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再会

シグラだ。

シグラがいる。

胸がカッと熱くなり、じわじわと身体中に喜びが広がっていく。


シグラが帰ってきてくれた!!


「シグラ、良かった……!また会えた!」

逃がさないように彼の頬を両掌ではさみ、顔を覗き込んだ。

「シグラ……!」

じわりと涙が滲み視界が不鮮明になる。

「会いたかった、良かった、良かったぁぁ」

もっと傍に居たくて手を伸ばし、抱きつき、加減もせずにぎゅうぎゅうと抱きしめた。

目を閉じ、首筋に頬を寄せて彼の体温をうっとりとしながら感じる。

暫くそうしていたが、涙が目から溢れ落ちた時、はっと我に返ってシグラから身体を離した。

「ごめんなさい。涙付いた」

目が合うとシグラはにこりと笑い、私の濡れた目元に唇を寄せた。

「もっとくっついていて、いいよ」

「で、でも……」

「じゃあ、しぐらがくっつく」

彼は嬉しそうにそう言うと、私の胸元に顔をくっつけてぐりぐりとじゃれつきだした。

「うらら……ふふっ、うららー……」

「うっ……」


私は思った以上にシグラ欠乏症だったのかもしれない。


「か……可愛いよおお!」


甘える彼が物凄く可愛くて、胸がキュンキュンしてしまう。

「し、シグラぁ」

彼が嬉しそうに「ふふふ」と笑う。

もう、可愛くて可愛くて仕方がない!

我慢できずに、犬を撫でるようにわしゃわしゃと撫でまわす。

「もう私を置いて遠くに行っちゃ駄目だよ、絶対に駄目だよ」

とにかく、撫でて撫でて撫でまくる。偶に頭に頬擦りしつつ、やっぱり撫でまくって……。


ふと車の窓が視界に入り、困ったような顔をして覗き見るルランと目があった。


「っ!」

ひゅっと息をのみ、思わずシグラの頭をぎゅううっと抱き締めてしまった。

「はっ!ごめんシグラ!」

流石に首を痛めたのではないだろうかと彼から身体を離すと、ほわんっとした表情のシグラが「どうしたの?」と首を傾げた。


か、可愛いい!好きっ!


まだじゃれ合いたくて仕方が無かったが、それを誤魔化すようにこほんと一つ咳ばらいをし、私はシグラの膝から降りた。

「外に出ようか、シグラ。ルランさんが話があるみたいだし」


車の外に出ると、入り口付近にいたルランがぺこりと頭を下げた。

夢中でシグラとじゃれ合っていた所を見られたので、かなり気まずい……。彼と言葉が通じれば色々と言い訳ができたのだろうけど、それも出来ないので曖昧に笑って軽く会釈をしておいた。


車から少し離れた場所にはアウロとナベリウス(狼)とククルア、そして……何故かジョージと、見覚えのない2人の男性がいた。

どうしてジョージがここに居るのかと一瞬思考が停まりそうになったが、「あれ?」と1つ気づいた事があった。

「そう言えば、どうしてルランさんがいるの?」

恥ずかしい場面を見られて動揺していたので、ついうっかりしていたけど、ルランがいるのはおかしい。

彼は南の紛争地で任務にあたっている筈なので、王都に近いニホン公爵領に居るわけがないのだから。

「ウララさん、その事も含めて説明しますので、此方にどうぞ」

「あ、はい」

アウロが努めて冷静な声を出してくれたので、少し冷静になれた。

しかし彼らの傍に寄ろうとすると、シグラに腕を引かれた。

「どうしたの?シグラ」

「あまり、おすのちかくに、よらないで」

私が5人の成人男性と1人の少年の輪に入るという構図が嫌なようだ。

シグラの性格を知っているアウロは“然もありなん”という態度で、彼の方から私達の傍に寄ってきてくれた。


そしてまず教えてくれたのは、見覚えのない2人の事だった。

1人は私達が居たシマネの街の代表者で、ニホン公爵家次男のカエデ。もう1人はそのカエデの従者でマツリという名前だそうだ。

カエデは瀕死の状態だったそうで、シグラの血を飲んで回復した代償に加護が付いたという。

「……カエデさんはルランさんの従兄弟の方ですか?」

「そうなりますね。ですがルランさんもカエデさんもお互い初対面だそうですよ」

「へえ……」

貴族だから色々あるんだろうなあと思っていると、「従兄弟と言えば」とアウロが何かを思い出したように馬車の方を指さした。

「ウララさんが眠っている間にルランさんの弟さんでテランさんと仰る方と合流したんですよ。今は馬車の方で眠っていらっしゃいます」

「そうなんですか?」

「聖騎士で、シグラさんの神殿に所属されているそうですよ」

おお!と少し大きな声が出た。

「ではシグラの味方なんですね」

それはとても嬉しい事だ。テランの目が覚めたら、是非とも挨拶に行かねばならないだろう。


「私が眠っていた数時間のうちに色々と出会いがあったみたいですね」

「あ、それなんですが、ウララさんは丸一日と数時間程眠っていらっしゃいましたよ」


「……え?」


アウロは苦笑しながら「シグラさんから聞いていませんか?」と言った。

隣にいるシグラの顔を見上げる。シグラは“言うの忘れてた”という顔をしていた。まあ、私も気にしないといけない事をすっ飛ばして、わしゃわしゃとシグラを撫で回していたから文句は言えない。


「あの、すみませんが、詳しい説明を聞かせて下さいますか?」

「わかりました」



私が眠り薬なるものでずっと眠らされていた事、その間に襲撃をされたりしてライ達が頑張ってくれた事。テランが合流した事、そしてアミーに襲われた事、カエデ達と出会った事。


「恥ずかしながら、私も途中で魔力切れになって倒れてしまったんですが、アミーさんに襲われていた時にシグラさんが駆け付けてくれたらしいんです」

「そ、そうなの?」

シグラを見上げると、こくりと頷かれた。


「あそこのあなに、はいって、うららのところに、いったんだよ」


あそこ、と指さした方には真っ黒な異様な球体が浮かんでいた。


「……あれ、何?」

「時空の穴のようなものみたいですよ。黒いのはシグラさんやブネさんが防視の結界を張っているからです」

「……ブネさん?誰ですか?」

何処かで聞いた覚えがあるけど、とアウロに訊ねると「あー……」とまた苦笑された。


「これが一番大事でしたね。今いる世界なんですが、15年後の日本なんですよ」

「……15?」


シグラとアウロの顔を交互に見て、二人とも揶揄うような表情をしていない事を確認する。つまり……


「ジューゴネンゴというニホン公爵領?」


キョートとかシマネという地名を聞いていたので、てっきりニホン公爵領の街には県名が付いているのだと勝手に思っていたけど、違ったのだろうか。

「ウララさん。“15年後”の“日本”です」

「えっと……」

「ライさん達の元いた世界と言えば受け入れやすいですか?」


はっとした。


ライ達は未来から来た、私とシグラの子供。

つまり……!

「未来ってことですか?!」

「はい。シグラさんが飛ばされた場所は、この15年後の未来だったそうです。そしてこの世界に来たときに何故かルランさんとジョージさんを掴んでいたそうです」

「そう……だったんですね」

何故ルランとジョージを……とは思うが、時空を越える現象なのだし、考えるだけ無駄かと思考を放棄した。

それよりも今は気になる事がある。

「って、え?時空の穴ってもしかしてシグラが開けたの?」

一瞬血の気が引いた。だが、それは否定された。


「リュカさんを誘拐した者が開けた穴だそうです。閉じてはマズイと思ってブネさんが維持を続けていたそうです」

「ああ、リュカちゃんの……って、ブネって」

私の頭の中に一つの答えが浮かび上がる。

「シグラの本名!」

「そうなんですよ。ここは15年後のウララさん達が住んでいる山荘のある土地だそうですよ」

15年後のウララさんもいましたよ~、とのほほんとアウロが教えてくれた。


「先程までご夫婦で此処にいらっしゃったんですが、泣いてしまったライさんとコウさんを連れて山荘の方へ戻られたんですよ」


……度重ねてとんでもない情報を聞かされ、そろそろ頭の中がパンクしそう。


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