魔術学院の転生悪役令嬢
「はじめまして。ぼくはユゼルティア・ヒューイット。おじょうさん。あなたのおなまえは?」
あら、この場面見たことがありますわね
私の大好きだった乙女ゲームの悪役令嬢の回想シーンでしたけど
「はじめましてユゼルティアさま。わたくしはフィオナ・アルジオン。おあいできてこうえいですわ」
第3王子であるユゼルティア様との顔合わせの場でふっと浮かんできた前世と呼ばれる"日本"の記憶
その記憶の中にある情報から考えてみると私は恐らく転生というものをしたのでしょう
幸いにも記憶が混濁したり意識不明になることはありませんでしたが少し驚いてしまいましたわね
「フィオナさんというのですね。あなたのようなうつくしいひととこんやくできるとはぼくはしあわせものですね」
記憶から考えると私は乙女ゲームの悪役令嬢に転生していたようですね
"フィオナ"というキャラクターは第3王子の婚約者で高飛車な女性だったようです
"ヒロイン"に第3王子を取られると思い、"ヒロイン"に辛く当たった結果王子に愛想を尽かされるという役割みたいですわね
私がそんな事をしてしまうという事はありえないと言いたいところですが未来の事など私にわかるはずもありません
少しでもあのような未来にたどり着かないようにしていかないといけませんわね
王都ベリー地区716ー93ー9
フィオナ・アルジオン様宛
魔術学院入学証
とうとう届いてしまいましたわ
魔力を持った人が必ず入らなければいけない魔術学院
魔力がある事は幼少期からわかってはいたのですがゲームの舞台であった学院に入学するというのは少し気が重いですわね
ゲームの私ほど高飛車ではないと思っているのですが自分の感覚だけですし慢心してはいけませんわ
ユゼル様との仲も悪くは無いと思うのですが……仲がとてもよいという程でもありませんし……
私はユゼル様が大好きなのですがユゼル様の方は少し私の事が苦手なようなのです……
仲良くなりたいと頑張っていたのですがどうにもうまくできなかったみたいですね
このまま"ヒロイン"とユゼル様が出会ってしまいましたら本当にゲームのようになってしまう可能性もありますわ
作戦はいくつか考えていますのでそれで上手くいくといいのですが……
本日は魔術学院の入学式ですわ
私はユゼル様と一緒に入学式の会場まで向かっていたのですがその途中でユゼル様にぶつかった方がいらっしゃいました
ぶつかる方がいないように気をつけてはいたのですが少し他の所に目を向けた瞬間にぶつかっておりました
赤みがかった茶色の髪に生き生きとした桃色の瞳……彼女は……
「ヒロイン……」
ああ始まってしまいましたわ……
これはあのゲームの始まりのイベント……
"ヒロイン"はこちらをじっと見ていましたから記憶がある可能性も高いですわね
これは一層気を引き締めていかなくてはなりませんね
「お嬢さん。大丈夫ですか?」
ユゼル様が彼女に声をかける
優しい優しいユゼル様
その優しさを私に向けてくれることはなぜか少ないのですけれど……
「え、あ、大丈夫。です。ぶつかってごめん。なさい。そっちも大丈夫?です?か?」
"ヒロイン"としての行動は完璧
少し緊張していた"ヒロイン"はユゼル様にぶつかってしまい、この後王子に声をかけられた事に驚き逃げてしまうのです
それを少しユゼル様が面白く感じ交流が始まるのですが……
「こちらは大丈夫ですよ。お嬢さんに怪我がなかったようでよかったです」
「大丈夫!です。じゃあ!」
手を差し出すユゼル様と驚いて逃げてしまう"ヒロイン"
「くすっ。面白い子だね」
ああ、ユゼル様が興味を持ってしまいました
また作戦を追加しておいた方がいいのでしょうか……
この後ユゼル様を含めた攻略対象の方たちが"ヒロイン"に惹かれていってしまったり、やはり転生だった"ヒロイン"の方と結託してそれをどうにかしたり、最終的に全員元々の婚約者の方と上手くいって一件落着となったのはまた別のお話です
悪役令嬢:悪役令嬢に転生した元日本人
このゲームをやったことがあり、第3王子がヒロインに取られないように色々作戦を立てていた
のんびりおっとりぼんやりなタイプだが見た目が怖いのでそう思われていない
顔に感情が出にくくリアクションが薄いのもそれに拍車をかけている
第3王子:乙女ゲームの攻略対象
ゲーム内では優しい系担当
初恋は悪役令嬢だがプレゼントをしても反応が薄く、婚約した理由を聞いたら「お父様が決めたからですけれど?」と言われたので嫌われていると思っている
この後感情をしっかり出すヒロインに惹かれるがメンタルをフルボッコにされてから悪役令嬢も自分を好きだったと知って持ち直す
ヒロイン
ゲームのことは全く知らない
隣の家のパン屋の息子に惚れているので攻略対象の事は知ったこっちゃない
パン屋の息子からは幼馴染みとしか思われていない
頑張れ
その他攻略対象者
俺様系侯爵子息、ツンデレ系宰相子息、寡黙系騎士、元気っ子系魔導師、ドS系教師