It started suddenly ...
それは突然始まった。3時間目の途中、2年生の教室から奇声が上がる。それを皮切りに様々な所から雄叫びや悲鳴が校舎を揺さぶった
「いきなりなんだ?」
「なんだろうね?」
咲樹と2人で考えるがまったく分からない。ただ、教師の顔が妙に暗いのが気になった
『あー、あー、テステス。こちらマイクのテスト中だ』
突然スピーカーから聞こえてきた声は、残念な事に知り合いの声だ。凛とした声は一瞬で周りの音を奪う。そして僅か静寂の後、声の主は楽しげに叫んだ
『新入生共喜べ! 同級生は気合を入れろ! 上級生は理性を捨てろ! 今からお前等を巻き込んでやる!』
「な、ななな……!」
『今日は非日常をプレゼントしてやるから覚悟しろおおぉぉぉ!!』
「「「オオオオオオォォォォォ!!!!」」」
「何やってるんだあの変態部長はぁ!?」
『それと個性部は5分以内に放送室に来い! 遅かった奴は罰ゲームだ!』
「罰ゲームは嫌だから行こうせっちゃん!」
[我輩もご一緒しますマイマザー]
「いやまだ授業中……行っちゃった」
マジで何考えてるんだろう? 授業中だぞ、先生が許すわけないじゃないか。というか、許されても行かないから。巻き込まれるくらいなら罰ゲームでいい
「如月君」
「何ですか先生?」
「お願いします、僕の平穏の為に行ってください。お願いします、お願いします!」
……待った。罰ゲームって僕にじゃなくて、先生になのか?
「いえ、罰ゲームは如月君だけです。問題はそれに起きる二次災害と言いますか……去年見たいに盗撮動画流されたら確実に首が飛ぶと言うか」
盗撮動画……待て、まさか罰ゲームって
『如月あと1分だぞ? いいのか? 体育館のスクリーンに映るぞ、お前の着替えシーンが』
「良いわけないだろおおぉぉぉ!!」
◆ ◆ ◆
「3…2…」
「ちょっと待ったああああぁぁぁぁぁ!!」
[そこでちょっと待ったコール!]
「1……チッ」
ギリギリ間に合ったようだ。嬉しさのあまり涙が出てきたよ。あと、シロは何故そのネタを知っている? あと手を出されてもプレゼントなんてないぞ。もちろん右手も出しません
「全員揃ったし説明するぞ。進入部員の3人はちゃんと聞くように」
「その前に現状を説明しろよ」
「これから始めるのは鬼ごっこ(4+ロボVS全校生徒)だ。昼休みまで逃げ切れれば個性部の勝利、一人でも捕まれば私達の負け。そして捕まった奴は……どんな事情があろうが罰ゲーム確定だ」
……頼むから人の話を聞いてくれ。もう涙すら出ない冷遇っぷりだ
「……こんな部長でごめんなさい」
「……もう慣れました」
沙耶先輩だけが救いだ。この人がいなければこの部活動は悲惨な物になるだろう。居てもこんなのなんだし
片那はマイクの電源を入れ叫ぶ。ルール説明と挑発、そして見事捕まえた者が手にする栄光と権利を高らかに宣言する
個性部部活動[鬼ごっこ]
【勝利条件】
個性部……12時まで逃げ切る
全校生徒…一人でも捕まえる
【ルール説明】
①敷地内ならあらゆる手段を許可する(ただし危険な行為は自重する事)
②個性部メンバーは指定された教室(自分のクラス)で一度のみ休憩可能(5分)。その時間内はタッチ不可だが、次の行動の妨害工作は可能
③個性部メンバーを捕まえた者は捕まえた子に一週間命令可能。ただしあくまでも法に乗っ取った物だけを有効とする
④個性部が勝利した場合一週間部活動禁止&強制勉強会の開始決定。先生役は生徒会長こと音無真理亜と私の最愛の妹である沙耶だ。真理亜はともかく沙耶に手を出した者は処刑するので手を出さないように
「……おい、此処に強制パシリルールがあるのは気のせいか?」
「勝てば問題ないだろう?」
「まあ、確かにそうだけどさ。でもそれだと沙耶先輩と咲樹が不利じゃないか?」
「は? むしろあの2人は無敵だぞ?」
…………え?
「どうせ始まれば分かる。お前は自分の事だけ考えていればいい。……この中で一番ピンチなのは間違いなくお前だからな」