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魔法

夕飯の席で、顔色が若干マシになったアウロに昼間の山賊騒ぎの事を聞かせると、それは流浪の民を狙った山賊団であると答えが返ってきた。

「流浪の民には財産らしい財産はありませんが、家族単位で動きますから、男は殺し女子供は人買いに売ると聞きます」

「そうだったんですね」

もしもあの日私達がアウロを助けていないと、アウロ達は犠牲になっていたかもしれないと思うと、ゾッとしてしまう。

それにしても、山賊の事をパルに訊いても『金品目的のならず者集団でした』と言う回答しか戻ってこなかったから、やっぱりアウロ(現地民)の意見は必要だなって思う。

でもパルと言えば…

「そう言えば、山賊がパルを見た途端に気持ち悪い顔になったんですよ。何か意味はありますか?」

「ウララさんが精霊付きと思われたのでしょうね」

「精霊付き?」

「精霊に加護をされた人間です。基本的に精霊魔法はエルフにしか出来ませんが、精霊付きの人間にはそれが使えるのです」

「なあ、魔法っていろんな種類があるのか?」


アウロは頷くと、指を四本立てた。

「この世界には4種類の魔法があります」


彼が言うには、こうだ。

第一に、主にエルフが使う精霊魔法。

これは自分の精神力を対価にして精霊に力を貸してもらい、発動する魔法。近くに対応した精霊さえいれば火、水、風、土、聖、魔など全ての属性の魔法が使える。また、“名のある精霊”と呼ばれる存在があるが、これは精霊とは別の高位的存在だそうだ。名のある精霊の力は厳密に言えば魔法ではなく特殊能力であり、その存在が守護している地で生まれたエルフにしか名のある精霊の力は使えない。


第二に、自立魔法。

これは生まれつき自分の体内に魔法の核がある生物が使う魔法。その魔法の核を用いる事によって魔法を発動する。核の種類によっては火魔法しか使えない、水魔法しか使えないということがある。

魔獣やロナのようなドワーフはこれを持っている者が多いらしい。


第三に、魔石魔法。

魔石を加工した魔道具を媒体として魔法を使う。魔法が使える者が少ない人族が多用している。


第四に、精霊自身が巻き起こす魔法現象。

自然災害のようなもの。


アウロはちらりとシグラを見た後、「例外もあります」と言う。

「竜族などの一部生物には、魔法ではなく特殊能力というものがあります。シグラさんのようなドラゴンであれば、ブレスや威嚇などですね。これは魔法ではなく、その種独自の特殊能力です」

「そう言えば、ドラゴンには魔法が有効じゃないってパルちゃんが言ってたっけ。これも竜族独自のものですか?」

ええ、とアウロは頷く。

「魔法が効かないのは竜族だけですね。ですから、念話も回復魔法も一切効きません」

そうか、魔法が効かないってことは、回復魔法も効かないってことなんだよね。

そう言えばシグラがドラゴンの血は怪我に良く効く、と言っていたのを思い出す。回復魔法が使えないから自然治癒力を高めた結果だったのかもしれない。

「でも自然治癒なんて限度があるし…シグラが大きな怪我をしないように気を付けないと…」

「ウララさん、ドラゴンには無用の心配ですよそれ」

私の呟きにアウロが呆れたような顔をした。



食事の後片付けが終わると、アウロにシャワーを勧めた。

水の魔石のおかげで、シャワー浴び放題になったのが本当に嬉しすぎる。

当初、ソーラーパネルからの充電だけで外部電源からの充電が出来ないから節電した方が良いかなあって思ってたけど、案外余裕がある。ああっ、オプションで良いバッテリーを買っててよかった!


「しゃわー?」


きょとん、となるアウロに、私もきょとんとする。

「お風呂みたいなものです。こう…管があって、温水が噴き出すんですが…もしかして、お風呂…お湯に入って体を綺麗にする習慣が無かったりしますか?」

「あ、いえ。この国では風呂というものは贅沢なものなので驚きまして。まさか野宿で風呂に入れるとは思ってもみませんでした。……御不浄トイレがある時も驚きましたがね」


シャワーの使い方と石鹸の場所を教えると、アウロはロナを連れてシャワールームの中へ。

暫くして

「しゃおう~…」

と、ロナの気持ち良さそうな声が聞こえてきたので、思わず笑ってしまった。


シャワー待ちの私とキララとシグラは歯磨きを済ませ、まったりとダイネットでDVDを見ながら寛ぎの一時を楽しんでいた。

「明日は村に行けそうだね」

「だな。一先ずドロップ品換金して、食料調達」

「その前に服ですー。シグラの服を買ってあげないと。いつまでも貫頭衣じゃ可哀想でしょ」

「姉は貢ぐタイプだな。いや、ドロップ品はシグラのものだからそうでもないのか?」

私達がお喋りをする傍らで、シグラはじっとDVDの映像を見ている。今見ているのは人気を博した刑事ドラマが映画化したものだ。雑誌を読むよりはこうして映像を見た方が日本語や日本の習慣の勉強になるのかもしれない。だったら時代劇系は極力見せないでおこう。ゴザル口調とか一人称が「拙者」になったらちょっと嫌だし。


「お先に失礼しました」

ほこほこと湯気を上げながらアウロとロナがダイネットにやってくる。

ロナは父親の足にしがみ付いていて、とろーんと瞼を重くなっているみたいだ。

「寝かせてきます」

そう言い、アウロは娘を連れてバンクベッドへ登っていった。


「じゃあ、次はシグラがシャワーに行って来て」

「わかった」


シグラの手を引いてシャワールームの前に来ると、アウロ達の時のようにシャワーのコックを回し温水を出して使い方を説明してあげる。

「このお湯で体を洗ってね」

「わかった」

そう言うと、シグラは服のまま入ってくる。

「こらこら、服は脱い…って、あ、あの私は外に出るから」

また私の事を洗おうとしているのだと気付くと、カーっと熱が上がる。

彼の手から慌てて逃れて外に脱出すると、シグラは不思議そうな顔をしていた。

「わ、私はね、後で自分で洗うから」

ドキドキする胸を押さえながら、なるべく簡単な言葉で言うときちんと伝わったようだ。


それにしても、どうしてシグラは私の事を洗おうとするのだろう?妻を洗うのはドラゴンの習性なのかな?


赤くなった顔を手ではたはたと扇ぎつつダイネットに戻ると、キララとアウロがシートに座ってDVDを観ていた。

「いやあ、キララさん達の世界には色々な優れた道具があるんですね。拳銃ですか?凄い威力だ」

いつも魔法ではキララが目を輝かせているのに、今はアウロの方が目を輝かせている。その様が何となくうちのお父さんと重なる。お父さんも刑事ドラマ好きだったな~。時代劇も好きだったし、もしかしたらアウロもハマるかもしれないなあ。



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