メイドロボって……
現在、自分の常識が粉々にされている。妄想が現実に混ざると言うか、現実が妄想に喰われると言うか……とにかくあり得ない物を見た
「せっちゃん、何でそんな顔してるの?」
「それはな、お前が作ったソレがどう考えてもオーバーテクノロジーだからだよ」
目の前にはメイド服を着た銀髪の少女。人間では到達出来ない美しさにいる彼女の名前はS-01F(通称シロネコ)。めちゃくちゃ人間らしく表情とかしてるがロボである。より正確に言うならメイドロボである。こういうのって漫画の世界にしか存在しない筈だよな?
[マスター・セツナ、我輩をソレ呼ばわりしないでください。出来ればシロでお願いします]
「……咲樹、マスターって何?」
「それはね」
[僭越ながら我輩が説明しましょう!]
今製作者の言葉遮ったぞ。あとその無駄に洗礼されたサムズアップはなんだ
[マスターとは、我輩のご主人様の呼び名です。ちなみに我輩が決めました。理由は特にありません。強いて言うならフィーリングです]
何故か一回転してポーズを決めるシロにムカついて消しゴムを投げる。それを咲樹を盾にして防いだシロはドヤ顔でこちらを見てくる。凄く、壊したい
「シロ、せっちゃんを困らせちゃダメだよ?」
[愛憎表現です]
「愛情じゃないのにちょっとだけ癒された」
[失礼極まりないミジンコマスターですね]
「お前の方が兆倍失礼だポンコツ」
[ちょっと美形(女性寄り(笑))だからって調子乗らないでくださいマスター・セツナ。私の隠された108武装でミンチにしますよ?]
最早ツッコミ所しかなくて何も言いたくない。というか、なんだ108武装って? というか隠されたって言っちゃダメじゃないか? あと美形(女性寄り(笑))は咲樹であって、俺の容姿は平凡だ
「ところでS-01F、何でついて来てるの? 今から学校だよ?」
[ああ、簡単な話ですマイマザー。私も(メイドとして)学校に通うからです。ちゃんと許可はとってますので安心してください]
うん、今の言葉の何処に安心出来る要素があるんだろう?
◆ ◆ ◆
……普通はこんなメイドロボが着たら誰だって混乱する筈である。いや混乱するべきである。だがこの学校は色々おかしかった
[マスター・セツナのメイドのS-01Fです。よろしくお願いします皮被りと妄想女子共]
……皮被りってなんだろう?
「うん、可愛いからよし」「別にゲームじゃ珍しくないし」「スリーサイズは!」「黙りなさい粗○ンが」「ありがとうございます!」「ロボって、……(一部を凝視)ま、負けた」「あの腰の細さ裏山」「とりま、帰りに買い物しない?」「ありがたいですがマスター・セツナを愛でなくてはいけないので」「それなら仕方無いね」
おかしいのは俺なのか、それともクラスメートがおかしいのか。それが重要だ。というか受け入れるの早いよね? どう考えても早いよね?
そんな始まりだったがその後も散々だった
一時間目体育(長距離女子2km、男子3km、咲樹1km、シロ、刹那5km)
[我輩に追い付ける者はいないんですか!?]
5kmを僅か10分程で完走したシロは挑発的に叫ぶ。ようやく追い付いた俺は息を整えて一言
「ロボに追い付ける奴なんていないだろ。というか自重しろよ」
「「「今 日 の お 前 が 言 う な ス レ は 此 処 で す か」」」
「え?」
シロ5km完走(9分57秒)、刹那5km(10分32秒)
二時間目芸術(彫刻)
彫刻刀を使わず指先からレーザーを出しながら木を削るシロ。色々と規格外なロボだと思いながら適当に彫り続ける
「せっちゃん何作ってるの?」
「咲樹」
「……うん、凄いよね。色々な意味で」
[コレはひどいwww]
「うるさいな、どうせ彫刻は苦手だよ」
「「「ど の 口 が 言 う」」」
「え?」
三・四時間目家庭科(調理実習(自由))
高笑いしながら高速で食材を切り刻むシロを尻目にコーンスープに隠し味として西京味噌を入れる。……うん、美味しい
何やら戸惑っている班の皆(男子1名、女子1名、咲樹、シロ)はどうやら料理をした事がないらしい。それならと教えつつ全部手伝いながらやったんだが……何故だろう、クラスメート全員に弁当を作るよう頼まれた。この時ばかりはシロの毒舌に感謝
◆ ◆ ◆
……ようやく昼休みだ。何人の生徒が焼きそばパンを泣きながら食べているが何故だろう?
そして俺の弁当が蓋を開けた瞬間クラスメートが血走った目で狙ってくるのは何故だろう? まあ、仲良く好感しながら食べたからいいけど
[うまうま]
「ロボが普通に食事していいのか?」
[ちゃんと味覚もありますし、体内のナノマシンが勝手に分解してくれます。ふふ、人間のように排泄はしませんよ?]
……うん、もう何も驚かない
「せっちゃんの玉子焼き美味しいね」
「それは嬉しいな。何なら弁当作ってやろうか?」
「え、でもさっきダメって」
「あんな人数作れてたまるか。でもお前一人分なら問題ないよ」
「な、ならお願いしてもいい?」
問題無いぞと頭を撫でると何故か周囲が騒ぎだす。もう慣れたよ
[ところでマスター・セツナ、今日マイマザーが部活を見学に行くんですが一緒にどうですか?]
「放課後暇だしいいよ」
[マイマザー、今日は帰宅部を見学に行きましょう]
「帰る気満々だな!?」
誰か、ツッコミ役変わってください