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そんな話  作者: 宵の明星
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駆ける

 



 とある山に一匹の兎がいました。




 その兎は常に仲間の兎達と共に山を駆け、毎日楽しく暮らしていました。




 しかし、そんな兎達に危機が迫っていました。






 ……人間です……






 密猟者達が兎達を狩ろうと山へ侵入してきたのです。




 兎の仲間達は次々と銃弾に倒れ密猟者達に捕獲されていきます。




 ……どうして?




 ……どうして……こんな事……




 兎の心は悲しみでいっぱいになりました。




 しかし、そんな気持ちなど伝わるわけもなく彼等は獲物を殺し捕まえ続けました。




 そんな彼等を見て兎は自分の心が悲しみから憎しみへと変わっていくのを実感しました。




 その時、一人の密猟者がその兎がいる事に気付き銃を向けて構えました。




 兎は動かずにただじっと人間の目を見つめます。





 ……するとどうした事でしょう。





 その密猟者は兎と目があった瞬間、いきなり苦しみだしたかと思うと急にその場に倒れこみ動かなくなってしまいました。




 兎は突然の事に戸惑いましたが、これはきっと神様が人間達に罰を与えるために授けてくれた力なのだと思いました。




 そして、兎は仲間を殺した人間達へ復讐するため次々と密猟者達をその目を使って殺していきました。




 ……それから数日後、とある山に人を殺す兎がいるという噂が人間達の間で広まっていました。




 あの時、たまたま生き残った密猟者が逃げ帰り山であった事を人々に話したからです。




 その噂を聞いて一部の人間がその山へ行こうと言い出しました。




 人間は欲深い生物です。




 そんな噂が広まれば、



「そんなに珍しいのなら実際に見てみよう」



「捕まえれば金になる」



「殺人兎を殺せば英雄になれるかも……」


 といった物好きも出てきます。




 そして、欲深い考えを持った人間達は兎を求めて一斉に山へ押し寄せました。




 兎は生きるため、そして仲間の復讐のため、再びその目を使って人間を殺し続けました。




 しかし、それでも人間達は山へやってきます。




 兎は殺しても殺しても再びやってくる人間が怖くなってしまい山から逃げ出してしまいました。




 しかし、それでも人間達は兎を追いかけていきます。




 そんな人間達から兎は逃げ続け、追いつかれたら殺して逃げる、再び追いつかれたら殺してまた逃げる……そんな事の繰り返し……






 ……兎は必死でした……






 この時、兎は駆けながら思いました。






 ……いつまで逃げ続けなければいけないのだろう……



 ……いつまでこの暗闇を走り続けなければならないのだろう……



 ……もう止まりたい……



 あの山で仲間達と楽しく暮らしていた時と同じように



 ……静かに休みたい……



 ……でも、今ここで立ち止まる事は出来ない



 ……ここで立ち止まったら人間達の餌にされるだけじゃなく……なにか……自分の大切ななにかが折れてしまいそうで堪らなく怖い……




 ……いったい……どうすれば……




 ……いったい……いつまで……






 ……いつまで……




 ……いつまで……




 ……いつまで……






 ……そんな話。





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