裁き
人を殺した男が裁かれた。
死刑と言われ首を切断された。
盗みを犯した少年が裁かれた。
死刑と言われ火あぶりにされた。
町の領主様にぶつかった老人がいた。
死刑と言われ首を吊った。
周りから性格が悪いと言われている女がいた。
死刑と言われ銃で蜂の巣にされた。
ある時、一人の若い男が叫んだ。
こんな裁判はおかしい。全く公平じゃない。なんで誰も止めないんだ!!
次の日、その若い男は死刑と言われ崖から突き落とされた。
ある学者は友人に言った。
人は、……いや、この世界に生きる者全ては不完全だ。だから過ちを犯す事もある。それは仕方ない。
問題はその過ちを犯した者達を誰がどう裁くかだ。
裁く者は全てを公平に見定め情に流されることなく裁かなければならない。
しかし、そんな人間などこの世に存在しない。いや、そんな生き物はこの世に存在などしないのだ。
だからと言って過ちを犯した者達をほっとく訳にはいかない。だから人が裁く。
しかし、先程も言ったように人は不完全。そんな者が公平に裁く事などできる訳がない。不完全な者を不完全な者が裁くこの世界は……腐っているな。
次の日、その学者は処刑台の上に立っていました。
友人が昨日の話の事を裁判官に密告したせいで学者は裁判にかけられてしまい、危険な思想の持ち主という理由から死刑を宣告されたのです。
因みに、その密告した友人も危険な思想家の仲間だったという事で死刑をうけ、毒薬を飲まされ先に死にました。
……そして、処刑人が空高く斧を振り上げた時、学者は処刑台の上で叫びます。
この世界で私を裁ける者など誰一人としていない。
それがたとえ絶対的な権限を持っている裁判官でも、
莫大な資産を持っている貴族でも、
唯一無二の親友でも、
愛し合った恋人でも、
大切な家族でも、
自分自身でも……、
……そして、
……この世の神でさえも……。
……そんな話。