登校
翌日 朝から目覚めるとニコニコ顔の母親が台所で迎えてくれた。
母親の笑顔で今日から起こる事を想像すると気が滅入った。
「おはよう」
勇気を出して挨拶
「おはようハジメ 昨日はよく寝れた。」
「…うん」
「分かってるわね ハジメ!」
何の事?と惚けて知らんぷりしたいが、やはり許してくれそうにない。
そこからは、「貴方は勇者の血を引くのだから、ここで活躍して将来は推薦を貰って、一流の大学!一流の企業に行くのよ!……」話が終わらない。
うちの家は普通の家であり、俺が五歳の検査で遺伝子に“模様“が出るまで勇者の血を引くことすら分かってなかった。
その普通の家の子である俺が勇者候補正しくは、この時点の段階では候補でわないのだが…。
それが判明すると家は大騒ぎになった。
そら、そうである。
今まで周りに自慢するようなことがない普通の家系の家に実は“勇者“の血があるとわかったのである。
母親は、それを親戚、ご近所に言いふらし、それでは飽き足らず英才教育として
たくさんの習い事を学ばした。
そして結論、トンビの子はトンビでしかなかったのである。
俺は何をやっても人並みでしかなかった。
残念ながら俺には勇者候補として誇れるような才能は何一つなかった。
しかし母親は諦めきれず今回の魔王復活で俺が活躍し英雄として認められ
あわよくば討伐報酬で自分の華やかな老後を夢見ている。
俺本人からすると迷惑この上なく
こんな凡人丸出しの俺に“模様“を出した神様に文句を言いたい!
いや、昔ならば絶対に神託の勇者には選ばれなかったはずである。
世の中に勇者の補欠制度がもし、あるとすると間違いなく俺は補欠の中の補欠かなり隅の方だという自信がある。
しかし現代では遺伝子検査により
今までなら絶対にスポットが当たらない補欠の中の補欠すら見つけ出すのである。
ホントに迷惑である!
この制度を作ったやつを俺の人生を狂わしたと訴えたい!
そんな母親の話を流し俺は制服に着替え学校に向かった。
実は“勇者候補“に選ばれた時点で会社や学校は国から休学、休暇が認められる
しかし、それらの引き継ぎの為には1日の猶予が認められていた。
その為一旦休学届けを学校に提出知らなければならず、登校しなくてならない。
学校から事前に選ばれた時は手続きがあるから昼前に来てくれと通達を受けており
遅めに学校に向かった。
★★★
ホント カンベン シテクダサイ
学校についた俺の最初の気持ちである。
学校の正門から見える校舎に大きく垂れ幕が下がっており、そこには大きな文字が書いてあった。
“我が校の希望 勇者候補タナカ ハジメ“
頭が真っ白になった。
我が校の希望も何も入学して二週間も経ってないのである。
そのまま訳も分からないまま放心してると教師に体育館に連れて行かれた。
そこには全校生徒が拍手で俺を出迎えてくれた。
後は覚えてない。
ただ教師から激励をもらい
生徒会長から希望を託され
泣いてる生徒すらいた
ただ俺は頷いてるだけと記憶している。
もう一度言うが俺は、この学校に入学して二週間であり、
友達と言える友達もいない。
そんな中で学校の期待を背負い
注目されるのである。
間違いなく補欠の中の補欠の実力しかない俺がである。
この後間違いなく候補の誰かが魔王を倒すだろ、だけどそれは俺ではない。
そこだけは自信が持てる。
ということは何も活躍することなく学校に戻ることになるのである。
この友達もいない授業の遅れた状態の俺がである。
深く考えなくても、周りから腫れ物扱いされるのが目に見えている。
友達でもいればネタにして温かく迎えてくれるかもしれないが
友達グループが確定した中で、それをネタに過ごせるほど俺はコミニュケーションなどない。
オワッタ
気がつくと家の部屋で夜を迎えていた。
ハジメは予定していた学校ライフが
全部砕けた音を自覚した。