祝福
重厚な扉がゆっくりと開くとそこは白くて静寂な世界だった。
大勢の候補者達は整列して扉が開いて皆一同に俺を見ている。
だけど皆が見ている事に気がつかない。
ただ広間に圧倒された。
白い世界
ドーム型の天井から入る太陽の光が広間全体に柔らかく拡散し明かりがないのに広間全体が明るい。
どうやら建物自体白い石材で、建てられてるのだが、それが光を反射しているようだと気づく。
ただ広間に入った瞬間から今まで感じた事もない見慣れぬ風景。
荘厳でいて厳粛な場所
入った瞬間に分かる神聖な空間
それが俺の思考を止めていた。
「 」
俺の側で優しく微笑みかける男性の存在に気付き現実に戻る。
どうやら案内の為に声をかけてくれたみたいなのだが初めて存在に気付いた
広間に入った瞬間に圧倒されて棒立ちしている自分に、気づき周りを見ると大勢に注目されてる事に気づく
「大丈夫です」
広間に声が大きく響き渡る
えっ
俺は俺の声に驚く
側にいる男性に声をかけたつもりの音量なのに声は広間全体に響き渡る。
側にいた白いスーツの男性が慌てる俺に微笑みかけると、ゆっくり前に歩き始めた。
俺は慌ててついていくと俺の足音も響き渡る。
皆が俺に注目している。
ーカエリタイー
心で呟きながら皆の注目の中で列に並ぶ。
しかも最後に入ったのに最前列である。
顔が真っ赤で恥ずかしくて周りが見えない
ーホント カエリタイー
誰ががクスッと笑う声が聞こえた。
少し弛緩した空気が流れかけたが祭壇に向かう足音がすると皆緊張し祭壇に注目する。
祭壇にはテレビで見たことがある人だった。
この世界で影響力を持つ人、間違いなくトップに入るアニー教の現“法王“である
まさか初めて見る有名人が“アニー教の法王“とは現実味がなく逆に冷静になって周りを見渡せる。
よく見ると他の候補者達も俺と同じ学生服の連中が多い。
そうか、だいたいが学生の連中なのだから
皆俺と同じような境遇の連中だよな
勝手に解釈し俺は安心して祭壇に注目する。
うん、うん、大丈夫、大丈夫
皆候補者は年は、そんな離れてないんだ
そうだよ俺がそんな悲観的になることないよな
大丈夫そんな恥かくことも足引っ張ることもないよな
最悪皆の後方で戦ってる振りをすればいいんだよ
その後で日常に戻ったら適当に言い訳して普段の生活に戻ろう
そんな未来の想像をする
ーそんなことを笑顔で考えてる間に演説が終わる。
ヤベー話聞いていなかった。
いつも俺は大事な時に集中が散漫になる。
どうしよう後で話誰かに聞かないとと思って周りを見ると皆一斉に手を組み片膝を折り祈る姿勢をとる。
俺も慌てて真似をすると天井からの光が一際強くなる。
皆が目をつむり祈りを捧げる中俺は真似をしながら片目で周りを見ながら次の動作に遅れまいと必死についていこうする。
すると皆の体が光出した。
俺も慌てて自分の身体を見る。
ズゴイ、光ってる
ーん、なんか周りより光弱くないか
他の皆は個々の差はあるが、それなりに強い光を出している。俺の方は光ってるとはいえ注視したら分かる程度であり、どう見ても周りの候補者とは光り方が違う
うわ、ヤバイ!
信仰心の違いか俺は慌てて両目を閉じ祈りを捧げる。
ー
ー
ー
「祝福は終わりました」
法王の無慈悲が言葉が儀式の終わりを告げる
俺は実感のないまま祝福の終わりの言葉を聞いた。