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女男な同級生


 案内された教室前の廊下で列になる。そのまま体育館を目指して歩き出すんだが、やはり足並みは揃わず列は乱れ気味。まあ、初めてだからしょうがない


 ようやく着いた体育館の周りにはカメラを構えた方々が。どうやら録画しているようだが、さて。入学式って録画する程の物なのか? 両親いない自分にはまったく理解出来ない


「それでは新入生の入場です。拍手で出迎えてください」


 ようやく動き出した列の中で色々と周囲を観察して見る。どうもさっきから視線を感じるんだが、いかんせん。視線が多すぎて誰か特定出来そうにない

 パイプ椅子に座ると、ちょっと薄い頭のおっさんが壇上上がる。多分校長だろう。話が短ければ良いな


 結果は予想通り長かった。40分もの子守唄を聞き終えて目を開けているのは僅か30人程だ。ちなみにこの人数は上級生も含まれている

 ようやく終わった子守唄の後、会長のスピーチが云々。面倒だから寝ようかなと考えた瞬間だった


「では一年A組出席番号6番如月刹那少年に聞こう。君は何を思ってこの学園に来た?」

「は?」


 いきなり名指しされ、強制的にスピーチに巻き込まれる。壇上の相手を睨み付けると長い艶やかな黒髪を手で払いながら微笑まれた。内心で舌打ちする


「……分かりません」

「そうか、それならば見付かると良いな」

「……そうですね。多少不安ですが探してみます」

「不安か、……安心して欲しい、私達は、私達が通う潜竜(せんりゅう)学園は努力さえすれば君達の夢を全力でバックアップしてくれる。壁にぶち当たったら先生方に頼れ、何なら私達上級生にでもいい。君達の為に最善を尽くす事を此処に誓おう。……以上、生徒会長音無でした」


 その後綺麗な礼をして元の席に戻る彼女に割れんばかりの喝采が響く。主に上級生から。多分今まで有言実行して来たんだろうなとちょっとだけ感心した……だからといって出汁にされたのは許さないが



 ◆ ◆ ◆



 教室に戻って最初の授業、というか自己紹介が開始された。僕の番はすぐに訪れる。めんどくさいが強制らしいので渋々従う事に。適当に終わらせればいいだろう


「名前は如月刹那(きさらぎ せつな)、呼び方は好きに呼んで欲しい。身長が低いのがコンプレックスなので触れないでくれると有難い。好きな物は日本茶と動物、嫌いな物は昆虫。一年間よろしく」


 ちょっとふざけてウインク。同時に黄色い悲鳴が教室に響く。何かしたかと混乱する僕を席に戻した担任はため息を吐きながら無理矢理進行した

 皆色々言ってるなと思いつつ、窓の外をぼんやりと眺める。あ、ヘリ飛んでる


「む」


 不意に視線を感じて振り向くと、そこには気弱そうな男子生徒、……男子? 生徒がいた。制服を見て男子と言ったが容姿だけなら完全に女の子だ

 こちらを見ていた茶色の双眸は視線が合った瞬間、驚いたかのように見開かれた。変な奴だ

 その変な奴の自己紹介はある意味笑えた。立った瞬間、女子の何人かは悔しそうに顔を歪め、男子の何人かは頬を赤く染めたのだ。男子よ、それは男だぞ、多分(笑)


「ぼ、僕は都築咲樹(つづき さき)です。趣味は発明です。好きな物はお菓子で、嫌いな物は怖い物です。一年間よろしくお願いします」


 可愛らしく頭を下げる姿はもう女にしか見えない。なんと言うか、……ヘタな女より女らしいな(笑)


 気が付けば自己紹介とその他諸々は終わり、いつの間にか放課後に。周りは男子(と妙に目がぎらついた女子)に囲まれ脱出は困難だ。どうすれば逃げれるかなと考えていると突如袖を引っ張られる。引っ張ってたのは男子? 生徒(笑)の都築だった

 何か分からないがコレを利用しない手はない


「ごめん皆、今日は咲樹と一緒に帰る約束しててさ。親も待たせてるしそろそろ行かせて欲しいな」


 その言葉で笑いながら退いてくれるクラスメート達。以外にすんなり通してくれて少しビックリ……ん?


「あの2人実は付き合って」「美少年(せつな)×男の娘(さき)」「いや男の娘(さき)×美少年(せつな)でしょ」「意表をついてNTR希望」「これだから女子は。美少女(さき)お嬢様(ドM希望)と美少年(せつな)執事(鬼畜希望)だろ」「これは調査するべきかと」「異議無し!」「異議無し!」「異議無し!」


 ……意味が分からない。何が言いたいんだろうコイツ等は? というか仲良いなお前等?


 とりあえずその場から逃げ出し、空いてた教室で一休み。途中で都築の体力が尽きたので抱えて走ったが軽くて助かった。……俺より身長高いのに俺より軽いとは如何なものか。俺が重いのか、それとも都築が軽すぎるのか


「とりあえずさっきは助かった。ありがとな都築」

「さ、咲樹でいいよ?」

「了解。ところで咲樹は何か用があったのか?」


 その言葉に真っ赤になってうつ向く咲樹。見る奴によっては可愛いんだろうが、僕は何も感じない


「あ、あの……僕の、お、お友達になってくれませんか?」

「別にいいけど?」

「ほ、本当に?」

「嘘つく必要ないぞ」


 そんな訳で咲樹と友達になったんだが、……この時もう少し考えれば良かったなと後に後悔するんだが未来視出来ない僕がこの時知るわけもなかった



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