグラはふんふんと頷く。

「うららがうれしいなら、それでいいよ」

「シグラ…」

自分を安売りする彼に注意しないといけないと思うが、何を言ってもシグラは私が嬉しいならそれでいい、と言うだろう。だったら、私がすることは。

「……じゃあ、シグラが何か私にして欲しい事とかない?私もシグラが喜ぶことしてあげたい」


シグラはぱああっと笑顔になる。

「しぐらのそばにいて、うらら」



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