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私の姉:キララ視点

「あー……」

昨日、シグラに姉を洗ってもらったから、今日も同じ要領でやってしまったんだろうな。

「どんまい、お前は悪くない」

姉を泣かせてしまってしょんぼりしているシグラの背中をバシバシと叩いてやった。


シグラを拭いてキャンピングカーに戻ると、ドワーフの子供と姉の姿はなかった。

子供の方は親父の傍に行ったんだろう。そして、姉は寝室に行ったんだろうな。


そう言えば、昨日シグラが寝たベッドは今あの親子が使っている。

だからといって私らが使っている寝室に入れたら、更に姉を恐慌状態にしてしまうこと間違いなしだ。

どうしたものか。

確かキャンピングカーっていうのは、テーブルをどけてシートを展開したらベッドになるとテレビか何かで言っていたはずだ。

このキャンピングカーでもできると姉から聞いた覚えが…。


うーん?


「キララ?」


寝室のカーテンがしゃっと音を立てて開いた。

少しは落ち着いたのか、姉が顔を覗かせる。

いや、落ち着いてないか。シグラを見た途端顔を真っ赤にしてカーテンの向こうに逃げてしまった。

まあ良い。指示さえもらえば私が何とかできる。


「姉よ、シグラのベッドをどうしたら良い?」

「……ベッド?……あ、そっか」


またカーテンを開けて、今度は階段を降りてきた。

「このセカンドシートとサードシートがベッドになるの」

テーブルの足の部分を縮めて…と作業しようとした姉に、シグラが「ああう」と何か訴えかける。

姉は顔を赤くしつつ、パルを呼んだ。


『貴女の傍で眠りたいそうです』


エルフの親父がいるからな、それを警戒して姉から離れたくないんだろう。だけど、今日は特に姉は拒否反応を見せるだろうなあ。と思ったけど

ボン!というような効果音が付きそうなほどに姉は顔を真っ赤にさせて、それからもじもじしながらチラチラとシグラを見ている。


「……だったら、階段のすぐ下の通路のところで…寝る?」


思った以上の妥協案をすんなりとだしてきた姉に、少し驚く。

もしかしてさっきの辱しめで姉はシグラにコロっといってしまったのでは。

だとしたらうちの姉、ちょろすぎないか。


姉は寝室に敷いていた自分の布団を通路に敷いてやり、更にクッションを提供していく。

そもそも通路にもクッション性の高いカーペットが敷いてあるから、布団無くても十分寝れそうなんだけどな。


「じゃあおやすみ」

「おやすみー」

「おやすみ、うらら、きらら」


シグラに挨拶をすると私は姉と二人でカーテンの向こうの寝室に入っていった。


寝室にはマットがあるので、布団が無くても眠れるようになっている。私達は布団が無いと落ち着かないから敷いていたのだけど。

寝室の間接照明でぼんやり姉の姿が浮かび上がる。

「姉、一応確認しておくぞ」

「何?」

「シグラにコロッといったのか?」

「ッッ!!」

がばっとこちらを振り向いた姉は、何とも言えない表情をしていた。


「そんなんじゃない…けど」

「けど?」

「責任とってもらわなきゃ…って…」

「は?」


暗がりの室内でも姉の顔が真っ赤になっているのがわかる。

えっと……


「責任?」

「素肌をあんなに丁寧に触られたら、もう忘れられないでしょ…、どうにかしてほしい」


姉って婚約してたよな?

「……マダオとそういうことしてないのか?」

「してるわけないでしょ!まだ結婚してなかったんだから!」

あ、姉ええええ!!


「最近の少女漫画でもエロいシーンがあるっていうのに、どういうことだ、姉よ!」

「あれは漫画で、現実じゃないでしょ。子供のキララに言うことじゃないかもしれないけどね、普通はそういうことしないんだよキララ」


そ、そうなのか!?


「そ、それで…姉はどうするつもりだ」

「責任…」

「それはもう問題じゃない。だって、シグラの中では既に姉は嫁だから、姉の言う責任とやらはとっているだろ」

「あ…そうだった。え?じゃあ…え?」

姉が混乱している。

「そっか…私、シグラの奥さんだった」

「姉は認めていなかったけどな」


沈黙する。


どうしよう…。私も漫画知識しかないし、かといってエルフの親父を巻き込む話でもないし。


「と、とりあえず!早まった事はするなよ。別に恋愛や結婚は姉の自由だが、きちんと人となりを見極めてからにした方が良い」

「見極めるって言っても…具体的に何を見極めたらいいの?」

えええ、知らないよう。

でも、何となくわかった気がする。どうして姉があんな『マダオ』と婚約したのか。そして婚約破棄に全くショックを受けていなかったのかを。

姉はマダオと全く恋愛というものをしていなかったんだろうな。

身内贔屓かもしれんが、姉は美人だしバスガイド補正も相まって結構モテる。それに目を付けたマダオに迫られて、流れで婚約をしただけなんだろう。

「シグラは…」

姉が話し出す。

「確かに最初は怖かったけど、守ってくれるし、その…良い人だと思うし可愛いし…」

やばい、良いところにしか目が行かないようになってる。破滅パターンとかいうやつじゃないか?

「しっかりしろ、姉。経済力のない男と一緒になったら苦労するぞ!」

「私が働けばいいだけだし」

「姉よ」

がしっと姉の肩に手を置く。

「私達は10年後には元の世界に戻るのだ。シグラとはそれまでの関係になるぞ」

「……そうだったね…」

まあ、シグラの事だからまた時空の壁を壊して姉の所に来そうではある。

……ん?

そう言えばシグラに頼めば私達は元の世界に戻れるのでは?……いや、パルの様子を見るに今の時空はじり貧だ。正常に戻る前に無理やり時空を捻じ曲げると今度こそ世界が崩壊するかもしれないか…?


「と、とにかく結論を出すのは1年後にしろ」

「1年後?」

「それまでは早まった事はしないように。良いな?」

「……わかった」


姉はマットの上に転がった。


「自分でもわかってる。今の自分は絶対に冷静じゃない。だって、こんな事子供のキララに聞かせる事じゃない」

姉は「ごめん」と私に謝る。

「今の事、忘れて」


「……私は姉の気持ちを聞けて良かったと思う。知らない間に何かあったら嫌だからな」


姉は返事をしなかった。


次の朝、姉がシグラの髪の毛を櫛で梳いてやり、三つ編みに結ってやっていた。

シグラの世話を積極的に始めたようだが、まあそれくらいはいいか。

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