猛特訓
練習試合も終わり、いよいよ試合に向けた猛特訓の日々がスタートした。
毎日、夜遅くまで練習があり、学校の宿題なんか、全く出来ない状態で、毎日毎日先生から怒られていた。
連絡帳にも書かれてしまった。
が、不思議なことに母親は怒ることは無かった。
恐らく母親も、練習の厳しさを理解しているからだろう。
試合まで、あと3日というところで、中村監督からスタメン入りを言われた。
疲れきった体だったが、念願のスタメン入りと知らされて、練習にもなお一層気合いが入った。
セッターのコースケが、
「大地、おめでとう。俺のトスをうまく打ってくれよな。」と声をかけてきた。
「ありがとう。必ず勝とうな。」
斉藤くんは、今回も当たり前のようにスタメンには選ばれないが、残念がることもなく、俺のスタメン入りを凄く喜んでくれた。
ある日の練習後、俺は斉藤くんに足の様子を聞いてみた。
いや、聞きたかったのは足の具合ではなく、ケガでバレーボールをやるには厳しい状態にも関わらず、なぜバレーボールをやっているのか?が、不思議で仕方ない。
「あぁ、この足の状態が良くならないのは分かってる。けど、僕はバレーボールが好きなんだ。ここにいると、ボールに触れるし、皆で勝つ喜びや、負ける悔しさを自分のことのように共有できるからね。」
と教えてくれた。