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ー史上最強の猿ー

「ウキー!ウキキー!」

「わあ!上手にできたね!チン君に拍手をー!」パチパチパチ


この世の中で俺は一番に優れている。

他の誰よりも、そしてこの世の何よりも尊い存在なのだ。


キィ

「よし餌だぞ」


右手にリンゴを持つこの男は俺の召使い。俺が生まれた時から居て、なかなか愛着を持っている。ルークと名付けた

「キィー(おいルーク、水はどこだ?)」

「ああ、水が無くなってたのか、ちょっと待ってくれ」


俺は食事には飲み物が必須なのだ。何度言ったらわかる。

さて、仕事も一段落ついたし寝床で仮眠でもとるかな。


「…ンキ」

いつにもまして月光が眩しい。

夜空はぼやけるのに何故か月だけがしっかりと見える。


「起きてしまったじゃないか。全く…ん?」

自分の聞きなれない声に驚く。

なんだ?この人間のような声は


ゴッ


「イッテ」

起き上がろうとした時、何かが俺の頭にぶつかる

「なんだ…?これ…月?」

"何か"を確かめようと掴んだ手の中には、月がある。


え?上を見上げると普通の月がある。

よくわからない。俺の手の中と空にはどちらも同じ月がある。

軽く混乱して月と月を見比べていると向こうから走る音が聞こえてくる


「おい!こっちだ!」

孟ダッシュで召使い達が俺の所へ走ってきた。扉を開けるのに苦戦している

「お~い!何をそんな慌ててるんだ?」

一瞬召使い達の動きが止まる

「おい…檻の中に誰かいるのか…?」

「さ、さあ、俺は何も知らないぞ」

ルークが他の召使いと共に慌てている。

一人がさすまたを持って部屋に入ってきた


「なあ、何があったんだ?」

「喋った!?」


俺の変な声に驚いている、まあ一晩で変わればそうか

「大発見だぞ!光ったと思えば…」

俺を外してゴニョゴニョ言っている

近付こうと足を前に出すと思いっきり扉にぶつかった

ビュンッゴンッ


ん?

ビュンッゴッ


んん?

早い、めちゃくちゃ足が早い

というか足を踏み出しただけで地面が無くなって、遠くにあったはずの壁がいきなり目の前にくる感覚がする


ビュンッビュンッビュンッ


壁にぶつからないよう謎の変化を確かめながら、生まれて初めて"走る"という疾走感を得た


「なんだ…ここは」

いつの間にか部屋の外に出ていた、がそんなことはどうでもいい


俺は木がそこらかしこに連なる場所にいた。

鉄も光る物も大きな石も無く、下はふかふかの土と木で埋め尽くされていて、何より心が落ち着いてしまう場所だった。


ゴッ

木に近付こうとすると頭を打った

「なんなんだ!止めてくれ!」

これじゃまともに物に触ることも立ち止まることもできない


すると右手に持っていた月が息苦しそうに手から離れ目の高さまで宙に浮いた。

クルンと一回りして俺に礼をしているようだ。


「メツトリ様、あなたは世界の意思に選ばれました。あなたの余生に世界のご加護がありますように。」

「まってくれ、俺はそのメツトリ様とかいうのではない」

「いいえ、あなたはメツトリ様です。世界の意思があなたを選んだのです。お望みでしたら私に出来る限りの力を尽くしましょう」

「じゃあメツトリってのは何なんだ?世界の意思とは?」

「メツトリとは月の神、我らが父の名です。世界の意思とはこの世の全ての意思です。」

言ってることが突拍子も無さすぎてますますわからなくなった。

とりあえず身近にある事から片付けていこう

「…あなたの名前は?」

「名前はありません。」

「そうか、じゃあ月の使者と書いてメッセンジャー、メッセにしよう」

「わかりました。」

そういうと、メッセは少しだけ嬉しそうにまたクルンと一回りした。

声は人間、体は猿、その名もチン!

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