表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
1/25

Ⅰ イルオーネと夢器について

ファゴットの呼び声で雨雲が現れ、サキソフォンの足踏みで水が湧き、アコーディオンの旋律が水流を導く。

コルネットが語りかければ太陽が覗いて、ヴァイオリンの歌声に合わせて風が吹き、オーボエの音色を聴いて草木が顔を出す。

ホルンは動物とお喋りの真っ最中だ。




ここは音楽の国、イルオーネ。


ーーいや…音楽の国、という呼び名は外から来た人が勝手につけたものだ。

僕はどちらかというと「音の国」の方が正しいんじゃないかと思っている。


なぜかというと、ここの人々は楽器を「魔法を使うための道具」として認識している。

彼らには音楽という概念があまりないのだーー


僕らイルオーネの民は、夢の楽器 「夢器」と呼ばれる不思議な楽器と共に暮らしている。


僕らは魔法を使うとき、夢器を奏でる。


なんでも、魔法を使うには自然界に無数に存在する精霊たちの力を借りなければならないらしく、僕らは夢器の音色でその精霊たちと会話をし、力を借りるのだそうだ。

(他国では何やら難しい呪文を唱えたり、石を使ったりする所もあるらしい。)


そして、なぜ僕が「らしい」などと曖昧な説明をしているかという話なのだけれど、これには簡単な理由がある。


僕は夢器を持っていないのだ。

だから本当は夢器についてもあまり詳しくない。


………いや、待ってほしい。ここで僕が落ちこぼれだとか、どうしようもない問題児だとか、そういう誤解をしないでほしい。


僕にだって夢器使いの素質はある!


(大袈裟に言っちゃったけど、正直なところイルオーネの民はみんな楽器が出来るし、そういう人は普通に夢器が使える。

だからイルオーネに夢器が使えない人なんてほとんどいない。僕だって例外じゃないさ。)


僕が吹く楽器はトランペットだ。

この国に最初に楽器を伝えたといわれる少女、ラルハが持っていた楽器。


もちろん自分の夢器もトランペットをと頼むつもりだ。


そしていつかは山の上の蔵にある、少女ラルハが吹いていたというトランペットを吹くのが僕の夢さ!!



………おっと、そろそろ丘に行かなければ。

何のためって?決まってるじゃないか、トランペットを吹きにさ。

評価をするにはログインしてください。
この作品をシェア
Twitter LINEで送る
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ