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本当の恐怖

 鬼ごっこに勝ったのは個性部だが、今はそんな事はどうでもいい。今大事なのは説明……ではなく


「逃げるなああああああああああ!!!!」


 リアル鬼ごっこに突入した現実をどうするかだ

 ちょっと生けに、げふんげふん……強制的に殿にしただけじゃないか


 そんな風に考えながら、咄嗟に左に飛ぶ。数瞬遅れて消火器が校庭に突き刺さり、白い煙を吹き出す中、息を止めて校舎へと駆ける


「そこだ!」


 まるで見えているかのように正確に投げられた石を身体を捻る事で回避、そのまま校舎に駆け登る(・・・・)。所謂パルクールというやつだ。いやはや、近所に大学生に習っといて良かった


 下を見れば拳大の石を右手に持ち、校舎とは逆方向に駆ける片那の姿が

 ある程度の位置で止まると前方に向かって石を投げ、それを追い掛けるように駆ける。そして石に向かって跳躍し


「【必滅の魔槍(ゲイ・ボルグ)】!!」


 ───石が、散弾と化した。無数に襲い掛かってくる石つぶて。避けようにも場所が悪く、防ごうにも限度がある。そもそも、防ぐ術を持っていない


 ああ、これは詰んだな


 覚悟を決めた瞬間襲い掛かってきた散弾で全身から血が出るのを感じながら、校舎から墜落した……死んだかも


 ぐしゃり



 ◆ ◆ ◆



 気が付けば保健室のベッドの上で全身に包帯を巻かれていた。チラリと横を見ると咲樹がスヤスヤと眠っている。……何があったんだ?


「……?」


 思い出そうとしても思い出せない。頭に靄が、なんてレベルではなく、その記憶を思い出そうとすると激痛が走る。まともな事では無いんだろうなとため息を一つ


[起きましたかマスター・セツナ]

「ん、おはよう」

[おはようございます。とりあえず死んでください馬鹿野郎]


 いきなりの罵声……は珍しくないが、何故かいつもと違って怒ってる。まるで親の敵でもみるような視線のせいで非常に居心地が悪い


「……なんかしたの?」

[それはうっかり核兵器とドM衛生兵に聞いてください。私は知りません……ふん!]

「……あー、よく分かんないけどごめんなさい」

[……とりあえずマイマザーには土下座してください]


 なんだろう、シロが凄く怖い。目力半端ないよ、視線で人殺せるよ! 本当はロボなの!?

 ポーカーフェイスを保つのが大変だ。でも崩した瞬間怒られそうで怖い……本当に何をした眠る前の自分!?


「起きてるか少年」


 荒々しく扉を蹴破って登場したのは真理亜だ。苛立ちを隠そうともせず近付いてきた真理亜はゆっくりと右手を振り上げる


「とりあえず殴らせろ」

「え、ごっ!?」


 思い切り頭を殴られた。殴られた箇所が燃えるように熱い。あれ、怪我人だよね?


「神技を軽々しく使うアレは最悪だが君も君だ。素直に一発殴られれば済んだ話を……ああ、もう。本当に馬鹿らしい」

「……えっと?」


 何の話だと視線で訴えると、真理亜は即座にシロが座っている方向へ振り向いた。視線の先には机の上の小瓶、中には小指サイズの片那が…………え?


「片那、お前記憶消したな?」

『──、─────!』


 何か叫んでいるが密封状態なので何も聞こえない。……だんだん顔色悪くなってるんだが大丈夫なのかアレ?


「お前な、一般人に新技使うだけでも最悪なのに記憶を消すとはどういう事だ?」

『…………』

「ちっ、シロ君。すまないがその瓶を潰してくれ」

[了解しました]

『────!』


 机から床に移動させられた小瓶に容赦無く踵……ではなく、巨大な棍棒が突き刺さる

 片那は大丈夫かと周囲を見渡すと机の近くで震えていた。うん、その気持ちはよく分かる


「お、おおお、お前達は私を殺すつもりか!?」

「あの程度では死なないだろう?」

「沙耶に封印された状態だから簡単に死ねるぞ!」

[チッ、……害虫駆除失敗しましたね]

「私は害虫扱いか!?」

[益虫のつもりでしたか?]

「人間だ! 虫から離れろ!」

[ハッ]


 シロの毒舌が普段よりも凄まじい。視線もゾッとするほど冷たくて、まるで本当に害虫を見ているような視線だ


「はい、そこまで。今は刹那君の治療が先です」


 何処から現れたのか、いつの間にか片那を庇うように立っている沙耶先輩の一言で全員がこちらを見る

 こんな姿恥ずかしいから見ないで欲しいなとちょっと苦笑い


「ちっ、忘れてた。少年、少し待ってくれ……あれ、これじゃない。こっちか? ……何処だ?」


 どう見ても容量以上に多くの物を出しているが、それ以上に机に並べられた物の方が気になる

 青紫の丸薬、蛍光グリーンの液体入り試験管、赤黒い粉末、etc……最早この世の物とは思えない悪臭(におい)すらするその謎の道具達。思わずシロ達を見れば即座に目を反らされた

 非常に考えたくないんだが、まさか、もしかして、あり得ないと思うけど、……薬なのか?


「ようやく見付けた。ほら、一気に飲むがいい」


 満面の笑みで差し出される泡立つ泥のような液体

 たまに断末魔の叫びが聞こえるんだが幻聴だろうか? 中からたまに赤い何かが跳び跳ねては小さな手に引き摺り込まれるのは幻覚なんだろうか? 嗅ぐだけで目眩と吐き気と頭痛がする刺激臭は被害妄想が生み出した物であって欲しい

 多分今の顔は真っ青なんだろうなと他人事のように考えながらソレを受け取る


「どうした、早く飲め」

「……イ、イタダキマス」


 気が付くと、3日後の授業中だった




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