意味
ある所に少女とおじいさんが二人で住んでいました。
毎日おじいさんは牧場で牛や羊達の世話をして、少女は料理・洗濯・掃除などの家事をしていました。
それが二人の主な仕事です。
仕事をしていない時、おじいさんは暖炉の前にある椅子に腰掛け本を読んだり、花壇の花の手入れをしたりしていて、少女は近くの森を散歩したり、草原で寝転んだりしていました。
それはとても穏やかな生活でしたが、少女にとっては同じ事をただ繰り返すだけの退屈な毎日でした。
そんなある日、少女は突然おじいさんにどうして自分は生まれてきたのか聞きました。
おじいさんは、なんでそんな事を聞いたのか少女に尋ねました。
それに対して少女は、毎日同じ事の繰り返しでつまらない。生きている意味など無いとつまらなそうに答えました。
おじいさんは少しの間黙ってなにかを考えていたがやがて少女に向かって、
生きるのに意味が必要かい?
と聞きました。
少女は不思議そうな表情を浮かべました。
意味もないのに生きるなんておかしいと思ったからです。
そんな少女の様子を見ておじいさんは言います。
昔、自分も同じように自分に生きる意味はないと思っていた。
しかし、それでも楽しかった。ただその日の流れに身を任せ毎日を風のように生きるのが。だから必ずしも生きるのに意味が必要な人ばかりではないと。
しかし少女は、私はそんな風に意味のない生活を楽しむ事はできない。やっぱり生きる意味が欲しい。
と、口を尖らせながら反論します。
するとおじいさんは、
だったら生きる意味を探す事を生きる意味にすればいい。そうすればつまらなくは無くなるし、意味を見付ける事もできる。見付けた後はそれを次の生きる意味にしていけばいいと言いました。
少女は怒りました。
そんなの生きる意味にならないし、探している間は結局つまらないじゃないかと思ったからです。
そして続けておじいさんに、おじいさん自身の生きる意味はなにか尋ねました。
おじいさんは、少女と共に暮らす毎日だと答えました。
少女はそれ以来、その話をする事は二度とありませんでした。
そして、一日の殆んどの時間をおじいさんと過ごすようになったそうです。
……そんな話。